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機械・ロボット学科 中楯 浩康 准教授がJohn Paul Stapp Best Paper Awardを受賞
2019.01.31
機械・ロボット学科 バイオエンジニアリングコースの中楯 浩康 准教授が、2018年11月12~14日にカリフォルニア州サンディエゴで開催された第62回 Stapp Car Crash ConferenceにおいてBest Paper Awardを受賞しました。Stapp会議は、インパクトバイオメカニクス (衝撃生体工学) の研究領域で最も権威のある国際会議で、毎年米国で開催されています。前年度のStapp会議での発表の中から傷害低減に関連するインパクトバイオメカニクスの分野に最も貢献した論文に対してStapp賞が贈られ、今回21件の発表の中から1件が選出されました。中楯 准教授の受賞題目は「Strain-rate dependency of axonal tolerance for uniaxial stretching」で、日本人が受賞するのは今回が初めてです (写真左: 中楯 准教授、右は共著者の独立行政法人自動車技術総合機構 交通安全環境研究所 松井 靖浩 氏)。
研究概要 : ヘルメットの保護性能評価などで活用されている唯一の頭部傷害基準 HIC (Head Injury Criterion) は、頭部の重心加速度とその持続時間から頭蓋骨骨折を予測するパラメータであり、その耐性値は献体や動物を用いた実験により決定してきました。一方で近年、ヒト頭部の脳を模擬した有限要素モデルを用いた事故再現シミュレーションが盛んに行われるようになり、脳挫傷や脳震盪、びまん性軸索損傷などの外傷性脳損傷が発症する際の脳組織の動的挙動を評価できるようになりました。そこで本研究では、頭部外傷時の脳組織変形を模擬可能な細胞引張装置を開発し、脳神経細胞に様々な組み合わせのひずみ・ひずみ速度を負荷する実験を行いました。その結果、軸索損傷の閾値はひずみ0.15であり、損傷の程度はひずみ速度に依存して増大することが分かりました。しかし、ひずみ0.1ではいくらひずみ速度を大きくしても軸索は損傷しなかったことから、軸索のひずみ耐性は、ひずみの大きさがまず優位に働き、耐性値を超えたひずみ下では、その損傷程度は速度依存的であると考えられます。本実験で得られた損傷閾値を事故再現シミュレーションに実装することで、受傷直後には発症していない、もしくはMRIやCTなどの画像診断では特定が難しい病態を予測する診断支援ツールとして活用されることが期待されます。