Learn from Experience & Letter
経験者から学ぶ&交換留学派遣生からの便り

吉野 ひかる

ドイツ

外国人として過ごした1年

吉野 ひかるさん

人文学部人文学科
留学期間:2018年 3月 ~ 2019年 2月
留学先:ライプツィヒ大学

留学先大学について

 ガラス張りの教会風という斬新な外観はライプツィヒという都市の見どころのひとつになっていると思います。施設内の設備もとても充実しており、特に図書館の規模には驚きました。市内に散らばるキャンパスごとに置かれていますが、私は本キャンパス内の図書館のソファーでゆったりと座って勉強したり、東洋学図書館で日本の本に囲まれてほっとする雰囲気を味わいながら読書をしたり、あるいは語学の本や専門書を探す場合はAlbertinaという大学図書館の中で一番大きな建物に出向いたりしていました。

 ここの大学生であることを証明する学生証は、公共交通機関以外にも構内でのコピーや学食、カフェなどで重宝されるので、無くしてしまうととても不便です。

学習面について

 私は1年間を通じて語学に関する授業を多く受けていました。ドイツ語の授業で日本人は自分だけ、という状況は新鮮で、クラスメイトとお互いの国についてよく話し合う機会にもなっていました。優しい先生が多かったですが、特に発音の授業の先生は快活で授業のテンポもクラスの雰囲気も良く、恥ずかしがらずに苦手な発音を大きな声で練習できてよかったです。また、日本学科の院生とともに日独の翻訳・通訳の授業を取っていましたが、これもかなり身になりました。

 こうした授業のおかげでドイツ語と同じくらい日本語や日本の文化について考える時間も多かったです。正規のドイツ人学生と受ける専門の授業では、周りの学生のモチベーションの高さに圧倒されることが多かったです。ある講義では45分間質問が続いたこともあり、学ぶ意志や意欲に非常に刺激を受けました。

生活について

 よく言われることですが、家賃や化粧品、そしてスーパーに並ぶ食料品の安さなどは本当にありがたかったです。留学前はコンビニがないことを少し気にしていましたが、すぐにない生活に慣れましたし、休息を大事にするドイツの人たちには少なくとも今は必要ないのではないかと思います。大学の周りや中心地から少し郊外に出れば大きな公園や湖など豊かな自然にも恵まれており、生活環境にはよほどのことがない限り不満を持つことはないはずです。(おいしい日本食レストランを見つけるのは少し苦労しますが…)

 また、ドイツにいると人との距離感が日本より近くに感じます。ハグの習慣はもちろん、知らない人に気軽に話しかけられたり、バスや路面電車がすれ違う時に車掌同士で手を挙げて挨拶している光景を見たり、ちょっとしたところで周りの人の温かさを感じることができました。驚いたことに、街中を歩いていてドイツ人や観光客らしき外国人に「○○はどこにあるの?」と道を尋ねられることが留学中に5回ほどありました。相手にとっては私がアジア人の顔をしていることは関係なく、たまたまそこにいたから、ここに住んでいそうな人だったからということなのでしょうか。とにもかくにも人同士の壁を感じないことがカルチャーショックのひとつでした。

留学で得たこと

 日本とは全く異なる文化圏の国で1年間外国人として生活したこと、そして留学をしなければ出会えなかった人たちとのつながりが自分にとってはかなり大きいです。自分が外国人としてどういった態度をとられたりとったりすれば気持ちが良いのかを少しずつ学びました。

 また、日本に興味のある人ない人、他の留学生やボランティア活動を通して知り合ったドイツ以外の外国人、様々な目的からドイツに住む日本人、本当に多種多様なパーソナリティを持った人が世の中にはいるし、国籍だけで人は判断できないものだと実感しました。留学期間限定にせず、この先もずっと関係を続けていけたらいいなと思っています。

 私はこれが3度目のドイツだったので、以前に知り合った人たちと再会できたこともとてもうれしかったです。新しい環境に飛び込むことはコミュニティを広げるチャンスだと身をもって体験し、行動することへの自信もつきました。

後輩へのアドバイス、信州大学へのメッセージ等

 留学中、知り合った多くの人たちから「将来何をしたいの?」「なんで英語じゃなくてわざわざドイツ語を勉強しているの?」「ドイツのどこが好き?」といったようなことをよく聞かれました。こういったことを何度も聞かれる中で、答えがテンプレート化してしまったとき、もう一度自分が何をしたいのか、なぜ留学をしているのか、なぜドイツ語を今必死に学んでいるのかを考え直すようになりました。もちろんはっきりした目的をもって留学をするのはいいことだと思いますが、私は留学生活の終盤になってようやく「ああ、だから自分は留学したかったのか」と理解し、しっかりと自分の言葉で理由を伝えられるようになりました。

 費用などの問題はあるかもしれませんが、私はできれば1年間の留学をお勧めします。後半の半年間に入ると身も心も余裕ができて周りが見えてくるようになり、様々なことに対して考えながら行動できるようになるからです。ただ、半年でも1年でも、学生のうちにしかできない貴重な時間を過ごせることは断言できます。