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平成24年 年頭のご挨拶

教職員向けお知らせ

平成24年 年頭のご挨拶

12年01月06日

                                                平成24年 年頭のご挨拶

                                                                                                学長  山沢 清人


新年明けましておめでとうございます。皆様におかれましては、善いお年を迎えられたことと存じます。本年も宜しくお願い申し上げます。

  昨年は、大きな災害を経験した大変厳しい一年となりました。3月11日の東日本大震災、それによる千年に一度と言われる大津波そして福島第一原子力発電所の炉心溶融に伴う放射能漏れと広域汚染、3月12日未明に起きた長野県北部地震、さらに6月30日には松本での直下型地震と、被災地はもちろんのこと、日本中が不安な一年を過ごしました。
  被災地の復旧・復興は多くの人々の努力によって着実に進んでいます。しかし、地震予測とその防災技術、原発の安全技術など、今回の震災をきっかけにして日 本社会の安全とエネルギーの基盤技術に不安を感じる人が増え、先端科学技術ひいてはその担い手である大学への不信に?がりかねない状況が散見されました。 それと同時に、安全・安心な新しい社会システムの構築に資する人材は必須であり、若い有能な人材の育成を大学に託す機運も高まっています。
  このように、震災を機に、人類知の継承(教育)と新しい知の創造(研究)という大学の本来の社会的責務を果すことが強く求められています。特に、国立大学にとってはこの要請に応えることが最重要なことであります。

  信州大学では、昨年10月に策定した信州「知の森」づくり(PLAN “the FIRST” 2011-2013)を通して、高度な専門的知識と豊かな人間性を持つ心豊かな人材を育成し、人類社会の持続的発展を目指し未来を創造する先端的な研究及び安全かつ安心な社会の構築に資する学術研究を推進することを決めています。信州大学は、国民の負託に応えるべく、PLAN “the FIRST”の遂行に、本年はさらに拍車をかけたいと存じます。皆様のご協力のほどを宜しくお願い申し上げます。

  さて、信州大学が社会的責務を果すための平成24年度事業を支える原資について簡単にご説明します。まず、文部科学省の大学関係予算です。大学改革の推進をテーマとし、国立大学関係には1兆1,604億円(昨年度比:19億円増)、私立大学関係には3,512億円(146億円増)、大学教育改革支援の充実として575億円(79億円増)と昨年度と比して1.6%増となっています。さらに、科研費は4.5%増の2,307億円、国立大学施設の整備として478億円増の915億円と大幅な拡充となっています。
  特に、国立大学関係1兆1,604億円の内容を見ますと、国立大学法人運営費交付金と教育研究強化基盤整備費は前者が前年度比0.9%の微減の1兆1,423億円と後者が34.9%の大幅減の43億円と減額されたものの、新規に国立大学改革強化推進事業138億円が創設されています。「大学改革」に関連する予算は総額713億円(30%増の217億円)となります。
  この予算は、大学改革を実施することによって大学の機能強化を図り、国民の期待に応える高度な人材の育成及び安全・安心な科学技術の創成に努めることを大学に求めていると言えます。

