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疾患予防医科学系専攻の新藤教授らが血管や心臓を健康に保つメカニズムを解明

13年02月18日

疾患予防医科学系専攻 新藤教授

疾患予防医科学系専攻 新藤教授

心不全や腎不全などの慢性臓器不全の治療法開発につながる、血管や心臓を健康に保つメカニズムを解明したとして、疾患予防医科学系専攻の新藤教授が2月15日に記者会見を行いました。

新藤教授は会見で、「心臓や肝臓、腎臓等の臓器を健康に保つ上で、血管は中心的な役割を果たしており、血管を健康に保つことは心不全や腎不全、肝不全等の疾患を予防する上で重要な鍵となる。今回は、これら血管を健康に保つためのメカニズムが分かり、慢性臓器不全の治療法の確立が期待できる」と述べました。

新藤教授によると、血管は自らが血管や臓器の働きを正常に保つ「アドレノメデュリン(AM)」という物質を作り出しており、以前からこのAMが血管や臓器の健康維持に有用であることは分かっていたものの、このような生理活性物質は体内に入るとすぐ分解されてしまうため、治療には使えませんでした。

そこで、このAMの機能を制御しているRAMP2というタンパク質に注目、血管や心臓だけで人工的にRAMP2の働きを抑えたマウスを作成し、そのマウスで心不全・腎不全・肝不全等が自然発症することを確認し、AMとRAMP2が血管を若々しく健康に保つための仕組み=「血管恒常性維持」で中心的な役割を果たしていることを明らかにしました。

新藤教授らの研究グループでは、このRAMP2の機能を人工的に操作できれば血管や臓器の健康を保てると考え、RAMP2に作用する化合物や抗体を研究、慢性臓器不全の治療法の確立や創薬につながるとしています。今回の発見は、病状が悪化した段階で後追い的に元に戻すことに主眼を置いた今までの治療と異なり、病気が発症する前の段階で対処する、予防するという点で画期的と言えます。

信州大学医学部では、昨年の4月に「疾患予防医科学系専攻」を設立し、全国一の長寿県である「長野」という特色を生かした医学研究を行っています。福嶋医学部長および樋口専攻長は、今回の研究成果を、「病気へと進む初期の段階で的確に診断し、病気に先手を打ち、病気が表に出ないうち、あるいは病気の初期の段階で抑えてしまう「疾患予防医学」の観点からも重要である」としています。

研究成果は、2013年2月19日の米国心臓協会雑誌「Circulation」および「Hypertension」誌で発表されました。

会見に先立ち挨拶する福嶋医学部長

会見に先立ち挨拶する福嶋医学部長

疾患予防医科学系専攻 樋口専攻長

疾患予防医科学系専攻 樋口専攻長