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佐久市子ども未来館でSURCAS宇宙システム部門 冨田孝幸助教が製作した「コズミックレイVR」の常設展示が始まりました。

宇宙システム部門 人材育成

2024年5月18日(土)より、長野県の佐久市子ども未来館にて「コズミックレイVR」の常設展示が始まりました。コズミックレイ(宇宙線)は昼夜問わず宇宙から到来しています。その中でも極めて高エネルギーなコズミックレイは大気分子と相互作用することで空気シャワー現象を引き起こします。空気シャワー現象は宇宙から飛来した1粒の粒子が大気中の分子と相互作用し、地上まで到達した際には数千億個以上の2次粒子に増加し、直径が数kmの広範囲となるダイナミックな現象です。低エネルギーのコズミックレイの場合では、その増加反応は高空で終了するものの、発生した無数の粒子は地上まで到達します。このため、コズミックレイによって発生した2次粒子は、手のひらサイズに1秒に1回程度の頻度で私たちを通過しているのです。日本におけるコズミックレイ研究は古くから盛んであり、湯川秀樹博士により予言された粒子(中間子)がコズミックレイと大気の反応の中で発見されるなど、日本人が獲得したノーベル賞にも数多く関わっています。
 また、近年ではコズミックレイの2次粒子を使ってピラミッドなどの大きな建造物や火山の内部を透視し観察する技術である「ミューオグラフィー」などに応用されており、私たちの生活にも役に立っています。冨田研究室では東京大学地震研究所と協力して、地中深くの断層の観測をする検出器を開発しています。

「コズミックレイVR」は、冨田研究室が開発したアプリを使い、肉眼では捉えられない空気シャワー現象をCG画像で再現して、VRゴーグルで見られるもので、360度全方位の長野市の景色の上に再現して可視化したものです。
VRゴーグルを覗き込むと、普段は立ち入ることができない信州大学長野(工学)キャンパスの屋上から長野市内を見渡し、そこに日々到来するコズミックレイ 空気シャワーを実際の大きさを体感しながら観察できます。これは近年普及してきたVR技術よって初めて実現できたものです。これまでは実際の大きさを体感的にイメージすることがなかったため、コズミックレイを専門とする物理学者の間でも新鮮な体験となりました。
 情報技術の発展により、普段は見ることができない自然科学の先端で取り扱われる現象を直感的に体験できます。「コズミックレイVR」は信州大学工学部のオープンキャンパスや各種イベントにも出展されますので、機会がありましたら体験にお越しください。

2024.5.28信濃毎日新聞デジタル
『地球に降り注ぐ宇宙線の「空気シャワー」、VRで再現 佐久市子ども未来館で常設展示』
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2024052800636
佐久市子ども未来館HP:http://kodomomiraikan.jp/