Learn from Experience & Letter
経験者から学ぶ&交換留学派遣生からの便り

B

ポーランド

ポーランドで英語留学したことについて

Bさん

人文学部人文学科
留学期間:2014年9月~2015年6月
留学先:ワルシャワ大学

留学先大学について

ヨーロッパで9番目に大きいポーランドの首都にあるワルシャワ大学では、エラスムスなどの制度を利用して多くの留学生が英語のプログラムで学んでいます。また、主に東欧諸国や中央アジアからはポーランド語のプログラムに参加する学生がやってきます。キャンパスはワルシャワ市内に点在し、授業の組み合わせによっては公共交通機関で授業を行き来することもあり、渋滞に巻き込まれると大変な時もあります。ワルシャワ大学は、2016年に創立200周年を迎えます。

学習面について

ポーランドで英語留学するのってどうなの?このような質問は、留学前後問わずに聞かれます。ポーランドに限らずヨーロッパの大学は非英語圏であっても、分野の偏りはありますが、学位取得のものも含め英語のプログラムが多くあることをまず初めにお伝えしておきます。

ワルシャワ大学では、授業ごとにポイントがあり、履修登録できる普通科目の総合ポイントが30ポイントまでと決まっています。一つの授業で7ポイントのものもあるため、授業の組み合わせによっては多く取ることができません。また、私は英語のプログラムで留学をしましたが、それでも他の英語圏と比べ、特に学士のレベルでは英語の授業の開講数が限られているため、自分の学部の授業と同じ数、同じ内容の授業をこちらで履修することは難しいと思いました。それでも、良い面を挙げると、信州大学にはない授業を学ぶことができます。例えば、留学生向けの授業では、ヨーロッパのドイツやフランスといった国だけではなく、EU全体やインド・アジアなどの地域を国際関係学の視点から学ぶことができます。言うまでもなく、ポーランド語とポーランド文化については、授業内外でたくさん学ぶ機会があり、これらは日本ではなかなか無い機会でしょう。外国語授業に関しては、ポーランド語以外の第二外国語をもう一つ履修することができます。人気の言語の初級は英語開講のものがありますが、中級以上になるとその言語で教わります。ほとんどのスポーツがポーランド語で行われていますが、留学生も履修することができます。

生活について

現在、ポーランドではユーロではなくズロチという通貨を使用しています。そのため、いわゆる西欧・北欧諸国のユーロ圏等と比べ、全体として安く生活ができるのが事実です。しかし、食品や交通費などは安いですが、服や生活用品は同じくらいです。お店でも英語が通じないことがあります。冬は、灰色のどんよりとした日が続き、日が8時ぐらいに昇り沈むのは15時30分前でした。それでも室内の温度が調節され、半そで半ズボンで過ごせる環境でした。そのため、ポーランドの冬より松本の方が寒かったような気がします。一方で、夏は4時に明るくなり、夜の9時30分過ぎまで日本の夕方のような明るさです。留学期間中は年間を通じて暖かく、特に夏は、日中の太陽が差し込む部屋でエアコン無しで過ごすのは大変でした。以下、驚いたこと・気が付いたことをいくつか挙げます。①喫煙者の数が多く、歩きながらの路上喫煙はもちろん、校門を出た付近で喫煙者コミュニティーができる。②なぜかごみを分別しないため、ビンも紙も一緒のごみ箱に捨てる。③タバコを町のごみ箱に捨てる時、タバコと普通ごみの仕切りはあるが、たまにタバコの残った熱でごみから煙がもくもく出ていることがある。④会計前に未会計品を食べている・飲んでいる。⑤世界一アルコール度数が強い(96%)スピリタスという酒は、飲料用ではなく、主に医療・薬用に使われている。⑥1.5リットルのボトルと、丸ごとのリンゴを持ち歩き、飲食をする。⑦留学生たちは、年齢性別を問わず、毎日のように母国にいる家族に連絡をしている。⑧10ヶ月間ポーランドにいるからって、努力無しにはポーランド語は本当に身につかない! Nie mówię po polsku (I don’t speak Polish)

