研究室の歴史的流れから,ポリビニルアルコール(PVA)[(-CH2-CH(OH)-)n]とポリオルガノホスファゼン(POP)[(-N=PX2-)n,Xは様々な有機基]が現在,当研究室の二大研究対象高分子である.
PVAは人生にたとえれば熟年期にあるがゆえに,「古い」といったイメージだけを与えるかもしれないが,これが結構味わい深い,愛着を感じざるを得ないポリマーであるという心境に達するまで15年を要した.それでも,きら星のごとく燦然と輝く多くのPVA諸先達から見れば,まだ青い.あまり装置がない所でも,また,お金をかけなくても,PVAは実験らしいことができる点が重宝するほんとうの理由かもしれない.とりあえずガスバーナーとオイルバスがあれば試験管で水溶液にでき,あとはフィルムにも繊維にもできるし,そのままゲル化させることもできる.不遜な言い方になってしまうが,テーマに困れば,流行のテーマをそのままPVAに適用してなんとか研究ができる.かといって,単なる真似事に終わることもない.本当にすごいポリマーである.
もう一つのPOPは,ある意味でPVAの対極に位置するポリマーである.化学的な分類の仕方では,両者は全く異なる高分子同士であることはきちんと言っておく必要がある.PVAは純然たる有機高分子であるが,POPは主鎖が窒素とリンの繰り返しからなる無機骨格で,側鎖が有機基からなる無機-有機ハイブリッド高分子である.しかしなんと言っても,大きな違いは研究者の数である.POPの研究者人口はきわめて少ない.世界で今POPを常時研究しているグループ(アカデミックな機関)は100あるだろうか,下手をしたら20も無いかもしれない.PVAなら何百,何千にものぼるであろう.研究者が少ない理由は当然,実用的な役に立ちにくいことによるのであろうが,研究だけを目的とするならばこれもたいへん興味深いポリマーである.研究者が少ないと言うことは,何をやってもほとんど自分たちが最初になり,わくわくする毎日である.といいたいが,困ることは非常に多い.まず,基本物性値(結晶構造,密度,融点など)がデータ集に当然少ないので,自分たちで調べなくてはならない(*).かといって,調べることもできず絶望感に近いものを感じる日もある.基礎物性値を出すこと自体がオリジナル研究になりうると思いこもうとしても,応用的な研究になれてしまった者にとっては(といっても実績は少ない),なかなかそういう気持ちになれない.研究というものの本質を問いかけられているのだろうか?ほとんどの事柄で,PVAとPOPは似ていないが,ひとつ非常に共通したところがある.それは,当研究室で採用している合成方法が,両ポリマーとも側鎖置換法によっている点である.すべて置換したつもりでも,数%,あるいは零点数%の未置換部分を残してしまう(意図的にも残せる)ので,できあがった高分子の性質を変える手法が似てくる.このことが,二大高分子となっているほんとうの理由であろうか.
(脚注*)PVAでも意外に調べられていない物性値があり,このことは必ずしもPOPの特徴とも言えない側面があるのは複雑なおもいでもある.
以下,最近行った研究をポリマー別に述べていくことにする(二大高分子以外についても).
(3)ポリビニルアルコール[PVA]に関する最近の研究 (4)ポリオルガノホスファゼン[POP]に関する最近の研究 (5)ポリ(ジアセトンアクリルアミド)[PDAAM]に関する最近の研究 (6)ポリ(4-メチル-1-ペンテン)[P4M1P]に関する最近の研究 教育研究内容へ戻る