2024年度 春・アメリカ 「激動の時代の中心地アメリカにて」(基礎研究)
氏名:五十嵐 優希
派遣先:アメリカ カリフォルニア大学デイヴィス校
期間:2025年3月~5月
留学先大学について:
私の留学した大学はUniversity of California, Davis (UC Davis)です。UC systemという州立大学群に属する10校の内の1校であり、農学・獣医学・医学などで有名です。メインキャンパスはDavisにありますが、School of MedicineとMedical Centerは車で30分ほど離れたSacramentoにあり、私はそちらで過ごしました。Sacramentoはカリフォルニア州の州都であり、San Franciscoから車で2時間ほど内陸に位置しています。
学習面について:
検査医学・病理学のRalph Green教授のラボに所属して基礎研究を2ヶ月行いました。研究室のターゲットは葉酸(FA: folic acid)とビタミンB12の代謝経路であり、マウスやオルガノイド、臨床研究などそれぞれが様々なアプローチで謎を解明しようと研究を行っていました。私が行ったのは、葉酸の代謝に関連する酵素、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR: dihydrofolate reductase)の活性測定です。残念ながら、今回の留学中には有意な結果は得られませんでした。しかし,研究におけるトライ&エラーを実際に経験することができ、このように試行錯誤を繰り返して一歩一歩研究成果に近づいていく面白さを理解することができました。
生活について:
Annaというイギリス人のご婦人のお家でゲストルームを貸していただいて生活していました。Annaもラボメイトも大変親切で、買い物や遊びに連れて行ってもらいました。アウトドアアクティビティを好む人が多く、ハイキングやpickle ballなどに誘われることが多かったです。また、ボードゲームもかなりメジャーで、様々なものが売られていました。物価は高めで、家賃は前払いしていきましたが、かなり高額でした。車社会で地域によって違うそうですが高速道路は無料ということに驚きました。San FranciscoやLake Tahoeに観光に行きましたが、Sacramento周辺のフラットな地形から高低差の大きいSan Franciscoや山脈内にあるLake Tahoeは全く気候も景色も違い、とても興味深かったです。California州は西海岸のためアジア系の移民が多く、またMexicoと国境を接していることもあり、食を始めとした様々な文化が混じり合い融合して新しい文化となっていました。
留学で得たこと:
今回の留学中に私がアメリカで出会った人々は、ほとんどいつもポジティブに物事をとらえていたのがとても印象的でした。失敗を成功の対極ではなく成功のためのステップの1つと捉える姿勢、そして違いを尊重し、違うことを肯定的に捉えるマインドセットがアメリカという国の多様性とそこから生まれる発展の基礎にあるのだと感じました。しかしながら、現在のトランプ大統領の施策はどれもこれらに反するものであることも事実です。California州は民主党支持者の多い州で、反トランプのデモがあったり、そうでなくとも話題になることはしばしばありました。特に留学期間の最後の数週間はトランプ大統領がハーバード大学、そして他の全ての大学の留学生の受け入れを停止するとの指示を出しており、私自身も何か起こるかもしれないという緊張感をもって生活していました。とても難しい時期でもありましたが、この揺れ動く空気感を感じることができたのは大きな収穫であったと感じています。
後輩へのアドバイス、奨学金システムへ一言:
留学はハードルが高いと感じている人も多いかもしれません。実際、語学力や資金、提出書類など乗り越えるのが大変な壁はいくつかあります。しかし、実際に旅立つ時は1人だとしても、ハードルを乗り越えるために手を貸してくださる人は大勢いて、飛び込んだ先にも必ず助けてくれる人がいます。なので、まずは「留学に興味がある」と手を伸ばしてみましょう。そうして一歩踏み出してみれば、実際そんなに難しいことではなかったと分かるはずです。その手助けの1つとして、今回の留学に際しまして、松医会の先生方、JASSOの皆様に多大なるご支援をいただきましたこと、この場を借りて御礼申し上げます。誠にありがとうございました。