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お知らせ

信州大学創立60周年記念式典学長式辞

09年06月06日

信州の大自然に緑滴る本日ここに、ご来賓ならびに多くの関係者各位のご臨席のもと、信州大学創立60周年記念式典を挙行できますことは、喜びも格別であります。文部科学省高等教育局長・徳永保様、長野県知事・村井仁様をはじめ、ご来賓各位にはご多用中にもかかわらず、私どものためにご光臨賜りましたこと、厚くお礼を申し上げます。また、元文部科学大臣・小坂憲次様には、急きょ駆けつけてくださいました。誠にありがとうございます。


ご案内のように本学は、昭和24年にそれぞれの歴史を刻んできた高等教育機関を母体として発足し、本年5月31日で創立60周年を迎えました。この間、8万人を超える有為の人材を輩出し、“知の拠点”として、地域はもとより社会の発展に多大な貢献をしてきたことは、大きな喜びであり、誇りであります。現在、輝かしい歴史と伝統を有する8学部と、3年前に新設された全学教育機構を擁し、大学院では修士課程6研究科、博士課程3研究科、専門職学位課程1研究科を設置しております。このような体制のもとで一丸となって、『地域に根ざし、世界に拓く』総合大学として、教育研究などの充実発展に鋭意努力しているところであります。


さて、本学は平成11年に50周年記念事業を実施いたしました。その記念誌の巻頭で、小川秋實学長は、急速に変わる社会情勢のもとで国立大学の厳しい将来を洞察され、「果たして、信州大学は創立60周年を祝えるのか」と全教職員を鼓舞されました。事実、この10年間に大学改革が加速し、平成16年4月には、国立大学法人化という歴史的な転機を迎えました。新生・国立大学として船出をした今、大変革が進展する現状をしっかり見据え、これからの飛躍への踏み台にすべく、信州大学同窓会連合会との共催によって、ここに60周年記念事業を企画したところであります。


国立大学は法人化によって、自律的で戦略的な大学運営のもとで、これまで以上に個性化、高度化、国際化が求められています。本学では、全教職員はもとより関係者各位の英知を結集して、法人化に適応した制度基盤を整備するとともに、そのメリットを生かしながら、教育研究や診療活動などを精力的に展開してきました。高度化や個性化にあたっての強みは、総合大学の優れた多彩な人的・知的・物的資源と、信州という素晴しい立地条件に恵まれていることであり、これらの活用に心がけてきたことは申すまでもありません。この間にあって、文部科学省の格別なるご指導とご支援、そして長野県、自治体、企業をはじめ、地域住民など多くの方々の温かなお力添えのもとで、教職員、関係者各位の弛まぬご尽力によって、すでに幾多の注目すべき成果があがっており、改めて深甚なる謝意と敬意を表する次第であります。


教育面では、社会からの要請に応えて、人間力豊かな人材育成の基盤となる教養教育・基礎教育を一層充実させるために、平成18年度にはその中核組織として,全学教育機構を新設いたしました。この充実した基盤教育と質の高い専門教育との一貫性により,世界をリードする創造的人材の育成に努めております。特色ある教育の一つとして,環境保全の実践的な知識と意識を育成する「環境マインドプロジェクト」があります。「自然との共生」の理念のもと,国際的に貢献できる環境調和型人材を輩出すべく、全学的に実践的環境教育を行っています。すでに全キャンパスで環境ISO認証のエコキャンパスを構築し、大学内外において活発な環境活動を展開してきており、いくつかの栄えある受賞にも輝きました。この活動を通して、私どもは全学の教職員はもとより、学生など関係者が同じ目標に向かって協働するという得がたい体験をすることができ、それがさまざまな活動に生かされてきております。教育評価に関連して、この「環境マインド育成」をはじめ、数多くの特色ある教育プログラムが、文部科学省からモデルプログラム〔教育GP(good practice)など〕として採択されており、私どもはさらなる充実を図りながらそれらを実践しております。


大学院教育に関しては、中央教育審議会答申「新時代の大学院教育」などに沿って、さまざまな改革を行ってきました。平成17年度の「大学院総合工学系研究科」の新設は、これを反映した取組の一つといえましょう。本研究科は、信州の豊かな自然環境のもと、人間と自然との融合を図る環境システムの構築、高度なものづくり技術の創生とその基礎科学の探究を基本理念に、理学・工学・農学・繊維学部を基盤としたものであります。異分野融合の先端的教育研究、そして海外からの教員招聘や英語による授業の充実にも注力しながら、「知識基盤社会」を担う国際性豊かな人材の育成を目指しており、広く期待を集めております。


研究面では、総合大学や立地条件のアドバンテージを生かし,人文科学,社会科学,自然科学の有機的連携による学際的研究を展開していることは特色の一つといえます。法人化後は重点領域を設定するなど、選択と集中によって個性的で最先端の研究を推進してきました。その成果は顕著であり、これまでに採択された大型研究推進プロジェクトには、まず「グローバルCOE」があり、また第三期科学技術基本計画の目玉ともいえる「科学技術振興調整費」では5件を数え際立っています。これらに加えて、「(科学研究費補助金)特別推進研究」、そして大型の地域産学官連携事業である「知的クラスター創成事業(第Ⅱ期)」などにも採択され、私どもは誇りをもって、さらに上を目指して励んでいるところであります。


地域貢献については、これを大学の主要な使命と認識し、大学をあげて取り組んできました。その成果が、全国大学の中でトップレベルに評価されており、大いに意気があがっております。もとより、地域の皆様のご支援、ご協力があってのことであり、感謝の念にたえません。


ところで、これまで取り上げてきた数々の成果の一方で、残念ながら、不本意な結果しか残せなかったこともあります。それら個々の事例については、要因などを謙虚に検証するとともに、改善に向けて適宜対処してきており、これからの展開に期待を寄せているところであります。また、大学を取り巻く状況がますます厳しくなり、大学の存在意義が問われる中で、私どもはそれに柔軟かつ的確に対応すべく、さらなる創意工夫と不断の努力に心していかなくてはなりません。そして、来年度から国立大学法人の第二期中期目標期間に入りますが、今まさに新たな創造と挑戦のための基盤をしっかり整える時期であります。そのための取組の一環として、教職員の英知と創意を結集するとともに、経営協議会学外委員の方々からも貴重なアドバイスを頂戴して、「信州大学ビジョン2015およびアクションプラン」をすでに策定いたしました。私どもは、このビジョンで強調されているように、内外の厳しい環境に屈することなく、むしろ飛躍への機会としてとらえ、歴史と立地条件を生かし、信州ならではの我が国唯一の教育研究領域を開拓し、これを軸に世界のオンリーワン、ナンバーワン分野を築いていかなくてはなりません。個性豊かな学部が協働し、総合力と相乗効果を発揮させることによって、教育研究にきらりと光る特色をもたせ、地域とともに成長し、世界へ飛翔する“オンリーワンの魅力あふれる地域拠点大学”を目指して励んでまいります。


ご来賓ならびに関係者各位には、一層のご指導、ご支援のほどお願い申し上げて式辞とさせていただきます。本日は、誠にありがとうございます。

平成21年6月6日   信州大学長  小宮山  淳