地球温暖化、酸性雨、オゾン層の破壊などの環境問題が、世界中で深刻になっています。これらの問題を軽減するために、石油、石炭などの化石燃料に代わる資源として環境への負荷が少ないバイオマスが最近注目されています。森林由来の木質バイオマスは地球上のバイオマスの大部分を占め、木材は最も豊富なセルロース繊維資源でもあります。従って、木材を燃料、繊維、建築用材として持続的に利用し再生産することが、人類の生活と環境保全の両立のために必要です。これらの背景から、樹木における木質形成や材質を制御する機構を明らかにし、木質材料の有効な利用の促進につなげることを目的に研究を行っています。木材の最も基本的な構成要素は、木部細胞によって形成される高度に分化した細胞壁です。材質は木質組織の構造、細胞壁の性質、そして細胞壁の形成機構と密接に関連していることが予想されます。また、木質形成は水、光、化学物質、物理的な力などの環境シグナルに強く影響されます。そこで私は、樹木の木部細胞壁の形成機構、環境応答機構、環境シグナルの木質形成や材質への影響について、組織学、生理学、物理学、分子生物学などの様々な手法を組み合わせて研究しています。そしてこれらの研究は、成長、材質、環境ストレス耐性に優れた樹木の開発、良質な木質材料の創出、そして環境の改善及び保全に貢献するものと期待されます。