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2011年12月5日 医学系研究科 林 琢磨 准教授らの研究グループが「子宮平滑筋肉腫におけるLMP2の癌抑制因子としての生物学的応答性」について報告

12年01月25日

  近年その罹患率の増加傾向が認められる子宮平滑筋肉腫は、リスクファクターが不明で、既存の治療法に抵抗性を示す予後不良の難治性腫瘍である。つまり、再発・転移を繰り返す子宮平滑筋肉腫に対する有効な治療法は外科的摘出手法以外に確立されておらず、既存の化学療法では延命効果が殆ど期待されない。そこで、新規分子標的治療法の確立のためにも、子宮平滑筋肉腫の生物学的特性を理解することが重要である。
  信州大学大学院の林 琢磨 准教授らは、LMP2欠損マウスのメスで子宮平滑筋肉腫が自然発症し、生後14ヵ月までの罹患率は、全LMP2欠損マウスのメスの約40%であることを報告した(利根川 進 教授(MIT)の研究協力)。そこで、林 琢磨 准教授と相澤病院産婦人科の堀内 晶子 医長らの研究グループは、提携先医療機関(注1)と「子宮平滑筋肉腫の腫瘍形成とLMP2の発現との関連性」について検討している。これまでの研究成果より、LMP2は、子宮平滑筋肉腫細胞において細胞増殖を抑制し、腫瘍形成能を低下させることが認められた。LMP2は、蛋白質分解酵素複合体(プロテアソーム)の構成因子の1つであり、LMP2欠損により、組織、基質依存的にプロテアソームの活性が増減する。林らの研究成果より、子宮平滑筋肉腫でのLMP2の生物学的応答性は、プロテアソームの活性に依存せず、おそらくLMP2と他の細胞性因子との複合体による誘導されると考えられる。林らの研究グループは、組織特異的に作用するLMP2の癌抑制因子としての生物学的応答性についてScientific Reports(Nature Publishing Group)に報告した。子宮平滑筋肉腫におけるLMP2の生物学的応答性についてのさらなる研究成果は、同悪性腫瘍に対する分子標的治療と新規診断法の開発へと還元されると思われる。


(注1)(独)科学技術振興機構 産学連携事業(事業担当者 林琢磨、堀内晶子、佐野健司、小西郁生:信州大学、京都大学、東京大学、東北大学、大阪市立大学、国立がんセンター、兵庫県立がんセンター、SIGMA-Aldrich)

 

論文内容に関しては、下記を参照
http://www.natureasia.com/japan/srep/highlights/
http://www.natureasia.com/japan/srep/highlights/srep00180.php