おおぐし じゅんじ
大串 潤児
歴史学 教授
教員 BLOG
一覧を見る歴博共同研究 甲府・北杜市調査
甲府連隊所属 兵士の日記
2011年9月24日、国立歴史民俗博物館(歴博)の共同研究チームで甲府を訪ねました。 歴博では、昨年(2010年)第6展示室(現代)がオープンしていますが、取りあげるテーマにおいても、また展示表現においても、まだまだ多くの課題を残しています。 これまでの共同研究「20世紀における戦争」Ⅰ・Ⅱのメンバーに加え、とくに植民地朝鮮・在日朝鮮・韓国人の歴史をどのように展示していくか、といった関心からの新しいメンバーを加えた新しい共同研究がスタートしました。 すでに2011年1月、大阪・鶴橋猪飼野の実地調査を行っています。 その時の様子は案内して下さった高仁鳳さんのブログにあります。 今回は、甲府連隊に所属していた兵士の日記(1937年、上海戦線)に関する調査です。 甲府については、軍隊と地域社会、地域モダニズム、兵士の日記などの側面から「20世紀における戦争」研究以来、調査をし、当地の小澤龍一さんにお世話になりました。
浅川兄弟の思想と地域文化的背景
日記調査の後、北杜市「浅川伯教・巧兄弟資料館」で展示を見学し、さらに小さな研究集会を行いました。 この資料館は甲府調査の折にはたびたび訪問していたのですが、今回は、兄弟の植民地朝鮮での軌跡のみならず、その前提になっている地域社会の文化状況に焦点があてられた議論が行われました。 とりわけお孫さんの小宮山要さんを交え浅川兄弟に文化的影響を与えた小宮山清三について議論できたことは成果でした。小宮山清三は、池田村(現・甲府市池田)の村長を務めた名望家でもあり、池田村の耕地整理事業や「御岳昇仙峡」や「湯村温泉郷」を開発した人物です。また、全国的な消防組織の統一に活躍し、自治消防の実践と理論を提唱した「近代消防の父」とも呼ばれた人でした。 浅川兄弟の1920年代的気分をどのように見るか、その気分と地方都市におけるモダニズムをどのように関連づけるのか、またそのことと植民地朝鮮への視線はどのように屈折を含みながらも関連しているのか?多くの課題が残りました。