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精密素材工学科教育プログラムの特徴



精密素材工学科を卒業するためには
精密素材工学科を卒業するためには,基幹科目32単位,専門系科目92単位,合計 124単位を修得しなければならない.詳細は平成13年度入学生の履修すべき授業科目および単位数の表に記されている.専門系科目は,専門科目Iと専門科目IIから構成され,専門科目IIの各科目名は,平成13年度入学生用学科課程表にまとめられている.専門科目IIには必修科目,選択科目の区別はあるが,目的や目標を達成するために,必修科目だけでなく選択科目の大部分を履修する必要がある.


◇1年次プログラム
1年次の授業科目は,【精密素材工学基礎】,【自然科学基礎】,【工業数学・計算機利用技術】に分類される.【精密素材工学基礎】には,学科独自の科目,一般教育科目,外国語科目,保健体育科目がある.


【精密素材工学基礎】《学科独自》

精密素材工学科の目的と目標を理解し,社会に対する責任を考慮して,継続的,自立的に学習する能力を身につけるために「精密素材工学ゼミナールI,II」を開講する.大学生活の導入となることを意図した合宿や,専門教育へのつながりを意図した上田地区における研究室見学,さらに課題学習,学力水準の把握と実力向上のための自主学習など,様々なプログラムを通して次のようなポイントを身につける.
1. 要点の把握:黒板に書かれたことを機械的に写すのではなく,講義内容を要約して,ノートにとる.講義の中で何が重要かを把握する能力を身につけ,要点をおさえたノートがとれるように努める.個々の知識のつながりを考えることが大切である.
2. 理解の自己責任:授業料を払って受講する立場で講義に参加していることを自覚し,講義において静寂が確保されるように努める.わからないことは自ら質問をして,理解するように努める.講義に改善すべき点があれば建設的提案をする.
3. 学習時間の確保:授業は講義時間だけでなく自己学習時間も含められている.単位を修得するためには,講義だけでなく講義の予習復習を十分に行う.
4. 問題解決のための学習:知識を得るだけにとどまらず,問題解決のために知識を使えるように努める.解決策を人に頼るのではなく,自ら提案し失敗を恐れずに行動する.危機に陥っても危機をチャンスに転換して生かせるように,失敗と改善を繰り返しながら根気よく問題を解決する力を身につける.
5. 伝達責任:自分の伝えたいこと,伝えなければならないことが,無駄なく的確に相手に伝えられるように努める.自分が理解したことを自分の言葉で述べること,相手に誤解を与えないかを考慮して言葉を選ぶことに心がける.相手に自分の意志が伝わらないのは伝える側の責任であることを自覚する.
6. 計画責任:締め切り日などの与えられた制約の下で,計画的に仕事を進め,まとめる.仕事は成果の内容だけでなく期日の厳守も大切である.締め切りに遅れると社会的損失が大きいことを自覚する.

また,資源・エネルギー・環境問題の解決に役立ち,持続性のある社会を目指した材料およびその製造プロセスや利用システムに関する学問を理解するために,「材料の科学と技術I,II」を開講する.エネルギーや環境問題の解決,情報技術やバイオ技術の発展に係わる材料の科学と技術,および基本的なエンジニアリングの視点について理解する.「材料の科学と技術I,II」は選択科目となっているが,精密素材工学科の目的を理解するために全員が履修するのが望ましい.


【精密素材工学基礎】《一般教育》

キャンパスが分散している信州大学では,全学部の1年次生を松本キャンパスに集めて教育を行っている.各学部の教官が1年次を対象に松本キャンパスにおいて開設する授業科目の主題は幅広い分野に渡っている.1年次プログラムでは,この環境を生かして,技術者としての視野を広げることを目的に,「材料の科学と技術」とは別に6授業科目以上の主題別科目を取得することを求めている.分野が偏らないように科目を選択するのが望ましい.


【精密素材工学基礎】《保健体育》

自らの健康に留意し持久力をもって対処できる能力を身につけるために,「ヘルス・ケア理論」を学び,「スポーツ実習」を履修する.


【精密素材工学基礎】《外国語》

国際的に通用するコミュニケーション基礎能力を身につけるために,英語とドイツ語を学ぶ.1年次プログラムの英語に関しては,英語と英会話があり,20名程度の少人数教育を特徴としている.


【自然科学基礎】《数学》

1年次プログラムでは専門科目の基礎となる数学を学ぶ.「微分積分学」,「線形代数学」が専門科目I,「応用解析学」が専門科目IIに区分されているが,【自然科学基礎】の数学3科目として体系的に取り扱われる.これらの科目は,2年次における【自然科学基礎】の物理科目の基礎となる.2年次以降の専門科目を学ぶ上での数学の必要性を認識さできるように,精密素材工学科の教官が責任をもって2年次以降のプログラムの基盤となるように教育するのが特徴である.


【工業数学・計算機利用技術】

精密素材工学科教育プログラムでは,計算機利用技術に力をいれている.
4月に開講される「情報処理演習」(基幹科目)では,各自が自分自身のノートパソコンを持参して受講する.(ノートパソコンの共同購入のシステムも補助している.)基本的な使い方の教育からワープロ,表計算,プレゼンテーションのソフトの使い方までを学ぶ.学期末には,各自が,表計算ソフトを用いて得られた結果をプレゼンテーションソフトを用いて発表できるようにする.パソコンを問題解決のために使えるようにする教育法を学科独自で生み出している.
さらに,10月に開講される「工業数学」(専門科目II)でも,継続的にこのノートパソコンを利用する.数式をグラフ化することによって,工業数学を視覚的に理解する.パソコンを利用した新しい教育法を学科独自で生み出している.


