教員紹介

はやさか としひろ

早坂 俊廣

哲学・芸術論 教授

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中国関係

杭州便りその19

回家過年、明年再見

いつもはにぎやかな、外国人専家楼前の通り「西渓路」も、徐々に寂しい「シャッター街」になりつつあります。前にも書きましたように今年は1月23日が旧暦(農暦)の1月1日で、まもなく「春節」がやって来るのです。専家楼の食堂も23日から1週間休業するとの掲示を出しています。玉泉校区の留学生中心の食堂(専家楼のそれと比べてあまりに綺麗で、くやしいので今まで一度も利用したことがないのですが)を見に行ったら、こちらも同じように休業するようです。よく利用する喫茶店も、いきなり休みに入っていました。ファストフード店・定食チェーン店頼みの「春節」になりそうです。

なぜか花が捧げられていた毛沢東像(浙江大学玉泉校区)

今回中国に来て改めて実感したことの一つに、「外地人」「農民工」の問題の根深さがあります。春節に町中が寂しくなるということは、それだけ杭州以外の土地から来た人たち「外地人」が多くいる、ということでもあります。彼(女)らの多くは「出稼ぎ」の人たちで、戸籍上、もともと杭州に住んできた人たち(都市戸籍の持ち主)と明確に区別されています。最近では「新杭州人」という優しい言い方があるようですが、そこには多少の欺瞞も交じっているように感じざるを得ません。「新杭州人」は、十分な社会保障が受けられない等、様々な局面で「老杭州人」とは異なる苦労を強いられており、本当の意味で「杭州人」になることはほぼ不可能だからです。夏になると、「小候鳥」たちが杭州の町に大量にやってきます。「小候鳥」とは「小さな渡り鳥」の意で、田舎を離れて都会に出稼ぎに来ているお父さん・お母さんに夏休み中に会いに来た子供たちのことです。ある社区(居住区域の単位)では、「老杭州人」の倍以上の人数の「新杭州人」がいるそうですから、訪れる子供の数も半端でなく、そういう子供たちの安全をどう確保するか、といったことが、夏にテレビの番組で話し合われていました。冬には、それとは比べものにならない数の、逆の流れが生じるわけです。安価な労働力が都市に流入することは歓迎するが、一家を挙げて本格的に都市に住み着くのは許さない。そういう社会の合意(国家の意思?)が、夏の「小候鳥」と、春節前後の民族大移動を生んでいるように見受けられます。「民族大移動」というのは、大げさな表現ではありません。春節期間に、のべ32億人もの人間がこの国のなかを移動するとのことです。

これが一斉に鳴り響くのです!

さて、「町中が寂しくなる」と書きましたが、それはもちろん、ある一面だけを捉えたものです。社会全体としては、春節に向けて着々と、うきうきと進みつつあります。町角のところどころで、花火・爆竹を売る店が出始めました。やはり中国の方々は、これがないと年越しができないようです。スーパーには、お菓子や漢方薬の詰め合わせが大量に並んでいます。これをたくさん抱えて、親戚や友人宅を訪れるのでしょう。外国人の目から見て奇異に感じたのは、真っ赤なパンツや靴下がこれまた山ほど店先に並び始めることです。知り合いが、「干支の人(今年で言えば辰年生まれの人)が身につけるのが基本だが、もちろんそれ以外の人も、身につければ運気がアップする。自分も日本留学に出発する際には、彼女が贈ってくれた赤いパンツをはいて飛行機に乗った」という話を教えてくれました。実は私も赤パンを2枚購入したのですが、これについては残念ながら写真を掲載できません。

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