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大学院総合工学系研究科 理研連携研究室の研究成果がACS Editor's Choiceに選出

16年12月05日

大学院総合工学系研究科 理研連携研究室(金山直樹 准教授、前田瑞夫 教授)と理化学研究所(理研)、東京工業大学の共同研究グループの成果がアメリカ化学会(American Chemical Society: ACS)のLangmuir誌の電子速報版に掲載され、ACSが出版する全ジャーナルの中から編集部により毎日1報が選ばれるACS Editor’s Choiceに2016年11月29日付で選出されました。(ACSホームページ:http://pubs.acs.org/

 

論文タイトル:Terminal-Specific Interaction between Double-Stranded DNA Layers: Colloidal Dispersion Behavior and Surface Force

筆者:Naoki Kanayama*, Taito Sekine, Kazunari Ozasa, Satomi Kishi, Takashi Nyu, Tomohiro Hayashi*, and Mizuo Maeda

Langmuir ASAP (DOI: 10.1021/acs.langmuir.6b03470)

http://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acs.langmuir.6b03470

 

ACS Editor’s Choiceに選出された論文はオープンアクセス化され、無料で閲覧が可能になります。

 

[解説]

生物の遺伝情報媒体であるDNAは、マイナスの電荷を帯びた高分子化合物であり、相補的な塩基配列をもった一本鎖DNA同士が会合して二重らせん構造を形成します(DNA二重鎖)。これまでに、金やポリマーのナノ粒子表面をDNA二重鎖でブラシ状に覆った“DNAナノ粒子”が、最表層の塩基配列が相補的な場合(G-CあるいはA-Tペア)と非相補的な場合とで水溶液中で異なる分散挙動を示すことが見出され(例えば、J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 1643.)、この現象に基づく遺伝子診断法やバイオ分析法が考案されてきています。


一方で、なぜDNA二重鎖のごく僅かな構造の違いによって、DNAナノ粒子の分散挙動というマクロな物性が変化するのか?という根本的なメカニズムは永らく不明でした。今回、共同研究グループは、液中コロイドプローブ原子間力顕微鏡法を用いて、2つのDNAブラシ層の間に生じる「力」を直接計測することを試みました。その結果、DNAブラシ層の間では、最表層が相補的な塩基配列の場合には互いを引き付けあう力(引力)が生じ、非相補的な場合には互いを遠ざける力(斥力)が生じることを明らかにしました。


本成果は、DNAナノ粒子の分散挙動メカニズムを理解するだけでなく、DNAナノ粒子を用いる新しい診断・分析技術の開発にも繋がることが期待されます。