体験報告

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体験報告

2024年度 春・イタリア「まず始めてみてみる」(臨床実習)

氏名:村上 陽太
派遣先:トリエステ大学 (Burlo Garofolo Pediatric Institute)
期間:2025年3月~5月

留学先大学について:
トリエステ大学は、イタリア北東部フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の港町トリエステに位置する国立大学で、約15,000人の学生が在籍しています。私が実習を行ったのは、同大学と連携する小児専門病院「Burlo Garofolo」です。この病院は市の中心部からバスで15分ほどの丘の上にあり、最新の医療設備と研究施設を備えた小児医療の拠点です。臨床の現場ではイタリア人スタッフとの交流を中心に普段の実習とは全く異なる環境の中で学ぶことができました。

学習面について:
1〜2週間を目安に興味のある診療科を回り、各科で研修しているレジデントに同行する形で実習を行いました。実際の期間としては、臨床部門(全身的な問題を抱える入院患者を担当する部門)で3週間、小児循環器内科で3週間、小児消化器内科で2週間、小児救急科で1週間、学ばせていただきました。レジデントの方々には、患者さんとの会話の内容を英語に訳していただいたり、疾患について口頭や資料を用いて説明していただいたりすることで、理解を深めることができました。

生活について:
トリエステでは、1か月単位で部屋を借りて滞在していました。最初の1か月に借りた部屋では、大家さんが同じ建物に住んでおり、多国籍のゲストが集まるホームパーティーに招待していただくなど、国際的な交流を楽しむことができました。
平日は自炊を楽しみながら過ごし、休日にはトリエステ大学の学生さんとの交流や、レジデントの方々との食事、近隣の観光地への旅行などを通して、イタリアでの生活を満喫することができました。

留学で得たこと:
私が留学を通じて得た最も大きな価値観は、「ダメで元々」という考え方です。
実習が始まってまず直面したのは、自分の医学英語の知識の乏しさでした。そこで、説明に使用されていた医学英語を学習することで、2週目以降にはある程度まで理解できるようになりました。しかし、その後もレジデントによってはイタリア語風の発音が強く、完全に理解できないこともありました。1か月ほど経ち、英語力の伸びが頭打ちになったと感じた私は、「何か他にできることはないか」と焦りを感じていました。
そんな時、講義のためにアメリカから来ていた小児循環器内科の教授とお話しする機会がありました。英語でのコミュニケーションに困難を感じていると伝えたところ、その方は過去にメキシコへ留学されており、自分も同じような経験をしたと話してくださいました。英語を母国語とする人でさえ、留学時にはコミュニケーションの困難を感じることを知り、自分が感じている苦労も当然のことなのだと、少し心が軽くなりました。
この経験から、留学中に感じたその他の文化的な違いから生じる壁についても、「すべてを解決できるとは限らない」と割り切ることができるようになりました。そして、「たとえ何も成し遂げられなくても、できることを続けていこう」という姿勢へと変化しました。
この考え方は、留学に限らず、今後困難に直面したときにも自分を支えてくれる大切な価値観になると思っています。

後輩へのアドバイス、奨学金システムへ一言:
英語が得意な人にとっても、そうでない人にとっても、異国の地での実習は大変な日々になると思います。ただ、その分だけ自らの成長を実感できたり、周囲の人々の優しさや、初めての出来事への楽しさを感じることができます。
もし「留学してみたい」という気持ちがあるのなら、「自分が留学なんてできるのかな」と不安に思うのではなく、「英語の勉強を始めてみる」や「国際交流推進室の方に相談してみる」といった、できることから始めてみてください。その結果がどうであれ、目標を持って行動したという経験は、きっと将来につながる大切な財産になります。
最後になりますが、留学にあたりご支援くださった田中教授、国際交流推進室や学務の皆様、松医会の皆様に心より御礼申し上げます。

 
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