Learn from Experience & Letter
経験者から学ぶ&交換留学派遣生からの便り

渡部 幸恵

イタリア

何が起きるかは、行ってはじめて分かる

渡部 幸恵さん

人文学部 人文学科
留学期間:2015年9月~2016年6月
留学先:ヴェネツィア・カ・フォスカリ大学

留学先大学について

カ・フォスカリ大学は、ヴェネチアの島中に30ほどのキャンパスが点在していて、中には観光客が訪れるような600年近い歴史を持つ建物もあり、大変ユニークな大学です。初めのうちは地図が手放せません。経済、言語、科学の分野においてはイタリアの大学ではトップ10に入っていて、熱意ある学生が集まる場所でもあります。また、国際都市、芸術都市であるヴェネチアの教育機関として、世界中から教授が集まり、科学や文化からアートまで、様々なジャンルのイベントが頻繁に開催され、充実した生活を送れる環境が整えられています。

そしてこの大学が位置するヴェネチアという都市そのものが、世界中から集まった人との出会いや、独特の文化、見飽きることのない美しさにあふれていて、人生の中の最も特別な経験の一つとなる舞台にふさわしい、素晴らしい場所です。

学習面について

授業は日本と同様、講義形式のものから、少人数グループワークのもの、プレゼンをする機会が多く設けられているものまで様々です。どのスタイルにおいても共通しているのは、学生による発言、議論が活発であるということです。テストは筆記、発表、口頭試問など様々でした。

イタリア語開講の授業、英語開講の授業とどちらも用意されていますが、私が主に選択していた英語開講クラスは国際政治・経済など海外にかかわる授業が多く、しかも、院生向けのものが多いです。姉妹校であるVenice International Universityの授業を受けることも可能で、そちらは英語開講学部生向けのものが多いです。どのような授業をとるか、どのような友人関係を築くかによっては、大学では英語だけで生活していけますが、イタリアはヨーロッパの中で最も英語が不得意な国として位置づけられていて、町中でのイタリア語は必須になります。毎日二つの言語を使う生活で、イタリア語は英語ほどできないまま渡航したため勉強が大変でしたが、使う機会がある分達成感があり、伸びも早かったと思います。

島内には大学図書館から公立図書館までいくつかありますが、中には24時まで開いているものもあり、夜まで図書館で勉強して、帰り道はヴェネチアの夜景を楽しみながら一日を終えるような、今となっては夢のような生活でした

生活について

治安は、昼間は至って日本と変わらず、人混みでスリに気を付ける必要があるくらいですが、夜間はイタリア人でも一人で出歩くことは避けるので日本の感覚でいると危険です。物価はものによって日本とかなり異なりますが、一か月の生活費は日本と変わりませんでした。レストランも価格設定が観光客向けで、学生同士で遊ぶ時は大抵ピザをテイクアウトして外でおしゃべりしたり、安いバーで過ごしたりしていました。大学はもちろん、島の大通りや広場では学籍番号を使ったWi-fi接続が可能です。

アトリエや美術館、ミサやオペラ、クラシックコンサートなど、芸術に触れる機会が日常的に多くあります。また、日本よりもLCCや格安高速バスが多く、長期休暇中は、イタリア国内はじめ近辺の国の行きたかった場所を多く巡ることができました。放課後、休暇など、勉強以外の時間もきっと充実できます。サッカーや食への関心が高い人も楽しめると思います。

暮していて唯一疲れてしまうほど困った点は、あらゆる手続きに根気が必要なことです。郵便局、銀行、移民警察署などで、質問しても知らないと一言で済まされたり、事実と異なる適当な回答をされたりしました。粘り強く聞き続けたり、何日か通って違う職員さんに会えるのを待つしかない時もあるかもしれません。

留学で得たこと

180°考え方が変わった!なんて急激な変化は訪れませんでしたが、素晴らしい、一生残るような時間であったことは間違いありません。

日本にいても考えや生き方が違う人に出会いますから、異国の地では尚更で、完全に自分にとっては新しい考えや経験を持つ人に多く出会いました。その中で、幸せや成功の形は人の数だけあってもいいのだと強く思い、他人から、世間からの評価ではなく、自分がどう生きたいかを真剣に考えた10か月でした。抽象的なことですが、その根本から見つめなおしたからこそ、帰国した今も就活、卒論など自分の生活の出来事すべてに対し、以前よっりもずっと前向きに取り組めているのではないかと思います。遊学にならないよう勉強も頑張りましたが、結局は様々な境遇の人と各々の信念や経験について語り合ったことの方が心に深く残っていて、日本でも人とのつながりをもっと大切にしようと、ありきたりですが、そんなことを心から思うようになりました。

また、終わりがくることがはっきり分かっている生活だったので、失敗したってどうせ日本に帰るならば失うものは何もないのだと思うと、今まで興味があってもなんとなく恐くて挑戦できなかったことに気軽に挑めるようになりました。日本でもそのままの勢いで過ごせるかは微妙ですが、手が届くところにしか手を伸ばさない自分から、手が届かないところにも調子に乗って伸ばしてみるか、という自分になれたことは純粋に嬉しく、今後の人生を充実したものにしてくれるのではないかと思います。

後輩へのアドバイスなど

イタリア語はイタリアに行ってから会話できるようになった身でいうのもためらわれますが、言語能力の向上など国内でも可能なことはできる限り国内で済ませて、それ以外のことを冒険した方が自分にプラスになると個人的には思います。しかし何にせよ、最終的に目標は人それぞれでよいと思うので、そう難しく考えず、少しでも興味があるなら奨学金などのサポートも受けやすい学生時代での留学の機会を逃さない方がいいと思います。楽しいことも辛いことも含め、何が起こるか、それが自分の今後にどう影響を与えるかは、行かなくては分かりません。文章では薄っぺらくしか表現できないことが歯がゆいです。興味がある方自身がかけがえのない経験に出会えることを願います。