南アルプス 戸台川

戸台川は南アルプス(赤石山脈)の仙丈ケ岳(3032.6m)と駒ケ岳(2965.6m)から流下する一級河川であり,下流で黒川,三峰川となり,天竜川に注いでいます。南アルプス国立公園に含まれており,渓畔域に成立する植物群落として豊かな自然を有しています。例えば、絶滅危惧種TB類のヒメバラモミの自生地であり,また、トダイアカバナ,トダイハハコといった,この地の名前を冠した希少種も存在します。



戸台川渓畔林と攪乱

戸台1 戸台2
戸台川では流路を中心として、複数の河岸段丘が形成されています(左)。流路に近い段丘ほど頻繁に攪乱を受けると考えられ、その攪乱体制に応じた植生構造が形成されていると考えられます。また、段丘の奥には急峻な山腹斜面を控えています(右)。
戸台1 戸台2
秋になり、紅葉がすすむと、山腹斜面の下のほうが落葉広葉樹と常緑針葉樹で構成され、上部のほうが常緑針葉樹を主体に構成されていることがわかります。下のほうではアカマツやオオシラビソが、上のほうではコメツガやシラビソが見られます。また一部にはヒメバラモミが点在しています。
戸台1 戸台2
急峻な山腹斜面には様々な種が混在しています。株立ちの個体や傾斜した個体など、土砂移動の影響を受けた痕跡が見られます。
戸台7 戸台8
山腹斜面の崩壊に伴って、大量の土砂流出が生じ、裸地が形成されます(左)。このような場所には、カラマツなどのパイオニア種が侵入していきます(右)。
戸台9 戸台10
通常、水は低位段丘の流路を流れていますが、増水すると上位段丘を侵食することがあります。上位段丘が侵食されると樹木の根系が洗い出されたり、さらには倒壊が生じます。押し流された土砂は別の場所に堆積され、新たな段丘を形成することもあります。


Photo by D.Nakano and K.S.Maruyama



戸台川河岸段丘の植生構造

戸台3 戸台4
流路に最も近い低位段丘には、カワラニガナ―トダイアカバナ群落やフジアザミ群落が形成されています(左)。一部には、ミヤマヤシャブシなどの木本種も侵入しています。上位段丘にはカラマツ−カワラニガナ群落やカラマツ−ベニバナイチヤクソウ群落が形成されています(右)。
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さらに発達した上位段丘にはオオバヤナギ群落が成立しています(左)。最も発達した群落として、ミズナラ−ウラジロモミ群落が成立しています(右)。この群落では写真のように、林床が暗く、コケも発達しています。


Photo by K.S.Maruyama



戸台川河岸段丘のミズナラ

戸台1 戸台2
戸台川の河岸段丘の一部にはミズナラが局所的に発達している場所があります。本来、山腹斜面に現れるミズナラが河岸段丘へと侵入しているのです。
戸台1 戸台2
これらのミズナラの初期動態を追跡調査してきました。左側は展葉間もない6月の、右側は落葉前の10月の写真です。
戸台1 戸台2
すべての実生が順調に成長するわけではありません。なかには動物による食害を受けたり(左)、うどんこ病にかかったりする(右)個体もありました。


Photo by D.Nakano







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