渋谷豊先生の授業(テーマ)

【西洋近代文学における同一テーマの変奏――比較文学への招待】
ヨーロッパの様々な国の文学者の想像力を刺激したテーマがある。例えば、妖女サロメの伝説。ハイネ、フローベール、ワイルド、ヴェイエルガンスなど、国籍 の異なるヨーロッパの多くの近代作家がこの伝説に興味を持ち、この伝説を下敷きにして独自の文学作品を作りあげている。彼らは、いわばサロメ伝説という同 一のテーマをそれぞれに「変奏」したのである。こうした同一テーマの多様な「変奏」を楽しみながら、「比較文学」的な文学研究の基礎を身につけてもらいた い。

【西洋近代文学の諸潮流の研究】
ロマン主義、象徴主義、超現実主義など、近代ヨーロッパ文学の主要な思潮・運動を取りあげ、それぞれの思潮・運動の特徴を考察しながら、代表的作品を読解する。さらに、西洋文学の諸潮流が日本でどのように受容されたか検討する。

【日本の近代詩の比較文学的研究】
「新体詩抄」から第二次大戦直後あたりまでの日本の近代詩の歴史を、西洋文学との関連に着目しながら辿ってみる。つまり、近代日本人の詩的な感性や表現方法の変遷を、比較文学的に考察するということである。

【近代日本人文学者の滞欧体験の研究】
明治以来、ヨーロッパに滞在した日本の文学者は数多い。彼らはヨーロッパでどんな暮らしを送り、何を考えていたのか。また、ヨーロッパに滞在したことが、 その後の彼らの文学にどのような影響を与えたのか。金子光晴など何人かの作家・詩人を取りあげて、近代日本人文学者の滞欧体験の実態と意義を探る。

【亡命作家の研究】
亡命作家とは、一つの国の文化や言語の枠に収まらない「横断的」な存在である。そんな「横断的」な存在を研究するのもまた、比較文学研究の重要な課題であ る。ミラン・クンデラなど近・現代ヨーロッパの亡命作家の作品を――更には、亡命者や移民の子の文学をも――読解しながら、「亡命の詩学」を構想してみた い。

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