2025年 春・ドイツ 「ドレスデンでの挑戦と学び」(基礎研究)
氏名:小口 奈央
派遣先:ドイツ ドレスデン工科大学
期間:2026年3月~2026年5月
留学先大学について:
ドレスデン工科大学は、ドイツ東部ザクセン州の州都ドレスデンにある総合大学です。工学・自然科学に強く、医学や人文社会科学を含む分野横断的な研究にも力を入れており、ドイツの「University of Excellence」に選ばれています。私が通った医学部・大学病院のあるキャンパスには、歴史を感じる建物と新しい研究施設が並び、緑が多く、エルベ川にも近い落ち着いた環境でした。
学習面について:
放射線腫瘍学研究施設OncoRayのTumor Pathophysiology(TPP) Groupに所属し、Leoni Kunz-Schughart教授のご指導の下で研究に取り組みました。TTP Groupでは、腫瘍の増殖や治療抵抗性のメカニズムを明らかにするため、二次元培養に加え、スフェロイドや共培養など、実際の腫瘍に近い三次元モデルを用いた研究が行われています。研究室にはさまざまな国や、異なる専門分野を持つメンバーが集まっており、気軽に質問し、率直に意見を交わせる雰囲気が印象的でした。
私は、博士課程の方の研究の一環として、頭頚部扁平上皮癌において、血清濃度とスフェロイドの大きさが腫瘍内部の低酸素領域の形成に与える影響について検討しました。腫瘍内に生じる低酸素環境は、放射線治療や薬物治療への抵抗性に関わると考えられており、腫瘍微小環境を理解するうえで重要な要素です。研究室のメンバーと相談しながら実験計画を立て、細胞培養、スフェロイド作成、免疫蛍光染色、顕微鏡での観察まで、一連の実験工程を経験しました。思うような結果が得られず、条件を見直したり、細胞培養からやり直したりすることもありましたが、研究室のメンバーと原因や次の進め方についてディスカッションを重ねながら研究を進めました。英語で自分の状況や考えを正確に伝えることには難しさも感じましたが、わからないことを早めに共有し、周囲に相談することの大切さを学びました。自分の研究課題以外の実験手技を経験させていただいたほか、医学部の臨床の授業や実技の講習に参加する機会もいただき、研究と臨床の両面から学ぶことができました。
生活について:
留学中は、大学のすぐ近くにあるゲストハウスに滞在しました。ゲストハウスには学生に限らずさまざまな国・立場の方が暮らしており、共用キッチンで料理をしながら話したり、廊下で挨拶を交わしたりと、自然に交流が生まれる環境でした。周辺は緑豊かな落ち着いた住宅街が広がり、スーパーやコインランドリー、カフェなども揃っており、生活に不便を感じることはほとんどありませんでした。中心街へもトラムで20分ほどとアクセスが良く、友人との食事や街歩きも気軽に楽しむことができました。
春のドレスデンは日が長く、平日の帰宅後にもゆっくりと過ごせたことが印象に残っています。街を散策したり、友人と川辺でピクニックをしたりと穏やかな時間を過ごしました。休日には一人旅や友人との旅行を楽しんだほか、研究室のメンバーにハイキングや食事に連れて行っていただく機会もあり、ドレスデンでの暮らしや春のヨーロッパを存分に味わうことができました。
留学で得たこと:
まず、研究室に所属し、2か月間じっくりと一つの研究課題に向き合えたことは、今後もなかなか得られない貴重な経験だったと思います。基礎研究を経験したことで、さまざまな病態への関心が深まり、帰国後の臨床実習でも、以前より幅広い視点で学べるようになったと感じています。
研究の合間には、チームのメンバーと将来のことや各国の医療について話すこともありました。現地で出会った方々は、それぞれ異なる背景や経験を持っており、話を聞くだけでも大きな刺激になりました。私自身も、どのような医師になりたいのか、今後研究にどのように関わっていきたいのかを聞かれることも多く、自分の将来について考えるきっかけになりました。また、研究チームの方々に研究への取り組み方をほめていただくこともあり、海外の方々から学ぶだけでなく、自分では当たり前だと思っていた姿勢や、日本で身に付けてきたものの良さにも気づくことができました。
現地に一人で到着したばかりの頃は、電車の乗り方すらわからず、英語が通じない場面も多くあり、人に話しかけることも躊躇っていました。しかし、現地で生活し、少しずつ人と話すようになると、文化や習慣が違っても、相手への気遣いや真面目に向き合う姿勢、笑顔やユーモアは、国内外関係なくどこにいても伝わるものであり、新しい場に不安を抱きすぎる必要はないのだと気がつきました。渡航前の準備から現地での研究や生活まで、自分なりに精一杯頑張ったと胸を張って言えるからこそ、この留学に関わる全ての経験が、これからの自分を支える自信になっているのだと感じます。
後輩へのアドバイス、奨学金システムへ一言:
後輩の方々へ。留学に行くためには、ほかのこととの両立に悩んだり、何かを諦めたりしなければならないこともあるかと思います。それでも少しでも行ってみたいという気持ちがあるならば、是非挑戦してみてほしいです。きっと学生生活の中で大切な経験になると思います。
最後になりましたが、今回の留学をさまざまな面から支えてくださった田中教授、国際交流推進室の皆様、松医会の皆様に、心より感謝申し上げます。また、本留学はJASSO奨学金の支援を受けて実現したものであり、この場をお借りして御礼申し上げます。