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医農連携市民講座 ‐長寿で健康であるための食生活と運動の役割‐

13年02月05日

会場の様子

 健康を維持するための食生活と運動の役割に焦点を当て、長寿の秘訣を考える信州大学医農連携市民講座が平成25年1月28日、ホテルモンターニュ松本にて開催されました。 信州大学医学部・農学部が主催し、大学と市民が一緒になって考える事を目指したものです。現在、日本の高齢化は急速に進んでおり、医療費の増加や福祉施設への入居待ちなど社会全体の問題となっています。こうした中でも、長野県は、65歳以上の就業者が最も多い県であり、高齢者の医療費が最も少ない県である等、長寿県と言われています。この長野県の食生活や健康に生きる方法について各専門家による講演が行なわれました。
   共催者である(財)長野県テクノ財団の北澤修治コーディネータが「今回の講座が参加者の新たな発見に繋がっていくことを期待したい」と話し、講演会が始まりました。続いて、中村宗一郎副学長・農学部長が「大学の知識や技術を市民に還元し、地域への貢献を深め、医農連携から地域の活性化を目指したい」と開会の挨拶を行ないました。
 講座の第1部では農学部の中村浩蔵准教授が座長を務め、食の観点から2人の講演が行なわれました。まず信州大学農学部大学院農学研究科の大谷元(はじめ)教授が「生きる上での食物の役割」と題して講演し、「サプリメントやトクホ(特定保健用食品)がベストではありません。加工品に依存するのではなく、穀物や野菜など様々な食資源に含まれる栄養素を知り、バランスの良い食事をすることが健康に生きる上で重要です」と締めくくりました。
 続いて、松本大学大学院健康科学研究科の廣田直子教授の講演「長野県人の食生活から考察する~伝統的な日本食と長寿~」では、「食事と疾病との関わりは、単一の栄養素や特定の食品のみでは語れません。長野県が育んできた野菜を食べる習慣やおやきやぶっかけに代表される粉ものなど、様々な食文化から長寿が育まれて来ているのです」と話しました。

 第2部では大学院医学系研究科の谷口俊一郎教授を座長として、医学や運動科学の観点から発表が行なわれ、信州大学医学部の野見山哲生教授が「長野県の栄養摂取の現状と疾病について」と題して講演を行ないました。「脳卒中や糖尿病を始めとした生活習慣病は、栄養摂取により一定の予防効果があります。野菜類の摂取や食塩摂取の抑制などを心がけることが重要です。また、がんは早期に発見することが重要で、そのための検診受診がのぞまれます。」と注意を呼びかけました。
 最後に、信州大学大学院医学系研究科の能勢博教授と同院生の森田淳美さんが発表を行ないました。
 「不活動症候群というのは、コミュニティの中で伝染していきます。これは何故かというと、コミュニティの中の人の行動に他の人も引っ張られ、結果的に同じ様な病気になってしまうことが多いということです」と能勢教授は話しました。そして、それを予防するためには、運動を日常的に取り入れる事が重要だと指摘しました。
 しかし、日常的に運動をするのは容易ではありません。そこで、運動を楽にする食品成分についての研究結果を院生の森田淳美さんが「運動を驚くほど楽にする食品成分が存在する!?~5-アミノレブリン酸の場合~」と題して発表を行ないました。発表では5ーアミノレブリン酸(ALA)を摂取した人にインターバル速歩という運動を行なってもらった場合と摂取せずに運動を行なった場合の比較を行ないました。「高齢者がALAを摂取する事で、運動時の仕事効率を上昇させ、また、速歩運動トレーニングの量を亢進させることが分かりました。生活習慣病の改善効果を加速することが期待できる」と森田さんは報告しました。

 講座には、120名余りの参加者が集まり、健康に関する意識の高さを感じる事が出来ました。そして、参加者からも「信州大学が今回のような講演会等で市民へフィードバックしてくれることで新たな知識を発見出来、頼もしい」と話していました。同講座では、質疑応答も活発に行なわれ、大学と市民が一体となり、知識を深める講座になりました。


(財)長野県テクノ財団 北澤修治コーディネータ

(財)長野県テクノ財団 
北澤修治コーディネータ

中村宗一郎 副学長・農学部長

信州大学副学長・農学部長
中村宗一郎

農学部の中村浩蔵准教授

信州大学農学部 中村浩蔵准教授

信州大学農学部の大谷元教授

信州大学農学部大学院農学研究科
大谷元教授

松本大学の廣田直子教授

松本大学大学院健康科学研究科
廣田直子教授

大学院医学系研究科の谷口俊一郎教授

信州大学大学院医学系研究科
谷口俊一郎教授

信州大学医学部の野見山哲生教授

信州大学医学部 野見山哲生教授

信州大学大学院医学系研究科の能勢博教授

信州大学大学院医学系研究科
能勢博教授

院生の森田淳美さん

信州大学大学院医学系研究科
森田淳美さん

<<信州大学医農連携市民講座スケジュール>>
(1)開会
(2)挨拶 (財)長野県テクノ財団
(3)話題提供
オープニング 信州大学副学長・農学部長 中村宗一郎 

第1部 
(1)「生きる上での食物の役割」 信州大学大学院農学研究科 大谷 元(はじめ) 教授
(2)「長野県人の食生活から考察する~伝統的な日本食と長寿~」 松本大学大学院健康科学研究科 廣田直子 教授


第2部
(1)「長野県民の栄養摂取の現状と疾病について」 信州大学医学部 野見山哲生教授
(2)「運動を驚くほど楽にする食品成分が存在する!?~5-アミノレブリン酸の場合~」 信州大学大学院医学系研究科 能勢 博 教授
同院生 森田淳美氏