[森林の植生構造と更新動態]

当研究室では、信州をフィールドの中心にして、森林の植生構造と更新動態に関する研究を行っています。植生構造を解析することで、どのような種が共存しているのか、またどのような立地と関係しているのかという植物社会学的な知見が得られます。また、森林は常に同じ状態を保っているわけではなく、何らかの変化が起きています。この森林の挙動には、長い目で見ないと明確にできない小さな変化や、突然訪れる撹乱(台風や火災)のように予測がつかないものがあります。当研究室ではいくつかの長期モニタリングサイトを運営しながら、これまで見えてこなかった森林の更新動態を探ろうとしています。


北海道・天然広葉樹林の長期動態(丸山担当) 北海道、落葉広葉樹天然林の更新動態
安定して成立する森林も,その中では破壊と再生が繰り返し生じ,絶えずその構造を変化させながら存在しています。 ここでは冷温帯の代表的な木本種であるミズナラが優占する天然林で,風による破壊を受けた後の新たな環境下での更新動態と林分構造の変化を明らかにし,森林の維持機構を考えます(北海道足寄町,担当・岡野,丸山,矢川,齋藤1996-継続)。

研究成果
・第126回日本森林学会大会P1B036,P1B037
・中部森林研究 58, 65-68, 2009→要旨
・第121回日本森林学会学術講演集CD-ROM,Pa1-44→要旨
・2009年度修士論文


戸台川流域・実生の消長(中野担当) 戸台川流域におけるミズナラ成木の分布
ミズナラ林は冷温帯の山腹斜面にしばしば観察されますが,戸台川流域では河岸段丘にも成立しています。本研究では,戸台川流域の山腹斜面と河岸段丘におけるミズナラの分布様式,サイズ構造を比較しました。(南アルプス戸台川流域,担当・城田,2009-2010)。

研究成果
・信州大学農学部AFC報告 8: 11-16, 2010→全文(機関リポジトリ)
戸台川流域・実生の消長(中野担当) 戸台川流域におけるミズナラの更新特性
河岸段丘は山腹の崩壊と上流からの土砂運搬によって形成され、また、洪水によって撹乱される不安定な立地です。このような立地におけるミズナラの更新特性は明らかではありません。本研究では,裸地,パイオニア種の林冠下,ミズナラ林の林冠下において更新したミズナラ実生の消長を追跡しました。写真は,春先に先端が枯死したものの,萌芽によって再生した個体です(南アルプス戸台川流域,担当・中野,2007;2009)。

研究成果
・中部森林研究 59,23-26, 2011
・2009年度卒業論文
・2007年度卒業論文
西駒・つる植物の分布(横山担当) 木本性つる植物の植生構造
つる植物は温暖な地域ほど多様性が高いといわれています。しかし、一方で、どのくらい寒冷な気候に適応できるのか明らかではありません。本研究では中央アルプス北東側の西駒演習林(標高1400m〜2670m)を利用して、つる植物の分布を明らかにしました(西駒演習林,担当・横山,2009)。

研究成果
・2009年度卒業論文


西駒・登山道沿いの植生(坂巻担当) 登山道による植生の垂直構造の比較
登山道は林冠ギャップ形成や地表攪乱を通じて植生構造に影響を与えます。しかしながら,その影響は登山道の幅や利用頻度によって異なります。本研究では中央アルプス北東側の西駒演習林(標高1400m〜2670m)の二つの登山道を利用して、植生の垂直分布やその変化を比較しています。(西駒演習林,担当・坂巻,2012)

研究成果
・2012年度卒業論文


手良沢・下層植生の構造(藁科担当) アカマツ二次林における林床植生の植物種多様性
手良沢山演習林の尾根部に発達したアカマツ二次林には、ササ類がほとんど分布していません。そのため林床には多くの樹種が観察されており、植物種多様性を維持する上で重要な場となっています。本研究の目的は、これらの樹種が、空間的に棲み分けているのか、それとも混在しているのかを明らかにすることです。また、棲み分けている樹種群があるとすれば、それがどのようなスケールの地形因子に対応しているのかを解析しています。(手良沢山演習林,担当・藁科,2005;2009)。

研究成果
・中部森林研究 54. 11-12, 2006.
・第121回日本森林学会学術講演集CD-ROM,Pa2-18, 2010→要旨
・2009年度卒業論文
・2005年度卒業論文







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