ホーム > 教職員向けお知らせ >

年頭のご挨拶

教職員向けお知らせ

年頭のご挨拶

10年01月04日

年頭のご挨拶


学長  山沢清人

 

  2010年の年頭に当たり、教職員の皆様にご挨拶を申し上げます。新年明けましておめでとうございます。皆様におかれましては、善いお年を迎えられたことと存じます。本年も宜しくお願い申し上げます。
   昨年は、1月のオバマ米大統領誕生、9月の鳩山由紀夫内閣誕生など、国内外の政治に大きな変化のあった年でした。信州大学にとって大きな出来事がありました。本学が創立60周年を迎えたことでございます。6月の記念式典は、卒業生をはじめ多くの関係者がご参加くださり、学生サークルが音楽や踊りで盛り上げてくれるなど、オール信大で手作りのお祝いとすることができました。60周年記念事業の一つとして、山岳部OBの学士山岳会メンバーと現役学生部員からなるネパールヒマラヤ登山隊が海外遠征を行い、世界未踏ルートの初登攀を成功させ、私達に大きな喜びと希望を与えてくれました。そして60周年記念事業に先立って、医学部附属病院の再開発事業として新外来棟が建設され、地域医療の中核としての期待を背負い、更なるレベルアップが図られています。
   また、内閣府行政刷新会議「事業仕分け」が実施され、国立大学法人の組織の見直し及び科学技術事業の予算が大幅縮減あるいは事業廃止の評価結果となったことは記憶に新しいことと存じます。大学人として、国家百年の計で進めるべき高等教育及び科学技術事業が僅か一時間の議論で結論を得ることに、怒りにも似た違和感を覚え、強い反対の声を挙げました。年末12月28日に文科省ホームページに掲載された「平成22年度 文部科学省予算主要事項」を見ますと、国立大学運営費交付金などの「国立大学法人等の教育研究基盤」的な経費は、総額1兆1,585億1,500万円と前年度比1%減、科学研究費補助金は前年度比1%増の2,000億円と確保されています。しかし、G-COEプログラム等の「国公私立大学を通じた教育研究水準向上に向けた支援」及び仕分け作業でゼロ査定された知的クラスター創成事業などの地域科学技術振興事業は、各々昨年度比22%減及び17%減と大きく縮減されることになっています。なお、これらの事業予算は総額ベースでの発表でありまして、本学が実施する教育GP、G-COEプロジェクト、科学技術振興調整費関連プロジェクトなどへの次年度経費の配分は、運営費交付金も含めて、まだ(年末の時点で)一切内示されていません。しかし、事業仕分けの推移を見ていますと、平成22年度はかなり厳しい財務運営、組織運営を迫られることに間違いありません。中長期的な観点に立って、目標・計画の着実な達成を可とする戦略的な運営が必須であると考えられます。
   さて、新年のご挨拶としてはいささか重いものとなりますが、平成22年度からスタートします第二期中期目標・中期計画の基本スタンスを簡単にご説明させて頂きます。教職員の皆様には今後是非ご理解を賜らなければならない目標・計画でございます。
   信州大学は、信州の豊かな自然と文化の中で、自然環境の保全、新しい文化の創造、人々の健康と福祉の向上、産業の育成と活性化などを目指し、優れた教育研究を行うことによって、大学に求められている社会的使命を果たすとの理念の下に将来構想「信州大学ビジョン2015」を策定しています。このビジョンに基づいて、各学部が協働で教育研究を進め,総合力と相乗効果を発揮し、世界へ飛翔する「個性豊かで独創性を備えた魅力あふれる地域拠点大学」の構築を目指します。そのために、第二期中期目標期間中では、次の四つの事柄について重点的に取組むことになります。
   まず、「未来の社会を展望した有為な人材教育の実践」です。これは学生の視点に立ち、高度専門職業人としての専門的知力の修得を支援するとともに、優れた社会的課題解決能力などの人間力と豊かな人間性を備え、社会で指導的役割を果たしうる人材を育成することです。深い専門知識の修得を主な目標としてきた大学にとって、人間力の育成は大変難しい問題です。卒論やゼミなどの指導を通して教員の薫陶を受け、学生の人間性が豊かに醸成されるとする古き良き伝統は稀有となったようです。1年次の共通教育ではもちろんのこと、高年次の学部教育においても、人間力を鍛え上げることが望まれます。フィールド授業を含む、学内外での実習の拡充、実験の拡充、インターンシップの単位化などが考えられます。また、学生に課外活動への積極的な参加を進めることも有用と思われます。
