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医学部循環器内科学講座が、ヒトES細胞を用いた心臓病治療の新たな知見を発表

12年08月07日

左より 医学部循環器内科学講座 柴 助教、伊澤 講師

左より 医学部循環器内科学講座 柴 助教、伊澤 講師

医学部循環器内科学講座の柴祐司助教と伊澤淳講師は8月6日に記者会見を行い、ヒトES細胞を用いた心臓病治療の新たな知見について発表しました。また、この件については日本時間同日に英のNature電子版に掲載されました。

柴助教らの研究グループが行った実験では、ヒトES細胞由来の心筋細胞を心筋梗塞を発症したモルモットの心臓に移植したところ、4週間後の観察で心筋梗塞部位へ生着していることが確認され、さらに心臓の収縮率、不整脈の発生頻度ともに改善していることが確認されました。

この実験は、元は心筋梗塞により損壊、壊死した心筋の再生を目的として始められましたが、致死性の不整脈の抑制が確認されたということで、画期的な発見であると言えます。細胞移植後の心室性不整脈の発生頻度については、心筋梗塞を発症したモルモットのうち、無治療の場合50%、心筋細胞以外の細胞を移植した場合61.5%だったのに対し、ヒトES細胞由来の心筋細胞を移植した場合では6.7%と、大きな差が見られました。

心筋梗塞を始めとする虚血性心疾患の患者は日本で約80万人おり、そのうち年間約4万人が死亡しています。柴助教は会見で、「この研究が進めば、バイパス手術やバルーン治療(血管の拡張)等では難しかった心筋梗塞治療について、新たな治療法の確立が期待できる。今後は、より長期による観察、大動物(ブタ・サル)を用いた実験を行い、さらに(現在4週間後の定着率が2%弱程度しかない)細胞移植方法の改善を図る。同時に、倫理的問題が課題となっているES細胞ではなく、iPS細胞への応用を検討したい」と話しました。