  新規創設の国 立大学改革強化推進事業としては、第一には教育の質保証と個性・特色の明確化を目的とした教員審査を伴う学部、研究科の改組や双方向の留学拡大のための抜 本的制度改革などがあります。第二には大学間連携の推進を目的として、互いの強みを活かした学部・研究科の共同設置、大学の枠を超えた大学間連携(企業、 公的研究機関などを含む)による教育研究の活性化などがあります。そして、第三には効率的な大学運営のための事務処理共同化などによる大学運営の高度化が あります。
  また、国公私立大学教育改革支援の充実として、5つの事業が挙げられています。
  まず、(1)博士課程教育リーディングプログラム116億円(77億円増)です。これは、新成長戦略の「リーディング大学院構想」を実現するため、成長分野など、世界を牽引するリーダーを養成する前期・後期一貫の優れた博士課程プログラムの構築を支援するものです。
  次に、(2)卓越した大学院拠点形成支援補助金80億円(新規)です。卓越した実績を出した大学院に対し、研究に専念する環境整備に必要な拠点づくりの経費を支援し、世界で活躍できる研究者を輩出するシステムを構築するための補助金です。
  (3)グローバル人材育成推進事業50億円(新規)は、学生のグローバル化を推進する全学的な取組を支援するものです。国際機関、海外企業などにおけるインターンシップ・プログラムの開発、海外協定大学での授業実施などの実践型研修などが考えられます。
  (4)大学の世界展開力強化事業27億円(5億円増)のうち、ASEAN諸国等との大学間交流形成支援は新規プログラムであり、7億円の予算が計上されています。この新規プログラムはASEAN諸国等の大学との高等教育制度の相違を越えた質保証の共通フレームワークの形成や教育内容の可視化などアジアにおける先導的なモデルとなる大学間交流プログラムの開発・実施を支援するものです。
  (5)大学間連携共同教育推進事業30億円(新規)は、国公私立の設置形態を越え、地域や分野に応じて大学が相互に連携し、社会の要請に応える共同の教育・質保証システムを構築することにより、強みを活かした機能別分化と教育の質保証を推進することを支援するものです。
以上が平成24年度の文科省の大学関係予算の概要です。

  では、暮れの24日に信州大学に伝達されました「平成24年度運営費交付金予算額」の概略を簡単に説明します。運営費交付金総額は前年度比1.8%減の144億294万円です。
  このうち、一般運営費交付金は前年度比0.3%減の118億8,169万円です。この減額は、大学改革推進係数△1.3%の減額と授業料免除枠の拡大増によります。特別経費は11億2,450万円で、前年度比9,300万円の減となります。この減額は、特別経費から一般経費への組替などによるものです。退職手当等の特殊要因経費は13億9,675万円です。
  このように、一般運営費交付金の大学改革促進係数(いわゆる効率化係数)は昨年度と同様の1.3%となりました。文科省が言うように、平成16年度の国立大学法人化以降の基盤的経費の削減に歯止めがかかったことになります。しかし、人件費の逓減は続きます。大学の独自性を発揮できる事業経費の原資は、この交付金に求めざるを得ないところですが、7割近くが固定費で占められている現在の状況では、独自事業も先細りです。
  もちろん、震災と言う国難の折の予算編成ですので、贅沢をいうことは許されません。
  大学の生活費である一般運営交付金が前年度比0.3%減で済んだことは文科省をはじめとする関係者各位の努力の成果と言えるでしょう。中期財政フレームに基づく予算編成は今後も継続すると考えられます。今後の高等教育関連予算が平成24年度並みとなる保証はまったくありません。国の歳出削減を実行し、公的債務残高を減らすなど、財政再建に向けた抜本的な取組が予想されます。平成24年度以降、人件費を含む大学運営の基盤的経費の逓減は避けて通れないものと考えなければならないでしょう。

  今後、「人とお金の逓減・縮減」を受入れて、遣り繰りだけで耐えていて良いのでしょうか。それでは、信州大学の未来はなくなります。知の森は枯れてしまいます。
  平成24年度の文科省予算では、大学改革関連プロジェクトにリソース(713億円)が投入されています。信州大学として、信州知の森を大きく豊かに育てるために、是非各種の大学改革プロジェクトに積極的に応募しようではありませんか。平成24年を「改革の年」とし、信大全構成員の叡智を結集して、人類知の継承と新しい知の創造に邁進する信州大学を造り上げていきましょう。
  教職員の皆様一人ひとりが信州大学の将来を考え、行動することによって、必ずや個性輝く大学としてさらに大きく発展できるものと信じています。


平成24年が充実したすばらしい年でありますよう祈念し、年頭のご挨拶といたします。