   人間力醸成の具体例として、昨年の「環境マインドの育成」教育プログラムがあります。このプログラムのもとで、ISO14001認証エコキャンパス活動に熱心な学生達に海外研修に行ってもらいました。彼らは、環境先進国であるドイツとオーストリアで、現地の大学生とのディスカッションや実地調査などを精力的に行い、多くの収穫を得てきました。帰国後の報告会やメディアの取材を重ねるうちに磨きがかかり、自信もついたようで、その大きな成長ぶりに驚かされました。
   次いで、「地域に根ざし世界に拓く研究拠点の形成」です。これは人類の知のフロンティアを切り拓き、自然との共存のもとに人類社会の持続的発展を目指した独創的研究を推進し、その成果を広く提供することにより、地域と世界に貢献することです。現在、本学において世界的な研究拠点として組織的に活動している分野は、繊維学部を中心とする先進ファイバー工学及び工学部を中心とするカーボンナノチューブの研究があります。これらの拠点は、G-COEプログラム、JST先端融合領域イノベーション創出拠点形成事業、第二期知的クラスター創成事業に指定されています。これらの研究プロジェクトに加えて、全学の英知を結集した研究プロジェクトを実施し、信州大学のワンランクアップを図りたいところです。例えば、「文化、伝統、社会構造」、「産業(ものづくり)技術」、「医療・福祉」、「食糧生産」、「地球環境、エネルギー」など理工系の知見に加えて、文化、伝統など人文、社会科学の知見を融合した知の拠点による研究活動を展開したいと考えています。
   三番目は「豊かな地域社会の創造に向けての協働と貢献」です。信州にある唯一の総合大学として、県内全域に向けた教育・文化の拠点づくりや地域の産業振興、まちづくりなどに積極的に関わっていくことです。
   研究面での実績としては、科学技術振興機構の「地域重点研究開発推進プログラム(育成研究)」(農学部)、「地域卓越研究者結集プログラム」(工学部)、「地域産学官共同研究拠点整備事業」(医農工連携)、文部科学省と経済産業省共同の「地域中核産学官連携拠点」(長野県全域)など、多くのプロジェクトが採択されています。これらのプロジェクトは、大学単独の研究ではなく地域との連携に重点を置いており、大学が地域の産業界や行政との緊密な連携のもと、産業や人材を育成するものです。その成果についても地域から大きな期待が寄せられています。
   また、学生の活躍も目立ちました。繊維学部の学生による「ハナサカ軍手ィ(ぐんてぃ)プロジェクト」は全国版のニュースにまで取り上げられました。お世話になっている上田の街に恩返しがしたいと始めたプロジェクトが大反響を呼び、売上金で上田市内の小学校1年生全員に「ちび軍手ィ」をクリスマスプレゼントすることができました。更に全国の皆さんへの恩返しとして、1,000組の「ちび軍手ィ」を子供たちにプレゼント中とのことです。上田だけでなく、日本全国にカラフルな花を咲かせて身も心も温めてくれました。このプロジェクトは大学(学生)の地域・社会貢献の成果となったことはもちろんのこと、プロジェクトに参加した学生の人間力の育成にも大きく寄与したと確信しています。
   そして最後は「社会環境の変化に柔軟に対応する大学経営の推進」ということになります。これは、学長のリーダーシップのもと、社会環境の変化に柔軟に対応する自立的な大学経営を推進することです。社会の変化に柔軟に対応できるよう、教育研究理念をしっかりと保持した上で、組織の効率的・効果的な運営を行うことを目指したいと考えます。総合大学としてのバックボーン(学部構成)は維持しつつも、内容の整理統合や新しいニーズをとらえた学科の新設などを進め、常に成長し続ける大学としたいと考えます。
   以上、第二期中期目標・中期計画の基本スタンスについてご説明いたしました。国立大学を巡る厳しい環境に屈することなく、むしろ飛躍への機会として捉え、信州の伝統的な文化・歴史と恵まれた立地条件を活かして個性豊かな世界トップレベルの教育研究領域を開拓していきたいと考えています。教職員の皆様一人ひとりが信州大学の将来を考え、行動することによって、必ずや個性輝く大学としてさらに大きく発展できるものと思います。一層のご尽力をお願い申し上げます。
   2010年が、充実したすばらしい年でありますよう祈念し、年頭のご挨拶といたします。