Learn from Experience & Letter
経験者から学ぶ&交換留学派遣生からの便り

井岡 紗椰

フランス

失敗をたくさんできるチャンス!

井岡 紗椰さん

人文学部 人文学科
留学期間:2017年 9月 ~ 2018年 7月
留学先:リール第一大学

留学先大学について

 フランスの北部にあるリール第一大学は2018年1月に第二・第三と統合しリール大学となった総合大学です。第一では経済学や理学、工学、農学、第二は医学、第三は人文学を学ぶことができます。また留学生(正規、交換、エラスムス含む)のための語学学校が各大学に併設されており、多くの留学生を受け入れていますが、アジア出身の学生は少ないです。バディ制度もあり、運が良ければ素敵なバディに出会えます。法的手続きから履修のことまでなんでもサポートしてくれます。運が良ければ!!!留学生のための歓迎パーティーもたくさん企画されています。大学内にはカフェもあり、店員さんはとてもフレンドリーで優しいのでぜひ行ってみてくださいね!

学習面について

 私が前期に通っていた語学クラスには、日本人女性二人以外はアフリカや中東の大人系男子(?)でした。「さて私は今どこにいるんだ?」と自問自答する日々でしたし、主級レベルなのに政治や経済について話すクラスの雰囲気に馴染むことができなかったのですが、最後には「アフリカ人っぽいよね」とネイティブの方々から受け入れていただきました。とても陽気でフレンドリーな彼らに励まされ、時には怒られながら、フランス語の学習に励むことができました。

 後期は第三大学の映画学科の授業を履修しました。授業は基本的にフランス語で行われるので、授業を録音したり、提示された論文を読むことに必死でした。講義形式(CM)とゼミ形式(TD)があり、どちらも受講していました。一人で座って待っていても声をかけてくれる学生はいませんが、質問すると優しく教えてくれるので映画学科の生徒を捕まえてはお世話になっていました。また、先生方も質問に対して優しく答えてくれるので助かりました。(ただしバカンス時期除く)授業にもよりますが、出席点は加味されず最後のペーパーで成績が決まります。4時間のうちに与えられた設問についてのレポートを書くというのがほとんどでした。(如何せん長いので、クッキーを頬張る学生もちらほらいました。)

生活について

 リールはフランスでも大都市の一つなので、ファッションビルや古着屋がありますし、カフェも充実しているので散歩するだけでも楽しいです。シーズンごとにいろいろなイベントも企画されています。また、ロンドンはユーロスターで一時間、パリへはTGVで一時間、ベルギーはもはや目と鼻の先という、非常にアクセスの良い場所です。一方で、「太陽が出ない」というのが最大の悩みです。(アランドロンの「太陽がいっぱい」とは一体どの国の話ですか。いや、舞台はイタリアですが。)太陽がないっていうのは、本当にしんどいです。雨も多い。日光浴をする気持ち、とてもわかります。現地のフランス人との交流が多く、アフリカや中東出身の留学生以外の留学生とはあまりかかわらなかったので、英語を使うといえば韓国出身の友人たちと話すときぐらいでした。第一大学の留学生は英語、第三大学の留学生はフランス語を主に使用していたような印象です。また、現地の日本人学校でボランティアをしており、日本語を学ぶフランス人の方々や日仏および日ベルギ―家庭、駐在している日本人家庭の子供たちの日本語や国語の授業のアシスタントをしていたので、現地の教育や家庭について知ることができました。

留学で得たこと

1・人との出会い:恵まれたなと思います。最初は全く友達がいなかったけれど、帰国後もコンタクトを取り続けたり、日本で再会できたりした人は何人もいたのが結果です。そして人との出会いによって、人生の楽しみ方を学びました。フランス人は人生を豊かにする方法を熟知しています。仕事はしないけど。

2・社会問題への興味:私の顔を見て足を差し出してこけさせようとしてきた男性、窓越しに話しかけてきたストリートチルドレン、いつも同じ場所で懸命に訴えている難民の姿は私の心に衝撃を与えました。今までニュースでしか見てこなかったことが目の前で起こっていることに対する衝撃は、私が社会的問題を軽視していて、はるか向こうにある問題だととらえていたからですが、その経験は社会を強く意識するきっかけとなりました。

3・私が言葉を学ぶ理由の発見:ドーナツの穴があるかないかについて触れた映画のシナリオ(授業の課題)より、「ドーナツの穴ってなんや?」と先生やゼミ生から問われたことから、言語って文法的に正しくても伝わらない時ってあるよなあと実感しました。(そういえば、フランスってドーナツをあまり見かけないんです。久々にスーパーで見たドーナツは丸かった。いや、球ですね。)フランス語を学んでいたからこそ見えてきた自分や日本の姿があって、だからこそ母語以外の他言語を勉強する必要があるし、それは「私が私を知るために」なのかなと思いました。

後輩へのアドバイス、信州大学へのメッセージ等

 たかが一年の留学ですべてが変わるよ!とは言いません。その一年ですべてが変わったら、今まで生きてきた20年ちょっとの時間は何だったのかというのが私の本音です。でも、モノの見方は確実に変わると思います。自分の中の引き出しが増えます。「マイノリティ」として、現地で生きることによって生まれる批判的な物事の見方は将来、必ず自分の糧となるはずです。

 年齢が上がるにつれて、失敗が許されなくなってくる社会は目に見えないけど存在するような気がしています。だからこそ、留学にいって思う存分、失敗してきてください。失敗しないと学べないと私はそう思います。

不器用だから…人間だもの byいおを

 最後になりましたが、日本で留学出発までにサポートしていただいた先生方、家族、友人、また現地でお世話になった北フランスの皆さん、支援していただいた知の森基金には感謝してもしきれません。本当にありがとうございました。