Scholarships for Studying Abroad
海外留学のための奨学金

Frounhofer FIT研究留学

令和6(2024)年度支援
研修先:ドイツ 実施部局:工学部 研修期間:2025年2月10日~3月27日 46(日間) 参加者数:1(人)

 春期休暇を利用して学術交流協定を締結しているドイツのフラウンホーファー研究機構応用情報技術研究所(以下FIT研究所)に大学院に進学する4年生(卒研生)を短期留学(7週間)する機会を与え、海外の研究者との研究開発に携わり今後の大学院での修士研究に反映させると共に、グローバル人材としての国際感覚を身に付けさせることを目的に実施しました。

 FIT研究所では、人間中心工学・設計部門長のRene Reiners博士およびBritta Essing教授の指導のもと、Marc Jentsch博士をリーダーとする「CrowdWater」と称する研究プロジェクトに従事しました。研究チームは専門分野の異なる6名のメンバーで構成され、世界的な水不足問題への対策として持続可能な水利用の促進を目的に、試験地域に分散型IoTセンサーネットワークを構築し、リアルタイムで水の使用量の可視化・分析を可能にするインフラの開発を目指していました。プロジェクトの主な検討内容は、従来よりも省人力・短時間で漏水検知可能なセンサーネットワークの開発と、家庭・企業における利用者の意識改革に繋がるIoTセンサーから得られる情報(水の使用量)の分類と可視化(グラフ化)でした。これを、市の水道局、水道メーター会社、地域上下水道事業体などとの連携により実施していました。派遣した学生は、このプロジェクトの中で家庭での水使用量の波形分析に関する研究に携わり、センサーから取得した秒単位の水量データの波形を、クラスタリング技術を用いて解析と検証を行いました。短期間でしたが、学生は日々他のメンバーと密にディスカッションして、研究開発のマインドや進め方を学びました。

 学生からは、FIT研究所では専門分野が異なる研究者がひとつのチームとなり共同で研究開発を進め、それぞれの専門性を活かした多様な視点からの議論が行われていたこと、定期的なミーティングにより、各チームの研究開発状況の進捗や学びを共有する文化が根付いていて、組織全体としての一体感や方向性が保たれていることが印象的だったとの報告を受けました。また、派遣期間中にいくつかの日本企業がFIT研究所を訪問する場面に同席し、日本企業が実際にどのような形で欧州の研究機関と連携しているかや、取り組んでいる最先端技術の一端を学ぶ機会を得ることができ、今後国際的な協働を行う上で役立つ学びと体験をすることができました。本人によれば、将来的に国際社会で活躍するためには、語学力や専門性だけでなく、多様性を受け入れ、異なる価値観を理解し協働する姿勢と能力が不可欠であることを痛感したとのことです。また、今回の短期留学の経験を、次の長期留学に繋げたいと希望しています。

 これらを総括して、今回の留学によりグローバル人材に求められる資質と大学院での研究遂行の基礎を学び体験することができ、当初の目的を達成できました。

【学生の声】
 私が参加したFraunhofer FITの研究チームでは、IoTデバイスを用いて各家庭の上水道の流量を分析する研究が行われており、私はその一部を担当しました。滞在中、日本企業2社の関係者が視察に訪れ、共同研究に関するミーティングに同席する機会もあり、日系企業が国際連携を積極的に推進している現状を直接理解することができました。
 この留学を通じて、挑戦を恐れず行動する姿勢や、異文化環境における人との関わりの重要性を実感しました。また、日本の常識が必ずしも他国で通用しないことを学び、自身の視野と選択肢を広げる契機となりました。