留学で得たこと

ポーランド、ヨーロッパで生活するということ。言語の異なる国々が隣接し、国境を超えれば国語が変わる。英語圏なんてほんのわずかで、多様な言語が存在する大陸では、授業やコミュニケーションツールとして英語を使用するが、文字通り英語が全てではない。このような考えの中、英語学習を中心に進め、思うように行かない部分もありましたが、最終的に自分と向き合い、将来の可能性を広げることができました。私がこの留学で得たことは、主に3つあります。

第一に、人との出会いを通じて、コミュニケーション能力が上達しました。ポーランドという非英語圏で、英語を外国語として話す他国からの留学生や、英語を少しだけ話す寮の友だちなどに囲まれながら生活をしていました。“I haven’t money“ ”she don’t like“だって伝わります。最初は、間違いが気になっていたものの、一人一人の英語の特徴を理解しながら会話をするようになりました。時には、旧ソビエト圏から来た人と、Google翻訳を使いながらロシア語でやりとりをすることもありました。もちろん、授業や公式な場では正確さも必要であり、そこは意識して英語を使うようにしていました。

第二に、誰かと内容のある会話をしたいという思いから、外国語学習だけでなく知識の獲得に努めるようになりました。留学期間中、外国語の能力ではなく、知識が足りないということに、ひしひしと気づかされました。例えば、学生同士で文化について話すとき、アニメはもちろんですが、日本の文学作品について話題になることが多かったです。ポーランドだけでなく、他の国からの留学生の会話では、村上春樹をはじめ三島由紀夫や、紫式部が著した『源氏物語』など、有名な作家や作品をよく耳にしました。外国語の勉強も十分に大切ですが、知識の向上はそれ以上に大切なものだと思います。もしかしたら、外国語が難しいのではなく、自分の知識が足りないからスムーズに会話が続かなかったりするかもしれません。

第三に、母国語を楽しむ余裕をもつということ。留学というと、外国語能力の向上を目標にすることが多いと思います。留学当初、非英語圏で英語を勉強するのだから、英語圏で留学する人以上に頑張らなければいけないと焦っていました。その手段として、母国語である日本語との生活を切り離そうとしていた時期もあります。しかし、いかに母国語や他の言語を忘れたかで、その外国語がどれほど伸びたのかということにはならないということに気が付きました。留学生の多くは、母国語の他、文化的・地理的に近隣諸国の言語を話すことが多かったです。特に、歴史的な背景もあって旧ソビエト圏出身の人は、3,4ヵ国語を駆使していました。また、ワルシャワ大学にある日本語学科の学生と日本語で関わる機会があっただけではなく、留学生や一般のポーランド人で日本語を勉強している人々に出合いました。授業やバスの中でいきなり話しかけられて、日本や日本語の質問をされることが多々あり、日本の外で日本語と触れ合う機会は十分にありました。さらに、同じ言語を話す者同士の情報交換や相談は、留学期間中欠かせないものでしょう。母国語や母国語話者と変に距離をとるのではなく、時には思いっきり楽しんでお付き合いするといいと思います。

後輩へのアドバイス、信州大学へのメッセージ等

1年間ポーランドのワルシャワ大学で留学をして、アドバイスできることは、信州大学でも学べることがあり、留学は一つの選択肢であって無理して時間とお金をかけてするものではないということです。特に、半年~1年間留学だと、「現地で思うように授業が履修できず、留学生活が思ったものではない」「5年間で卒業するから余分に日本でも生活費がかかる」といったことも考えられます。4年間しっかりカリキュラムに沿って信州大学で学ぶ方が、費用もかからず効率もいいかもしれません。もしくは、長期休暇を利用して短期で留学をするか、奨学金を得て自由に選べる私費留学も選択肢の一つだと思います。それでも、もちろん外国で観光客ではなく、学生として生活をするということは貴重な機会にもなりますし、日本にはない新しいことを学ぶことができるしょう。私の場合、非英語圏で英語学習が思うようにいかなかったことや、授業に満足しきれなかったことなどもありますが、結果的に留学をして少し遠回りをし、様々な人との出会いから、ぼんやりとしていた自分の興味があることを確実なものにしました。色々なことを吟味して、自分にあったものを選択してください。