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「地下水制御型高効率ヒートポンプ空調システム」実証実験プラント竣工、 記者会見・設備見学会・記念特別講演会を開催

11年11月21日

(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)・<br>信州大学・清水建設(株)合同での記者会見

(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)・
信州大学・清水建設(株)合同での記者会見

  信州大学工学部キャンパスに、「地下水制御型高効率ヒートポンプ空調システム」の実証実験プラントが完成。11月15日(火)、信州科学技術総合振興センター(SASTec)で記者会見・設備見学会が行われ、その後記念特別講演会が開催されました。本システムは、(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究開発委託事業の一環として、清水建設(株)と信大工学部(藤縄克之教授)が2010年から取り組んでいるもので、今後は工学部の2教室で冬季実証運転(暖房運転)、夏季実証運転(冷房運転)を実施し、2013年2月まで従来タイプのビルマルチ式空調システムと比較しながら性能を実証していくことになります。

  本システムは、年間を通じて温度がほぼ一定(約14℃)の地下水を熱源水として利用し、冬は暖房、夏は冷房に利用します。これにより、ヒートポンプの省エネ効果を最大限に高めるものと期待されています。具体的には暖房・冷房に供する二層の帯水層を使い、冬は暖房用の帯水層から取水し、水温が下がった水を冷房用の帯水層に、夏は冷房用の帯水層から取水して、水温が上がった地下水を暖房用の帯水層に戻します。また半年後に理想温度の地下水を利用できるよう、地下水の流量を制御するのも大きな特徴で、取水による地盤沈下の心配もほとんどないなど、環境への負荷が少ないよう配慮されています。
  また、本委託事業で新たに開発した水冷式ヒートポンプは、地下水温度が冷房用の水温より低い期間は、地下水を直接空調の熱源として使用する「フリークーリング」を実現でき、水温によって最も効率的な運転モードを自動的に選択して省エネを図ります。

  記者会見では、最初に信大山沢清人学長が、信州大学のエコキャンパスづくりの展開を紹介しながら、「地下水や地中熱の利用が注目される中、地下水が豊富な長野県からこの実証プラントの成果を伝えていきたい」と挨拶。続いてNEDO省エネルギー部長の佐藤嘉晃氏が、本システムの省エネ効果への期待を述べられ、清水建設(株)技術研究所百田博宣氏によるプラントの概要説明の後、質疑応答が行われました。マスコミ各社からは、地下水利用や本システムについて活発な質問が出され、社会的関心の高さがうかがわれました。
  続いて、取水井・注水井やヒートポンプ、空調に本システムを導入した教室、モニタリングシステムなどを見学しました。

  午後2時からの記念講演会には約100名が参加し信大三浦義正理事・副学長が「地下熱利用をアピールするいい機会にしたい」と挨拶。NEDOの佐藤部長が「NEDO次世代型ヒートポンプシステム事業について」講演したのに続いて、藤縄教授が「信州大学における地下熱利用ヒートポンプシステムについて」と題して事業概要を解説し、「日本は資源小国と言われるが、安曇野市だけでも地下水は80億tあり、この地下水を活用しないのは非常にもったいない.既存の井戸でも利用でき、マーケットは広がる」と、このプラントの意義を強調しました。
  特別講演では、NPO法人地中熱利用促進協会の笹田政克理事長が「東日本大震災と地中熱利用技術の普及について」、北海道大学大学院工学研究科の長野克則教授が「地下熱利用技術の研究最前線について」、長野県環境部温暖化対策課の田中信一郎企画幹が「長野県における自然エネルギー利用の動向について」、それぞれ講演し、最後に信大岡本正行工学部長が、信大全体で取り組んでいるグリーンイノベーションと、地下熱のエネルギー源としての質の高さを訴え、講演会を終えました。

完成したプラントの見学会

完成したプラントの見学会

システムの稼働状況を表示するモニターを見学

システムの稼働状況を表示するモニターを見学

取水井・注水井について説明する藤縄教授

取水井・注水井について説明する藤縄教授