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年頭のご挨拶

教職員向けお知らせ

年頭のご挨拶

11年01月04日

                                                            年頭のご挨拶


                                                                                                           学長  山沢清人

  新年明けましておめでとうございます。教職員の皆様におかれましては、善いお年を迎えられたことと存じます。本年も宜しくお願い申し上げます。


  昨年は、政治的な混迷に加えて、財政的な逼迫感も強まり、国家百年の計で進めるべき高等教育及び科学技術事業の必要性・重要性が見失われかねないことが度々ありました。なかでも、政策コンテストという予算づくりは、本来国家の基本事業の策定には、相応しいとは決して言えないものでした。しかし、パブリックコメントで文科省要望枠事業に寄せられた多くの方々のご支持・ご支援のお陰で、要望の9割を超える予算額(総額5兆5,428億円;対前年度比0.9%減)の確保となりました。

 

  高等教育関係の予算を見ますと、国立大学法人運営費交付金(補正予算分を含む)は微減(前年度比0.5%減)、科学研究費補助金は32%の大幅な増加となっています。教育研究水準の向上に向けた改革支援では、世界的なリーディング大学院プログラムが新規(39億円の予算)に設定されましたが、G-COEプログラムの予算は若干の減少となりそうです。教育の質の向上関連の事業はほぼ半減の予算となり、事業維持のための工夫を迫られることになります。


  また、地域イノベーション創出については、関係府省を総動員するシステムを構築し、文科省として大学の地域貢献機能の強化のための地域イノベーション戦略支援プログラム(総額110億6千万円のソフト・ヒューマンに対する支援)を新規に設けています。


  さて、暮れの24日に信州大学に伝達されました「平成23年度運営費交付金予定額」の概略をご説明します。運営費交付金総額(補正予算前年分3憶7千万円を除く)は前年度比0.8%減の146億6,300万円です。
  このうち、一般運営費交付金は前年度比0.9%減の119億1580万円です。この減額は、大学改革推進係数△1.3%の減額と授業料免除枠の拡大によるものです。特別経費は、前年度比3億3400万円増の12億1800万円であり、医学部定員増に伴う教育用設備充実及び地域医療拠点体制充実のための経費が84%を占めています。退職手当等の特殊要因経費は15億3千万円です。


  このように説明してまいりますと、「平成16年度の国立大学法人化以降の基盤的経費の削減に歯止めがかかった」との文科省見解には部分的に賛同しかねる感があります。というのも、この一般運営費交付金の大学改革促進係数(いわゆる効率化係数)は昨年の1.8%から1.3%と低減されましたが、人件費の逓減は続きます。そのうえ、学部・大学院の授業料免除枠の拡大に伴う予算の確保が必要となります。大学の独自性を発揮できる事業経費は、この交付金に求めざるを得ないところですが、7割近くが固定費で占められている現在の状況では、独自事業も先細りです。


  大学の基盤的経費(基本的な生活費)である一般運営費交付金を除いた教育予算については、文科省見解の通り、その削減に歯止めがかかったと言うこともできます。しかし、昨年6月に閣議決定した当面の3年間の中期財政フレームに基づく予算編成は今後も継続すると考えられます。平成24年度以降の高等教育関連予算が23年度並みとなる保証はまったくありません。どちらかというと、国の歳出削減を実行し、公的債務残高を減らすなど、財政再建に向けた抜本的な取り組みが予想されます。平成24年度以降、人件費を含む大学運営の基盤的経費の逓減は避けて通れないものと考えなければならないでしょう。


   では、この「人とお金の逓減・縮減」を受入れて、耐えているだけで良いのでしょうか。もちろん、ただ受入れるだけではじり貧です。信州大学の未来はなくなります。現下の国立大学財政危機を改革の大きなチャンスと捉え、信州大学のコア・コンピタンスを明確にし、スモールサイジングも視野に入れたスクラップ・アンド・ビルドによる組織・運営の改革をスタートさせる必要があります。
平成23年は、この改革をスタートさせる年と位置付けたいと考えています。


   今回の政策コンテストにおける文科省事業計画に対する多数の賛同と支援は、高等教育が国家百年の計で進めるべき事業であり、元気な日本復活のためには教育と科学技術が重要であるとの期待の表れであります。私ども大学人は、この国民の負託に応えて、学問の府としての大学の存在を未来にわたって確固たるものとしなければなりません。特に、信州大学は、総合大学として「知の継承(教育:人材育成)と新しい知の創造(研究)」に注力する社会的な使命を負っています。信州の「知の森」をさらに豊かに大きく育てたいと考えています。


  教職員の皆様一人ひとりが信州大学の将来を考え、行動することによって、必ずや個性輝く大学としてさらに大きく発展できるものと信じています。一層のご尽力をお願い申し上げます。
  2011年が、充実したすばらしい年でありますよう祈念し、年頭のご挨拶といたします。