ホーム > トピックス一覧 >

トピックス詳細

トピックス

「英国王立協会紀要」に論文掲載

08年07月17日

アリ植物オオバギ属と共生アリ、カイガラムシも見える

アリ植物オオバギ属と共生アリ、カイガラムシも見える

  総合工学系研究科の博士課程3年上田昇平(うえだ・しょうへい)さんと理学部生物科学科の市野隆雄(いちの・たかお)教授らの共同研究の成果が英国の学術専門誌「Proceedings of the Royal Society B」(英国王立協会紀要)のオンライン版7月8日に掲載されました。

 

 東南アジア熱帯雨林において,緊密な相互依存関係を結ぶ三者の生物(植物、その幹の中空部に営巣するアリ、およびアリ巣内に共生してアリに甘露を与えるカイガラムシ)が共生関係を結ぶようになった起源年代を推定しました。世界の熱帯地域には、体内にアリを共生させ、外敵から防衛してもらっている植物が500種ほど分布しており、アリ植物と呼ばれています。そのほとんどはカイガラムシを第三の共生者として幹内に住まわせているため、アリ-植物共生の進化的起源にはカイガラムシが重要な役割を果たしたとこれまで考えられてきました。

 

 同じ研究グループの先行研究では、東南アジアのアリ植物オオバギ属と、その共生アリ(シリアゲアリ属)の起源年代はともに1600-2000万年前となることがわかっていました。そこで今回、共生カイガラムシのミトコンドリアDNAを使って分子系統樹を描き、起源年代を推定したところ、その起源はアリの約半分の730-880万年前となり、カイガラムシはこの共生系に後から参加したことが明らかになりました。本研究の成果は、三者以上からなる緊密な共生系の進化の歴史が必ずしも一致せず、逐次的に参入が起こる場合があることを明らかにしたもので、生物間相互作用の起源や進化の研究に新たな洞察を与える知見といえます。

論文
An ancient tripartite symbiosis of plants, ants and scale insects
Doi:10.1098/rspb.2008.0573