これまでの研究活動として、「ナイロン6極細繊維、超極細繊維の物性と風合い」に関する研究に取り組んできました。断面直径9μmの極細繊維、断面直径2μmの超極細繊維の特徴を力学特性と吸湿特性より解明し、普通繊維との相違を明らかにしました。さらに、断面直径が異なる繊維を用いて試作した織物について風合い評価を行った結果、極細繊維織物独特の特徴があることを明確にしました。
現在遂行しています研究テーマ「衛生用マスクに関する研究」は、市販の花粉症用マスクの快適性に、素材およびデザインの改質がどのような影響を与えるかを目的としています。すなわち、マスクの力学的特性、熱特性、気流特性、捕集効果および感性評価より、花粉症用マスクを実際に装着した際のフィット性能、マスク被覆内気候、呼気による口当シート周辺の気流挙動および快適性を定量的に明らかにする研究を行っています。
さらに、花粉症用マスクに関する研究を発展させて高齢者に多くみられる口腔乾燥に着目し、そのケアを目指した高齢者用保湿マスクの開発に取り組んでいます。高齢社会が進む中、インフルエンザなどのウィルス感染について予防対策を施すことは重要であります。特に、高齢者福祉施設内で生活する高齢者は顎関節が低下して開口状態で過ごす時間が長く、施設内でのウィルス感染の防止は深刻な課題であります。このような現状から、高齢者および介護者が施設内でより快適な生活を送ることができるような最適なマスクの提案を進めています。
以上に述べました研究活動を総合し、極細繊維の物性と風合いとの関係、衛生用マスクの快適性の計測・評価を中心に、今後、より快適なマスクを糸構造より提案するとともに、学術的なものづくりの分野で研究を行っていくことを熱望致しております。