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「素粒子メダル奨励賞」を受賞

08年03月31日

 本学理学部物理科学科 奥山和美助教が第2回「素粒子メダル奨励賞」を受賞しました。

 授賞式は、2008年3月25日、日本物理学会第63回年次大会(近畿大学)の素粒子論懇談会において行われました。
 素粒子メダル奨励賞は、素粒子論を志す若手研究者の優れた研究を評価し、奨励することを目的として、素粒子論研究者の集まりである素粒子論グループが制定した賞です。
 今回の受賞論文・受賞者は3件6名で、そのうちの1件が奥山氏です。

受賞論文及び選考理由は以下の通り。

"N=4 SYM on R × S3 and PP-Wave"
Journal of High Energy Physics 0211 (2002) 043.
奥山和美

 奥山氏の論文は、Berenstein-Maldacena-Nastase の論文が現れ、pp-wave極限では、AdS/CFT 対応が弦理論レベルで検証できるのではないかという気運が高まった2002年に書かれました。pp-wave背景上の弦理論と super Yang-Mills (SYM) 理論の対応関係をより明確にしようとする初期の試みのひとつと位置づけられるものです。
 本論文では、global AdS 上の typeIIB string と双対と考えられる R×S3上の N=4 SYM理論を、動径量子化し、superconformal generator を構成した上で、S3 の Kaluza-Klein 縮約をとることで、pp-wave 極限での双対理論と目される行列量子力学に対してどのように対称性が移行するかを明らかにしました。
 特筆すべき非自明な点は、R×S3 上では通常の Killing spinor の代わりに conformal Killing spinor が存在し、そのため曲がった背景上でありながら、N=4 の超対称性が実現されることです。氏はこの点に着目し、Nicolai-Sezgin-Tanii(1988) の方法を一般化することで、R×S3上の U(N) SYM の superconformal generator の構成に成功しました。
 その後、この分野は大きく発展しましたが、本論文で構成された行列模型は、1/2 BPS セクターの fermion による記述への応用や pp-wave行列模型との関連など、その進展に役割を果たしました。

(理学部)

奥山和美助教

奥山和美助教