Learn from Experience & Letter
経験者から学ぶ&交換留学派遣生からの便り

野口 安澄

ベルギー

自分自身が満足のできる留学にするために

野口 安澄さん

人文学部 人文学科
留学期間:2019年9月 ~ 2020年2月
留学先:カトリック大学ルーヴェン

留学先大学について

 多様性にあふれ、他では経験できないことが沢山できる大学でした。マルチリンガルの友人が多くでき、自分自身も滞在中にオランダ語やフランス語のメニューと格闘したり、英語が母語ではない者同士で会話をしたりする中で、言語に対する価値観も変わります。

 そして、大学の講義はとても有意義なものでした。留学生だからと言って履修できる科目が大きく制限されることもなく、正規の学生と一緒にグループワークをしたり、同じペースで授業に臨めます。大変ではありますがやりがいは感じられますし、何より達成感や自信につながる内容です。ただ単純に単位を取得したり良い成績をとることではなく、得た知識をどのように応用して生かしていくのかに重心を置いていることを、テストや課題の内容や教授の熱心な講義からうかがえました。

 ヨーロッパ内の学生は勿論、アジアやそのほかからの学生も多く、たくさんのバックグラウンドを持った学生が居て、貴重な体験の機会が多いです。平日の夜には町のいたるところでパーティーやイベントもあり、活発な学生が多いです。

学習面について

 正直なところ、思っていたよりもハードでした。留学生用のコースがあるわけではなく、通常のコースをとれるので、学べることは多い分、負担も大きかったです。特に、私自身はせっかくだからと難易度よりもやりたいかどうかを優先して履修したので、専門知識をさらに増やす必要性や、応用力を高める必要が高く大変でした。また、専門的な授業を正規の学生と受けるので、語学力に関しては自分自身であげていく必要があります。しかし、1学期を終えてみると達成感はとてもありました。そして、いくつかのレポートを書いたりテストを受ける中で最も感じたことが、この大学で重視されるのは論理的思考力や応用力だということです。授業で得た知識を暗記してテストに臨むのではなく、さらに自身でその分野や領域についての知見を深めることを意識したテスト勉強をして、実際的な社会場面を想定した問題に取り組みます。難しいけれど得るものは大きかったです。そして、実際にグループワークでディベートをしたり、美術の授業では美術館へ行くことを推奨されるなど、単なる座学で終わらないことが特徴だと感じます。テストがとても難しく、正規の学生でも1か月以上前からテスト勉強にあたっていたり、テスト期間には図書館が満杯になったりするので、周囲のやる気をみてモチベーションを保ちやすかったです。

生活について

 ルーヴェンはあまり広くないながらも、お店や施設が充実していてとても過ごしやすかったです。首都のブリュッセルへも電車で30分ほどで行けるので便利です。

 留学生の数も非常に多く、かなり多様性の高い街である分、生活習慣の違いや価値観の違いが目につきやすいこともあります。特に、住んでいたアパートではそれがストレスや住みにくさに繋がってしまう時期もありましたが、それを対処しようとしたことで、成長につながったという自信も持てます。また、そういった違いは決して悪いことだけではなく、新たな発見ができて、充実感や楽しさももちろん感じました。

 食の面では、思っていたよりアジアの食べ物に対して現地の方の理解や興味があり、アジアスーパーやアジアンレストランが多かったのも驚きました。おかげでホームシックになる心配がなく、想像より快適に過ごせました。また、KULからは学習面に限らず、学生向けのスーパーやご飯屋さんに関する情報をまとめたパンフレットなども貰えるので比較的早いうちから自炊をはじめとする自分の食生活を確立できました。

留学で得たこと

 価値観や文化の多様性に関して柔軟になれた一方で、他者からの評価や、人の目を気にすることなく、自分自身の目標や価値観に従って努力をしたり生活することの大切さも実感しました。よく言われる“良い留学”として、良い成績を収めること、ネイティブの友人を多く作ること、語学力を飛躍的にあげることなどがイメージされるかと思います。もちろんそれも、努力の上で成し遂げられるものであり、留学を通して目指すべき目標です。しかし、この半年間で実感したことは、それらの人から見える努力や成果は、留学中に様々な方面で苦労したり、悩みながら頑張ったことの一部だということです。マイノリティとして生活する中で、言語の壁に限らず、文化や習慣の違いなど、留学以前に想像していた以上に小さなギャップに悩みました。コインランドリーの使い方や電車の乗り方など、日本にいれば当たり前にできることが分からないもどかしさや、同じアパートに住む学生に対して緊張してしまうふがいなさを感じながら慣れない土地で過ごすのは、辛いものもありました。しかし、だからこそ、それらと向き合って乗り越え、過ごした半年間は私にとって非常に有意義で大切ものです。それらをどう自分の糧とし、意味のある時間としてこれからの生活にどう繋げていくかを、決められるのは自分自身でしかありません。だからこそ、これからの生活において自分がどう成長していきたいのかを一番に意識して様々な物事に取り組みたいと思えるようになったと同時に、その結果として得られたものを人からどのように見られるかではなく、自分がどう生かしていけるかに重点を置けるようになったと感じます。

後輩へのアドバイス、信州大学へのメッセージ等

 留学をするにあたっては、どれだけ時間をかけてイメージトレーニングしたり準備をしてみても、足りるという事は無いと思います。予想外のハプニングはたくさんありますし、想像してみなかったところで落ち込んだり、悩むことがあります。しかし、交換留学でよかったと思う点は、エージェントの方などが仲介をして下さるような私費留学に比べて、家探しやお金の準備のような基本的なことを自力で調べて実行できるような、経験できるものの多さと、その一方でいつもどこかで気にかけて下さる方々がいる安心感だと思います。この半期の間、派遣生として自覚を持っていつも自立して頑張ろうと思える一方で、知の森基金をはじめとする沢山のサポートがあったり、私の報告書やブログを読んで下さる方がいるという安心感や充実感がありました。以前は募集に対して、派遣が決まるのはほんの一握りで、交換留学は難しいものだというような気持ちがありましたが、きちんと自分の目標を定めて、やるべきことをこなしていれば決して難しいものではないと感じます。また、留学自体にもハードルを高く感じてしまう方もたくさんいらっしゃるかと思いますし、実際に私自身もそうでしたが、まずはやりたいと思った気持ちを大切にして、いろいろな方法を検討してみてほしいです。交換留学生プログラムでの留学を決めるにあたり、多くの方にご相談に乗っていただき、納得のいく形で留学を決めることが出来ました。

 まずは誰かに相談してみたり、自分で情報を集めていくところから始めて、少しずつ目標を具体的な形にしてみてください。