教員紹介

はやさか としひろ

早坂 俊廣

哲学・芸術論 教授

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中国関係

紹興游

とにかく暑かった・・・

劉宗周のキーワード「誠意」「慎独」

一応「私用」扱いで行ったので、「游」と銘打ってますが、紹興酒も飲まずに史跡を見て回りました(代わりにビールを飲んだだけの話ですが)。ホテルは市街地ではなく、「紹興県柯橋」という場所に取りました。宿舎近くの「黄龍旅游集散中心」というところから「柯橋」行きのバスが出ているのと、この近くに見たい場所が多くあったからです。ただ、そうは言っても市街地も見たいので、まずは路線バスにゆられて(杭州ではもう見ない「車掌さん」のいるバスで驚きました)、蕺山(紹興駅の少し南にある)に行きました。書聖・王羲之ゆかりの戒珠寺があることで何よりも有名ですが、明末には劉宗周という思想家が出て、この地で講学活動をしました。私が最近研究している全祖望も、「蕺山書院」で教学活動に携わったことがあるので、ぜひ見てみたかった場所です。「蕺山書院」という標識に従って山を登っていくと、中腹辺りにそれはありました。もっとも、昔ながらの建築物があるというわけではなく、最近になって建てられたもののようですが、戒珠寺の真後ろに建てられていますので、場所は正確なはずです。残念ながら改修中で、中は参観できませんでした。とにかく暑くて暑くて、この後に入ったケンタッキーで飲んだコーラが泣きたくなるほどおいしかったです。

石橋をとにかく渡る

運河沿いから太平橋をのぞむ

柯橋に宿を取ったのは、まずは「鑑湖」に近かったからです。この湖の水で作られたお酒のみ「紹興酒」を名乗る資格があります。いや、別にお酒にひかれたわけではなくて、それほど紹興においても権威ある地だということです。また、この地は古来、交通の要衝で、杭州-紹興-寧波をむすぶ運河沿いに、古橋がいくつか残っています。くどいかも知れませんが、とにかく暑かったので、午前出かけて、ホテルに戻ってシャワーを浴びて着替えをして、また午後でかけて汗だくになって・・・という感じで、柯橋を歩き回りました。もっとも、昔の思想家が私のように必死に歩き回ったのかどうかは不明で、たぶん舟に乗って優雅に移動したのだとは思いますが・・・。ただ、柯橋に来て再認識したのですが、今やこの地は世界でも最大規模の「軽紡績市場」の街なのです。写真を撮りながら町歩きをしているのは私だけでした。中近東系の方々をよく見かけたのが印象的でした。10年ほど前に路線バスで通りかかったことがあり、そういうことは分かっていたつもりでしたが、ここまで発展しているとは予想外で、愛知県西部の織物の町で生まれ育った身としては感慨深いものがありました。

自転車操業の喜び

この場所にあったわけではありません

今回のような旅行が、学問的にどういう意義があるのか、正直、自分でもよく分かりません。ただ、現地に来ると、他所ではなかなか手に入らない書籍を入手できることが多く、それもまた外を出歩く動機・活力になっています。今回も、鑑湖風景区の土産物売り場に、紹興市内の大きな書店にも置いてなかった本をたくさん見かけて、大人買いしてしまいました。そして、こんな自転車操業でいいのかなと思うのですが、そこで買った本で、明代の有名な藏書家・祁彪【火業】の「澹生堂蔵書楼」がこの付近にあったことを知りました。建物自体は失われているようですが、せっかくなので、最終日の朝にその付近に行ってみました。全祖望がこの蔵書楼に関する文章をものしているのは記憶にありましたので、杭州にもどって読み直してみたら、ちゃんとこの地の名前が記されていて、「うわっ、恥ずかしっ! 最初から知ってて旅行に出かけたことにしよっ」と思いました。情けない話ですが、でも、こうやってこの地と縁を結び、体に刻みつけることができたことは確かです。今後、「梅墅」という地名を忘れることはないでしょう。

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