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理念と意義

小中学校教育現場における資質の高い理科教員の確保状況及び課題

ベネッセが実施した調査(2006)によると、小学6年生の7割強が自然や科学の探究の楽しさから理科を好きな教科として挙げ、中学生でも7割程度の生徒が自然のしくみに不思議感をもっており、子どもたちは本来理科好きだといえます。しかし、理解度では小学生の7割が理科の内容を理解していると答えているのに対して、中学生では5割と低下し、考えたり調べたりすることが好きだという割合も同様の傾向を示し、自然現象や科学に興味はあるけれど、理科学習はよくわからないという様相を呈しています。

また、信州大学のSPPを実施した教員や長野県教育委員会の指導主事等への聞き取り調査では、教員の理科に関する基本的技能ならびに基礎的知識の不確実さから、教員が自ら教材を開発し実験観察をベースとした探究型学習に比べ、教科書の知識伝達型の学習になりがちになっていることが課題として指摘されました。他にも、子どもの発達段階に応じた授業展開ができずに、せっかくの実験や観察も子どもたちの学習意欲や興味を引き出すことができずにいる事例や、特定の専門領域については詳しいが、専門以外の領域についての理解度が低いために、自然現象を総合的にとらえた授業展開ができずに、知識の切り売りになっている事例が挙げられ、子どもの理解不足や身近な素材を教材化し実践する授業力の不足が課題として指摘されました。

さらに、地域に根ざした理科教育の視点から、長野県内の小学校では現職教員が編集に関わる信濃教育会編集の理科教科書が多く使用されていますが、手作りの理科授業の実践を基本としていることから、準拠の学習帳は発行されていますが、指導書は発行されておらず、理科を専門としない教員が手作りの楽しい授業を展開するためには、教員の理科授業にかかわる授業力の向上が求められており、そのための校内や地域での指導的立場に立つ教員の育成が必要とされています。

以上のことから、物理・化学・生物・地学4領域に関する基本的な知見の習得、学校教育に特化した実験観察の技能の習得、子どもや学校ならびに地域の実態に応じた教材開発等を含む授業設計力の習得、及び子どもの発達段階に応じた教科指導のあり方の習得、といったことが、理数教育向上に向けて早急に取り組まなければならない課題です。

近年の取組

信州大学教育学部以外の理工学系学部(理・工・農・繊維)教員養成について、教職課程を企画実施する教職教育部を平成18年度に新設し、実務経験を持つ専任教員に加えて、小・中・高等学校の実務経験者を特任教員として配置し、教育実習指導等の臨床指導の充実を図っています。同時に、理学部の理科教育指導法の一部を長野県総合教育センターの専門主事が担当し、教育現場の視点を、授業の中に取り入れています。さらに、試行的取組で中学校における1週間程度の臨床学習を導入し、教材研究・学習指導法・子ども理解等教育学部同様に「臨床の知」の充実を図っています。また、学生自身の教科専門性についてのアンケートから、生物・地学分野に不安をかかえている実態が明らかになったことから、試行的取組では地学分野に関わる講義と野外実習を補完教育として開発し、教科内容についてもバランスのとれた教員養成に努めています。

信州大学教育学部では、これまで教員養成GPとして「臨床の知」の視点から、教育実習の事前指導として、地域連携校において小中学校の理科学習の観察実習や学習支援活動を導入し、経験的に理科教育のあり方を学ぶプログラムを実施しています。また、試行的取組として、専門分野の知見を深めるための特論と初歩実験技能の定着をねらった演習講座等において質の向上に努めています。

現職教員の資質向上については、教育学部・理学部・教職教育部の教員を中心に、教育現場に出向いての教科指導や共同での授業開発等を行っています。さらに本年度は、昨年度のCSTの試行的取り組みの成果をふまえて県内各地での現職教員向け研修講座を計画し、募集を行なっています。