『先端加速器科学技術推進シンポジウム2013in信州』を開催
13年02月08日
ビッグバンの探求から最先端医療まで幅広く応用される先端加速器およびその研究をより一般に向け発信するため、平成25年1月26日(土)、キッセイ文化ホール(松本市)でシンポジウムを開催しました。『先端加速器の世界 いのちを守る、宇宙を創る』と題し、先進的な研究を行う3名の研究者が講演、約140名が熱心に耳を傾けました。
山沢学長あいさつの後、講演を行ったのは信州大学理学部物理学科竹下徹教授、放射線医学総合研究所フェロー辻井博彦氏、高エネルギー加速器研究機構機構長鈴木厚人氏。
加速器とは、目に見えない粒子を光の速度近くまで加速して高いエネルギーを作り出す装置。先端加速器とは、スイスのジュネーブに本部を置く「欧州原子核研究機構(CERN)」の世界最大加速器「大型ハドロン衝突型加速器(Large Hadron Collider通称:LHC)」に代表されるように、その性能を発展させ、より高いエネルギーを生み出すことのできる加速器のことを指します。
竹下教授は、『先端加速器の世界』と題し、加速器研究の概要と歴史について説明。がん治療などの医療分野から半導体製造といった工業分野まで、身近なところで加速器が応用されている例を提示した後、「LHC」における物理学研究の最新事例を紹介しました。日本が主に参加し、自身もメンバーとして活動した「ATLAS実験」で見つかったヒッグス粒子と思われる新粒子について言及し、「宇宙の始まりの探索から医療・工業の分野まで、実は身近な所にも加速器は存在します」と一般の聴講者にも加速器が身近に感じられるよう呼びかけました。
辻井氏は、『ここが違う 重粒子線がん治療』と題し講演を行いました。重粒子線治療が、かん細胞にピンポイントでダメージを与え、正常な細胞への影響を最小限に抑えることが出来る「より強くより優しい治療方法」であるとして、世界に先駆けた治療法であることを説明。「日本は粒子線治療の大国であり最先端を走っている。この治療法が日本から世界へ広まって欲しい」と期待を込めました。
鈴木氏は、『ビッグバンを再現する究極の加速器 国際リニアコライダー』と題し講演。最先端の素粒子研究から日本が建設候補地となっている世界史上最大最高の高エネルギー加速器「国際リニアコライダー(通称:ILC)」計画について言及しました。「加速器は日本が主役ともいうべき産業。物質の探求から宇宙の始まり、ダークマターの正体をILCが答えてくれると期待しています」と、先端加速器研究が拓く未来に向け日本が果たすべき役割について述べ、講演を締めくくりました。
講演後、3名がそろって壇上に上がり聴講者との質疑応答を行い、盛況のうちにシンポジウムは閉幕となりました。
![]() 一般の方も多く参加。約140名が聴講。 |
![]() 挨拶する信州大学山沢清人学長 |
![]() 講演を行う信州大学理学部 |
![]() 放射線医学総合研究所フェロー辻井博彦氏 |
![]() 高エネルギー加速器研究機構機構長鈴木厚人氏 |
![]() 質疑応答に答える3名の講演者 |
