教員紹介

はやさか としひろ

早坂 俊廣

哲学・芸術論 教授

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中国関係

杭州便りその15

浙江世界貿易中心

「浙江世界貿易中心」という商業ビルが近所にあります。杭大路(杭州大学が浙江大学に吸収合併された今もこの地名は残っています)の西側に小さな店やレストランがぽつぽつと建っていただけだった15年前、この場所ではずっと工事がされていました。「一体ここに何が出来るのだろう?」と不思議に思っている間に在外研修が終わってしまったのですが、まさかこんな立派な建物が出来るとは思ってもみませんでした。杭大路の西側に、このビルが目立たないぐらいに、たくさんの高層ビルが建ち並ぶようになるとも・・・。

「私たちの核心的価値観」

転落した女児をうけとめる二本の手

先日、この世界貿易中心で二つの展示会が開催されていました。どちらも、今の中国(杭州)を象徴するような企画で、興味深く観覧しました。  一つは、「杭州生活品質展」で、「私たちの価値観」が中心テーマでした。何でも、「社会主義の核心価値体系を主要内容とする実践活動」を今年になってから杭州市が展開してきたそうで、その活動を写真パネル等で紹介することが主内容のようでした。以前ここで、10階から転落した幼児を受け止めようとして負傷した女性の話を紹介しましたが、そのことをモチーフにしたオブジェも飾られていました(ちなみに、幼児も女性も今では無事に退院され、女性は先日「全国道徳模範」に選出されていました)。  「私たちの核心的価値観は何なのか?」というのは、こういった、単なる行政側の旗振りだけで問われている問題ではないように感じています。広東省で起きた、2歳の女児が車にひかれて倒れているのを18人の通行人が見過ごしにした(助かったかも知れない女児を、面倒にまきこまれるのを恐れて見殺しにした)事件は、おそらく日本でも紹介されていることと思いますが、この事件は中国の人たちに大きなショックを与えたようです。いつも見ている地元テレビ局の討論番組でも、「GDPが上がればそれでいいのか?」等、非常に深刻な議論が交わされていました。その際、何度も「私たちの核心的価値観は何なのか?」と問われていたのが、とても印象的でした。  少し意外だったのは、その番組で、日本が好意的に論評されていたことでした。「日本は、今でも伝統文化を大切にしている」と。いやいや、私たちだって、ちょっと前までは「エコノミック・アニマル」と口汚くののしられていましたけど・・・と、複雑な思いでそれを聞いていました。  それにしても、「核心的価値観」って何なのでしょう?難しい問題をつきつけられたような思いがしました。

国際漫画節

漫画ファンのお宝 拝見

 もう一つの展示会は「漫画(アニメ)」に関するものでした。いろいろな漫画のパネルが飾られていましたが、やはり日本のものが目立ちました。先日も浙江大学の院生と話していて、次から次へと日本の漫画の名前が出てきて、びっくりしました。日本の漫画・アニメは、かなり中国の若者のなかに浸透しているようです。会場には、『ONE PIECE』の原画が展示されていたりして、「変なおじさん」になって写真を撮りまくってしまいました。ガラスケースのなかに漫画作品が仰々しく飾られているのを見て、「日本の新古書店とかで100円で売られている漫画をごっそり中国に持ってきたら売れるんじゃないかな?」とか思ったりしました。会場の片隅には、旅行会社の「日本本州六天動漫游」のチラシが置かれていました。「動漫」とはアニメのことで、このツアーに参加すると、秋葉原やら少年ジャンプのフェスティバルやら宮崎駿美術館やらを廻れるようです。東京から入って、伊豆や富士山やらも廻り、大阪から出国して、6日間で一人7800元(約95000円)。親子で参加することになるでしょうから、最低でもこの倍はかかる計算になります。こういう企画にこれだけのお金を使える人が増えてきたということでしょう。  会場の柱には「漫画は文化、漫画は経済」と大書されていました。特に杭州市は、「漫画・アニメ産業」の育成に力を入れているようです。国産アニメがふるわない中(「喜羊羊」ぐらいしか、自前のキャラクターを持っていないのでは?)、ここでも、日本が非常に強く意識されています。『ONE PIECE』を超えるような名作が、中国から生まれるのか、今後に注目したいと思います。

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