歴史学講座・日本史分野の活動

信大史学会 2011年

プログラム

ソジョンさんの報告

 2011年12月3日,恒例の信大史学会が「あがたの森文化会館」で開催されました。信大史学会は,信州大学人文学部歴史学講座所属の教員・大学院生・学生および歴史学を勉強した卒業生によって構成されている学会です。 プログラムは以下の通りです。 報告1 李素婷(イ ソジョン)「16世紀末から17世紀初頭における朝鮮半島から見た琉球王国-『朝鮮王朝実録』を中心に-」 報告2 平林ふみ「大学での学びと教育実践-「教員生活」8ヶ月の振り返り」 講演 藤田覚「根回しの世界と近世文書」

平林さんの報告

 韓国からの留学生の素婷さんの報告は,修士論文の中間発表でもありましたが,「宣祖実録」所収の琉球関係文書を読み解き,東アジアの視野から日・韓・琉球の関係を考えようとするものでした。時期は,「壬辰・丁酉倭乱」=秀吉の朝鮮出兵時に設定されています。韓国における研究の進展ともあわせて,これまであまりそれ自体としては検討されてこなかった「壬辰・丁酉倭乱」時における琉球王国の動きを追ったものとして重要な問題提起になるものです。  平林さんは,信州大学を卒業後,東京学芸大学大学院に進学。その後に勤めた千葉県での教員生活や教育実践について報告をして下さいました。日常的に行っている教科指導上の工夫や,校務分掌をはじめとする教員の悩みと「やりがい」を率直に話してくれたとても刺激的な内容でした。信大史学会では,卒業生が頑張っている各種の「現場」(もちろん教育現場もその1つ)からの報告を毎年行っています。

根回しと文書

藤田さんの御講演

 藤田覚(東京大学名誉教授)さんは近世政治史がご専門です。東アジア・北方世界をふくんだ視座による幕府政治史の問題提起は刺激的です。最近の代表的なものに,『天皇の歴史06巻 江戸時代の天皇』(講談社2011年)があります。  御講演は,文書を読む「楽しさ」と「こわさ」をわかりやすい具体的な事例に即して述べたものでした。大名の官位昇任や将軍の太政大臣任官などの事例を示しながら,その過程で作られた文書,その作成前後の事情にまで分析することによって,1つの文書の背後には「根回しの世界」とでもいうべき世界が広がっていることが積極的に明らかにされました。学生さんのみならず,歴史学に携わるものは,史料とその周辺を,批判的に読むこと,読み込むことが求められている,その意味で「歴史学のイロハ」を学ぶ(学び直す)よい機会であったと思います。  懇親会もとても盛り上がりました。 ※信大史学会は,年に1度ではありますが,専門の時代や地域を越えてお互いに勉強が出来るよい機会です。雑誌『信大史学』も第36号となりました。卒業生との交流の場としても,今後ますます活発にしていきたいと思います。  お話くださいました,ソジョンさん,平林さん,そして藤田覚さんに御礼申し上げます。

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