信州大学農学部 動物資源生命科学コース
生物資源研究室
Top    Message    Research    People    Facility    Archives   Misc

Research

Theme 01  未利用資源(食品系素材)の飼料化によるエネルギー循環系の構築


resjpg01       

食品製造残渣や食品廃棄物の飼料利用は、資源循環のサイクルを完成させるために有効な手段ですが、嗜好性や栄養素の消化吸収性が低くなる場合があります。そこで、家畜による栄養消化吸収の仕組みを微生物学的、分子生物学的に解明することにより、個体の嗜好性が高くかつ給与による栄養的・環境的効果が期待できる、これまで使われなかった新しい資源の飼料化を模索します。

【主な研究テーマ】
・タンニンを含む食品由来資源の飼料化に関する研究

・食品系素材の飼料給与による家畜生産性の向上

Achievements

2020年 【Regular Paper】"Fermentative quality and animal acceptability of ensiled persimmon skin with absorbents for practical use in ruminant feed"
(Abdelazeem, Takeda, Kurosu, and Uyeno: Animals   10:612)
2019年 【Regular Paper】"Screening of phyto-sources from foothill of Himalayan mountain for livestock methane reduction"
(Malik, Uyeno, Kolte, Kumar, Trivedi, and Bhatta: SN Applied Sciences   1:232)
2019年 【Regular Paper】"Ensiling fruit byproducts with inoculum of lactic acid bacteria strains"
(Abdelazeem, Malik, Kolte, Bhatta, Kasuga, and Uyeno: Asian-Australasian Journal of Animal Sciences   32:103-109)
2017年 開発テーマ"柿皮飼料化技術の確立"
伊那谷アグリイノベーション推進機構 研究助成に採択
2016年9月 【Regular Paper】"Ensiling fruit byproducts with inoculum of lactic acid bacteria strains"
(Uyeno, Konaka, Shirota, and Kobayashi:  Animal Nutrition and Feed Technology   16:515-519)
2016年8月 【Oral Presentation】"Ensiling fruits byproduct for feed use aiming at long term preservation and methane mitigation in the rumen"
(THE 17th AAAP Animal Science Congress)
2015年11月 【口頭発表】"柿皮およびブドウ粕を混合して調製した発酵TMRの品質評価"
(藤森・上野・井出・佐藤・海内・中沢、 北信越畜産学会第64回大会)  
2015年8月 【研究レポート】“発酵リンゴ粕(FAP)調製への乳酸菌添加の効果およびFAP混合培地を用いた
ブナシメジ(Hypsizygus marmoreus)の栽培”

( 平森・上野・神、  日本きのこ学会誌 23:120-124)
2013年12月 研究テーマ"牛用飼料への地産地消コンセプト導入"
平成25年度地域志向教育支援事業「調査・研究補助」(学内公募)に採択
2012年8月 開発テーマ"発酵活用でリンゴ加工残渣のキノコ培地化と廃培地の高機能飼料化"
「平成24年度戦略的基盤技術高度化支援事業」(経済産業省関東経済産業局)に採択

*種類ごとの成果一覧は、SOARをご覧ください.また、論文別刷りなどのご要望は、 担当教員 までお寄せください.


GLOSSARY  【ルーメン微生物による嫌気的発酵】
-反芻動物が草を栄養にできる不思議なメカニズム
jpg301   jpg302

*反芻動物第一胃(ルーメン)内にも、種々の微生物による群集( 消化管微生物群集 )が構成されています. 腸内細菌叢とは異なり、ルーメン内に存在(棲息)する微生物のなかには「最初から悪玉菌」のようなものはいません. また、繊維(セルロース)を主に分解するものがいる一方で、草食動物の胃の中にいるが繊維を分解することができず、ヒトなどと同じようにデンプンを主なエネルギー源としているものもいて、それらが絶妙なバランスを保っています.
このように微生物にれぞれが利用するエネルギー源つまり「エサ」がさまざまであるため、養分の取り合いになるようなことはあまりありません. むしろ、あるルーメン細菌が基質を利用して、自ら必要なエネルギーを獲得しつつ、発酵産物(言い換えれば不要物)として細胞外に出す乳酸やコハク酸が、 ほかの細菌種による発酵の基質となっており、限られた資源をルーメン環境の中で有効利用する仕組みができています.

*ルーメン内のような高度な嫌気環境では酸素などの電子受容体が十分に存在しないため、ルーメン微生物による有機物分解(嫌気発酵)では通常の酸素呼吸と異なり、 有機物が完全に二酸化炭素と水まで分解されません.嫌気発酵における炭水化物の酸化過程で生じる還元等量(電子)は2e- + 2H+→H2の反応によって処理され、 生じたH2の大部分はすみやかにメタン発酵に用いられて処理されます.
この結果ルーメン内H2分圧は非常に低く抑えられることから、メタン発酵は嫌気発酵プロセスを効率的に進めるために重要な意味を持っています.

*このように、ルーメン微生物によるメタン発酵はルーメン環境を安定させる重要な役割がありますが、有機物が本来持つエネルギーの相当部分がメタンとして排出されることは、 宿主が得られるはずのエネルギーから損失が生じていることになり、効率よく家畜個体内にエネルギーを蓄積させるといった動物生産を考えると改善が必要です. さらに、メタンは地球温暖化ガスのひとつであり, 反芻動物第一胃からの生成量が高い割合を占めていることが明らかにされています.
こうしたことから, 各種素材を飼料または飼料添加物として給与することにより、ルーメン発酵におけるメタン発酵抑制の試みが多数行われてきました. 一部には製品として広く流通しているものもありますが、上述のように単にメタンの生成を抑えるだけではルーメン内の水素の行き場がなくなってしまい、 せっかく精密に制御されている発酵が円滑に進まなくなってかえって効率が悪くなる場合も多く、工夫と試行が繰り返されています.


Research TOP