社会調査

社会調査実習 in 青木村

11月13日(木)から16日(日)まで,社会学分野と文化情報論分野の合同で,小県(ちいさがた)郡青木村に,インタビューを中心とした調査実習に出かけました.  すでに,昨年から信大人文学部と青木村は連携協定を結んでいて調査を始めているのですが,新米で赴任した私(辻)にとっては,初めて訪れる場所であり,また,右も左も分からないために,準備段階でも本調査でも今ひとつ勘所がつかめず,社会学の村山先生と,文化情報論の祐成先生には,いろいろとご迷惑をおかけしました.  すでに今年度の前期から,学生たちは(社会学の中では)村政1・2,産業・観光,教育の4つの班に分かれ,班ごとに青木村について下調べをしていたようで,10月に私が着任してからは,村山先生と私のコメントをもとに,インタビューの内容について,社会調査実習の時間や課外の時間にまとめていきました.また,文化情報論とも同時に協力して調査を行うので,学生たちも相互に課外時間などに交流しながら準備を進めていたようです.  私は当初,学生が主体的にどのくらいきちんと調査項目などをまとめることができるのだろうかと心配していましたが,最終的には,それぞれの調査対象者に対してかなりきちんとした質問項目の一覧を作成し,誰が誰にインタビューするかのスケジューリングを行っていたことに感心しました.教員がとやかく口を挟まずとも自分たちで進められていたことに,信大の学生たちのポテンシャルの高さを感じました.  11月13日,晴天に恵まれて,青木村に出かけました.最終日に弱い雨が降ったことを除けば,天候はよく,外を駆け回る調査にとっては幸運なことでした.

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(青木村役場:よく晴れた秋空に映えています)

 

青木村に到着して,道の駅で昼食を取った後,調査本部となる文化会館に入り,早速調査が始まりました.

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(調査本部の様子)

 

初日と2日目に予定が集中しており,2~4名ほどの学生が組になって1人の人にインタビューを行うという形で進めました.

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(青木村役場でインタビューを行う学生たち)

 

時には,社会学と文化情報論の学生が組になることもありましたが,特に問題もなく調査は進んでいきました.4日間で社会学と文化情報論の学生約40名でのべ80数名の方々にインタビューを行うことができました.当初は,教員も「こんなにたくさんのインタビューができるのだろうか.学生の管理がたいへんだな」と思っていましたが,完全にこちらの杞憂に終わったようでした.社会性のある優秀な学生に恵まれると,教員の負担は減るものですね.また,この場で,インタビューにご協力いただいた多方面の方々,とりわけ一切のインタビュー計画を一手に引き受けていただいた青木村教育委員会の上原さんに感謝したいと思います.  私は,4日間,基本的には調査本部に詰めて,何か問題があれば対応できるようにしていましたが,特に問題が起こらない中ずっと詰めているとあまりに窮屈なので,青木村を観察するために2日目の午前中にぷらっと散策に出かけました.その途中,あちこちで写真を撮りながら歩いていました.そして,全くアポイントもなしにある製材所に立ち寄り,インタビューをさせていただきました.

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(製材所にて)

 

たくさん置いてあった木材は,周辺の山から切り出したものもありますが,はるばるアメリカから輸入したものもあるそうです.建築会社の意向に応じてさまざまな木材を準備せねばならないそうです.しかし,後継ぎになる方は今のところいないそうで,林業関係はなかなか厳しそうだなという印象を持ちました.しかし,周辺の山を通ってみたところ,山は手入れがなされていて,決して荒れ放題ではない様子がうかがえました.森林組合などが,きちんと取り組んでいるのだなと思いました.  2日目のお昼ご飯は,教員同士で山の上のとあるレストランにお蕎麦を食べに行きました.なかなかこだわりを持った食材で意欲的に取り組んでおられる様子がうかがえ,小さな村の中でそのような活動をされている姿がロマンティックで素敵でした.

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(山の上のレストラン)

 

学生たちがインタビューしてきた中にも,個性的でこだわりを持った生き方をされている方々がたくさんおられるようで,このような方々の力がどこかで合わさって,村を活性化しているのだと感じました.  夜は教員で,村にある田沢温泉と沓掛温泉の公衆浴場に出かけました.泉質は違っていましたが,どちらもぬるめのお湯であることがこの村の温泉の特徴だと思います.沓掛温泉で出会ったおじいちゃんは,「35度のお湯だが,1時間もつかると体の芯から温まる」とおっしゃっていました.私たちが入る前から湯船につかっておられ,私たちが出るときもまだお湯の中でした.いつもの常連さんたちがおられるようで,裸の付き合いというのは,結束型社会関係資本を維持するために,かなり有効なのかもしれないという印象を持ちました.  15日は,青木村で全国義民顕彰集会が開かれました.青木村は,「義民の里」としても知られている村です.江戸時代から明治時代初頭にかけて,いくつかの農民一揆の発端となった村なのだそうです.文化会館には,義民資料室があります.ところで青木村は,近隣の上田市との合併をしないという道を選びましたが,そういった伝統から生じる気質といったものが独立の道を選択させるのに,どのくらい寄与しているのだろうかという素朴な疑問があります.学生たちの村政を担当する班は,合併しないという選択をしたことに関心を持っているようなのですが,どのような話を聞いてきたのか,報告が楽しみです.学生たちの中には,この義民顕彰集会にオブザーバとして参加した人たちもいました.教員も私以外の教員が参加しました.義民の研究で著名な研究者の方が講演をされたりしたそうです.また,高校生による義民太鼓のアトラクションは大いに盛り上がったそうです.  私はその間,「信州昆虫資料館」に行って昆虫の標本や山口県の方が描かれた絵を見たり,資料館の成り立ちについてお話をうかがってきました.

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(信州昆虫資料館:この建物は,以前ホテルだったとか)

 

さらに,15日・16日は,道の駅で産業祭が開かれていました.青木村や姉妹都市の静岡県長泉町の物産が特設テントで販売されたり,子どもたちのお楽しみのミニSLなどもありました.私はそこでひらたけというきのこを買って,その夜のつまみの1つにしました.ひらたけは焼いて食べるととてもおいしいのです(私はそれを新潟県の栃尾でのフィールドワークの時に知りました).あいにくフライパンが見あたらず,醤油と酒で煮込んでみましたが,これもおいしかったです.

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(産業祭での一コマ)

 

3泊4日のうち,2日間は,夜に学生たちと飲み語りました.それぞれの学生のことがこれまで以上によく分かり,とても楽しい時間を過ごせました.  この3泊4日,全体としてたいへん有意義であったと思います.11月下旬の現在,学生たちは,インタビューしてきたことをまとめる作業をしています.この経験を通して,さまざまな立場のさまざまな人々と出会い,貴重な体験ができたと思います.私自身もフィールドワークに出かけ,さまざまな人々のお話を聞くたびに,新しい発見をし自分の内面が豊かになることを感じます.初めてインタビューを体験した学生も多いと思いますが,それぞれにとってよい体験であったことを願っています.年度末には報告書をまとめることになりますが,各班のインタビュー結果から,どのようなことが見え,社会学的にどのようなおもしろいことがわかってくるのか,学生たちもわくわくしながら取り組んでいるようですし,私自身も楽しみにしたいと思います.

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