私は, 月惑星探査ロボットの走行系について研究を行っております. 地上のように整備された路面と違い, 砂, 段差, 曲率をもった地面などの接触状態を推測するのは非常に難しいため, 地盤との相互作用を物理的に考え, どのような特性で走行するのが有効なのかを走行ロボットを用いて検討しております. 軟弱地盤上では,摩擦力を主とした推進力として簡単に考えることはできないため, 繊細な地盤上を有効に走行する手段として, 走行系の形状検討や制御により検討を行ってきました. 走行系の形状検討では, 従来から用いられている円形状の車輪が走行悪化を招く原因を解析し, 有効な走行系に導出する基礎データとして用いております. また, ロボットは非線形である路面を走行することから, 柔軟に対応できる車輪が要求されます. そこで, 本研究では柔軟材料を利用して車輪の製作をし, 常時有効な応力分布を維持できる弾性車輪を開発することに成功しました. 現在は, 回転制御(トラクションコントロール)へと発展させた研究をしております. 月面探査ロボットにおけるトラクションコントロールでは, 軟弱地盤走行中にスリップ率を観測し, スリップ率が上昇した際に速度を低減させてスリップ率を抑えます. また, 初期動作時に発生する大きなスリップ現象についても着目し, 走行系がスタック状態に陥ってしまう前にスリップを引き起こさないように制御することも検討しています. これらの研究は, 現在, 現在宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同研究しております.