教員紹介

はやさか としひろ

早坂 俊廣

哲学・芸術論 教授

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中国関係

つながる楽しさ

唐法常禅師墓塔(浙江省寧波市)

新年度が始まりました。今期は演習で、いわゆる「禅問答」を扱います。どうして儒教研究者が禅仏教に手を出したのでしょう? シラバスを書いていた数ヶ月前の自分に聞いてみたいのですが、「後悔先に立たず」、ただいま、がんばって予習をしております。その過程で、「大梅山法常禅師、初めて祖に参じて問う、如何なるか是れ仏。祖云く、即心是仏。常即ち大悟す。後、大梅山に居す。」という箇所を目にして、躍然としました。もちろん悟ったのではありません。自分が、この「大梅山法常禅師」のお墓に参ったことがあることを思い出したからです。2008年8月ですから、ずいぶん前の話になりますが、当時は寧波の学術史に関する現地調査を数年かけて行っていました。その際、調査に協力してくださった現地の方が「この山は有名なんだから!」とかなり無理矢理に我々を誘って(連行して)くださったのが、大梅山でした。ええ、当時はちょっと恨みました。だって、全然興味なかったんですから。

護聖禅寺遺址(浙江省寧波市)

法常禅師の「お墓」とは言っても、1999年に建てられた「墓塔」ですので、あるいは記念碑的なものだったのかも知れません。ただ、「護聖禅寺遺址」という寂れた場所から更に竹藪を掻き分けて(途中、足を滑らせて尻餅をつきつつ)入っていったので、鮮烈な思い出が残っていました。それが、8年近くの歳月を経て、私の中でさらに強い意味をもってよみがえってきたわけです。「如何なるか是れ仏」という問題の解明には一切役立ちませんが、それまでバラバラだったものが一つにつながる経験というものは、単純に、楽しいものであります。

福應寺(松本市神林)

こういう経験は、これまで何度かありました。例えば、松本市のアルウィン近くに「福應寺」というお寺があります。このお寺は、鎌倉時代に活躍した法燈円明国師(心地覚心)という高僧の生誕地だそうです。この高僧は、日本に味噌・醤油・尺八、そして『無門関』という禅籍を伝えた偉い方みたいなのですが、必要あってこの方の事績を調べていたときに、何だか頭がむずむずしてきました。「尺八」辺りで反応したようなので、過去に中国で撮った写真をバーッと見直してみたら、「むずむず」の原因がありました。原因は、2011年に中国の杭州市でサバティカル休暇を過ごしていた時の写真でした。それは、黄龍洞近くの、いつもの散歩コースにあった「護国仁王寺遺址」という看板をよく分からないまま念のため撮影しておいたものだったのですが、裏の説明書きを拡大して読み返してみると、果たして「心地覚心」の名が刻まれていました。彼が本当に「尺八」を日本に伝来したのか否かについては、疑義も存しているようではありますが、何はともあれ、彼がここで尺八を学んだというテイで説明書きが記されておりました。

護国仁王寺遺址(浙江省杭州市)

まさしく「だから、何なのだ?!」の世界ですが、単純に嬉しかったので、ここに御報告いたします。この記事を書きながら、過去の写真を整理していたのですが、上から2枚目の写真をふと見直して、さらに躍然としました。これまで全く意識していなかったのですが、そこにも「心地覚心」の名が刻まれていたのです。松本出身のこのお坊さん、寧波の大梅山にも行ってたんですねえ・・・。恨んですみませんでした、王先生。

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