「比較文学分野」紹介

【比較文学分野の理念と教育目標】

 

sun_chariot.jpg比較文学分野は、特定の言語と特定の国民文学に関する個別研究・教育を超えた「比較言語文化」の観点に立ち、(A)「西洋古典文学の垂直軸」と (B)「西洋近代文学の水平軸」として規定される、西洋系の言語と文学に関する横断的な教育と研究、及び (C) 国際交流を通じて、(1) 外国語の高い運用能力、 (2) コミュニケーション能力、(3)論文を作成するために必要な批判的思考と作文の技術、(4)古今東西の様々な言語芸術作品に対する深い見識を磨くと共に、 こうした成果によって、(5)現代社会を力強く生き抜く実践的な教養の養成を目指します。

 

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その領域の広さゆえ、比較文学分野の教育と研究は、文化コミュニケーション学科と人間情報学科の他分野からの大きな協力を前提としており、他分野の科目も比較的自由に選択して卒業できるようになっています。

 

 

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2008(H20)年1月現在、比較文学分野(比較言語文化専攻コース)は、西洋古典文学が専門の野津寛准教授、近代文学の比較研究が専門の渋谷豊准教 授、全学教育機構所属でロシア文学・文学理論が専門の佐々木寛教授という、研究領域の大きく異なる3名の教員で構成されています。

 

 

 

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比較文学分野(比較言語文化専攻コース)では、それぞれの教員の専門分野について個別的に教育・研究指導を受けるとともに、西洋古典文学、西洋近代文学、近代日本文学の比較研究を通じ、古今東西の文学について、様々な側面から、広く・深く、横断的に学ぶことが可能です。

 

 

【比較文学分野の教育・研究領域】

比較文学分野は、個々の専門領域をふまえながら文学と言語文化のさまざまな領域を幅広く学ぼうとする意欲ある学生の皆さんには最適の専攻コースで す。比較文学分野の教育・研究の領域を、西洋古典文学の垂直軸と近代文学の水平軸によって分かりやすく示すならば、以下のようなものとなるでしょう。

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私たちは、「比較文学分野」という広大な研究・教育領域を、上の図のように「西洋古典文学の垂直軸」と「近代文学の水平軸」として理解しています。

【西洋古典文学の垂直軸】

英米文学であれ、ドイツ文学であれ、フランス文学であれ、イタリア文学であれ、その他のヨーロッパ文学であれ、いわゆる西洋文学は自分たちの間で共 通の「古典文学」を共有しています。その共通の「古典文学」とは、古代ギリシア・ローマの文学のことであり、日本では「西洋古典文学」と呼ばれています。 具体的には、ギリシア・ローマ神話、ホメーロス、ヘシオドス、ギリシア悲劇・喜劇、ヘロドトスやトゥキュディデスの歴史、プラトンやアリストテレスの哲学 書、新約聖書、ウェルギリウスやオウィディウス、カエサルやキケロのことです。それは、ちょうど日本や韓国や中国が漢字文化圏諸国の一員として、中国の古 典文学を共有しているようなもの、あるいは、アジアの仏教文化圏諸国が、古代インドにさかのぼる仏教文学を共有しているようなものです。

この「西洋古典文学」という全ての西洋諸国文学によって共有された遺産に対して、私たちは常に目を向けながら、古代ギリシア・ローマから近・現代に 至る様々な西洋文学を自由かつ批判的に、すなわち比較言語文化的に取り扱って見ようというのが、私たち比較文学分野の「垂直軸」です。

【近代文学の水平軸】

フランス大革命以降、ヨーロッパに続々と近代国家が成立し、各国はそれぞれに特色ある文学を持つに到りました。「ドイツ文学」、「フランス文学」、 「イギリス文学」等々、いずれも魅力的な文学です。ただし、それぞれの独自性ばかりに目を奪われていては、ヨーロッパ文学を正しく理解することはできませ ん。というのも、各国の文学は閉ざされた領域を成すものではなく、逆に、互いに密接な関係を持っているものだからです。実際、ヨーロッパ各国の近代文学 は、互いに影響を与えたり、与えられたりしながら展開してきました。その背景には、情報伝達のネットワークの拡大があります。近代における文学的事件は易 々と国境を越えるのです。第一次大戦後にフランスで生まれ、瞬くうちにヨーロッパ中に広まった「シュルレアリスム運動」などはその良い例でしょう。人はと もすれば文学を国別に考えてしまいがちなものですが、文学にとって国境とは決して絶対的なものではないのです。私たちの比較文学分野では、一つの国に特化 することなく、各国間の相互関係を明らかにしながら、ヨーロッパの近代文学を考察します。

さらに、ヨーロッパ文学だけではなく日本の近代文学も扱います。明治以降の日本文学は、西ヨーロッパ文学とロシア文学の強い影響のもとに展開しました。そこで、私たちは近代日本の詩や小説を、西ヨーロッパ文学やロシア文学との関係に着目しながら研究します。

その他にも、<文芸理論・文学理論の研究>や<移民・亡命作家の研究>は私たちの重要なテーマです。様々な国の文学作品に対して有効性を持ち得るよ うな批評理論(バフチンの理論など)を研究したり、移民や亡命者という優れて「横断的な」存在の文学(クンデラの作品など)を考察したりするのです。

要するに、「近代」という一つの時代に焦点を絞った上で、複数の国の文学の関係を―また国境をまたいで認められる文学的事象を―重点的に研究しようというのが、私たち比較文学分野の「水平軸」なのです。

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