ソバ本来の風味を味わう無製粉・直捏ね「水萌千本杵搗製法・どうづきそば」が商品化
13年02月22日
無製粉・直捏ね「水萌千本杵搗製法・どうづきそば」
ソバ本来の風味を味わう「どうづきそば」が商品化
新たに開発した「水萌千本杵搗製法・どうづきそば」の発表会が2月13日茅野市の産業振興プラザで行われました。
信州大学農学部と茅野商工会議所・茅野市の機械メーカー有限会社エム・シー・エスが共同開発した「千本杵搗機」は、ソバの実を粉にせず、そのままそばの生地を作る独特の製造機。平成20年から開発に着手し、現在3号機まで改良が進んでいます。茅野商工会議所は、この千本杵搗機で作ったそばを「水萌千本杵搗製法・どうづきそば」と名付けてブランド化を行なっています。中小企業庁の補助(地域活力新事業∞全国展開プロジェクト)を活用した取り組みです。
開発をリードした信州大学農学部の井上直人教授は、「日本中のどこを探してもここでしか食べられないそばです」と力を込めます。それもそのはず、「どうづきそば」は、まず、ソバの実を甘皮が付いている状態で低温の水に数日間さらした後、千本杵搗機で潰し・捏ねてそば生地にし、手切りにした独特のものです。
一般に、そば生地は、製粉したそば粉に水を加えて捏ねて作ります。「しかしこの方法では農家さんがソバを作り、それを製粉会社でそば粉にするまでに時間が掛かってしまいます。また、製粉する際に出る摩擦熱でそばの風味も飛んでしまいます」と井上教授。
それに対して、どうづきそばの作り方は、時間をかけず製粉せずに搗くので、そばの香りが飛んでしまうことがないといいます。
また、ソバの実を低温の水(約10℃)に数日間さらすことで、種子の体内酵素が活性化し、血流改善・コレステロール抑制などの作用の研究が進むギャバ(GABA)=ガンマアミノ酪酸の数値が、通常のそばの10倍程に上昇することが井上教授の研究によって分かっています。「水にさらすという行程によって、ギャバが増加し、風味が増すと同時にポリフェノールなどの雑味が抜けて美味しくなるんです」と話します。
当日試食した人たちも、「そばの香りと甘みに驚かされた」「そば本来の味を実感出来る」などと感想を述べていました。
この「どうづきそば」は信濃路遊膳そばのさと(茅野市塚原)で3月から本格販売が始まります。2月中は、1日20食限定で販売しています。同店の吉田道也代表は「水加減や搗く回数の調整に試行錯誤しましたが、かなりの自信作になりました」と胸を張ります。
茅野商工会議所の山本敦課長は「長野県の観光客の6割は美味しい蕎麦を食べたい、または食べにきていると、答えています。このどうづきそばの美味しさをPRし、茅野市へ訪れる人が増えて欲しい」と話していました。
「信州=そば」というイメージは全国に広がっています。信州各地で、そばのブランド化が行なわれており、他地域との差別化が課題になっています。その中で、新たなブランドとして、製法から全く違う「どうづきそば」の展開が楽しみです。現在一店舗しかない提供店舗を、今後どれだけ増やせるか―信大農学部と茅野市の人々の共同は一歩、前に進もうとしています。
![]() ソバの実を潰した"どうづきそば"は風味が抜群です |
![]() 3本の円筒状の杵でソバの実を捏ねる千本杵搗機 |
![]() 「ここでしか食べられないそばが出来た」と自信をみせる農学部 井上直人教授 |
![]() 茅野商工会議所の山本敦課長 |
![]() そばの実 |
![]() 茹でる前のどうづきそば |
![]() 「水加減と捏ね加減が難しかったですが、美味しいそばが出来ました」と信濃路遊膳そばのさと 吉田道也代表 |
![]() 信濃路遊膳そばのさと(茅野市塚原) |