●1年次から2年次への進級条件●

1年次から2年次への進級の際には,一定の条件を満たしていなかえればならない.1年次に修得すべき単位のうち4単位を超える不足がある場合は2年次への進級は認められない.4単位以内の不足の場合は仮進級が認められるが,1年次の未修得の科目や再履修しなければならない科目を仮進級後2・3年次に修得しなければならない.仮進級後,松本キャンパスで開講される1年次の科目を履修するのは,2・3年次の科目と授業時間が重複するなどの理由から困難であり,4年次進級の際に留年する可能性が大きくなるので注意を要する. 4単位を超えて未修得あるいは再履修の科目のある場合は,留年して松本地区で単位を修得することになるが,前期中(9月まで)に進級条件を満たすことができれば,後期(10月)から2年次に進級し,上田地区(繊維学部常田キャンパス)で開講される2年次以降の授業科目を受講することができる.


◇2年次プログラム
2年次の授業科目は,【精密素材工学基礎】,【自然科学基礎】,【工業数学・計算機利用技術】,【工学基礎】,【専門基礎】,【化学】,【実験】に分類される.英会話は基幹科目であるが,それ以外の科目は専門科目IIである.


【精密素材工学基礎】《外国語》

国際的に通用するコミュニケーション基礎能力を身につけるために,2年次プログラムにおいても英会話を学ぶ.精密素材工学科教育プログラムでは,英会話教育を重視している.


【自然科学基礎】《物理》

1年次プログラムの数学に続き,2年次プログラムでは専門科目の基礎となる物理を学ぶ.「工業力学」,「電磁気学」,「波動光学」の3科目からなる.1年次における【自然科学基礎】の数学科目と連続した体系的なカリキュラムが特徴である.3年次における【化学】の物理化学科目や【プロセス工学】の基礎となる.


【工業数学・計算機利用技術】

2年次プログラムではコンピュータを用いてプログラミング技術を学ぶ.プログラム言語は,科学技術の分野で一般的に用いられるFORTRANを採用している.「コンピュータプログラミング」「コンピュータプログラミング演習」「数値計算法」という3科目にわたり, コンピュータプログラミングの基本から簡単な応用までを学ぶ.


【工学基礎】

社会における工学および技術者の重要性を学ぶために「工学基礎概論」を開講する.工学教育,技術者倫理,問題解決法,文書の書き方などの基本的な事柄から,生産と管理,安全,環境,研究と開発,知と情報,人材の育成と活用,経営と財務,販売と広報などマネジメントに必要な基礎知識まで幅広い範囲にわたって学ぶ.工学教育において確立されにくかった重要な分野を工学基礎と位置づけ,学科独自で教育法を生み出している.  
産業と社会の間の問題を解決するための工学の重要性について学ぶために「化学工業概論」も開講する.酸・アルカリ工業,染料工業,アンモニア合成,石油精製,高分子,石油改質,石油化学という伝統的化学工業の誕生から現在までの発展の歴史を追うことによって,社会の発展に及ぼす工学の役割を学ぶとともに,半導体,環境,エネルギー,バイオといった未来の基盤産業について現状と問題点を学ぶ.単なる知識の羅列に終わらず,産業や技術の生まれる背景も重視した教育法を学科独自で生み出している.


【専門基礎】

物質は突然消えてしまったり,現れたりはしない.また熱などのエネルギーについても同じである.こうした物質保存の法則とエネルギー保存の法則が世の中の様々な現象を考える鍵となる.精密素材工学科の目的である「資源・エネルギー・環境問題の解決」においては,物質収支とエネルギー収支が最も基本となる専門分野と位置づけられる.
エネルギー保存の法則は熱力学という学問分野で取り扱われる.「初等熱力学」は熱力学の基本を学ぶ.さらに,化学的な諸現象に熱力学を適用しようとすると,物理・化学平衡について取り扱うことになる.「化学熱力学」では,化学における熱力学について学ぶ.「熱力学」は「移動現象論」および【化学】,【プロセス工学】といったすべての専門科目の基礎となる.
実際の現象では,物質やエネルギーが移動する中で,物質保存の法則やエネルギー保存の法則を考えていかなければならない.つまり,物質やエネルギーの収支を考えながら,熱・物質・運動量の移動現象をとらえる必要がある.これら移動現象のとらえ方の基本を「移動現象論」で学ぶ.この授業科目は,3年次プログラムにおける【プロセス工学】におけるすべての科目の基礎となる.


【化学】《無機・有機》

材料は化合物から構成される.化合物の合成や物性を考える上で化学の知識は欠かせない.化学は大きくわけて,無機化学,有機化学,物理化学の3分野がある.このうち2年次では,無機化学と有機化学を学ぶ.「無機化学I,II」では,最近発展をとげている構造論,配位理論および立体化学を含む無機化学の基礎について学ぶ.3年次における【工学基礎】「無機材料科学」の基礎となる科目となる.
「有機化学I,II」では有機化学の必要最小限の基礎を学ぶ.有機化学の学問体系は広く基礎的な内容でも1年間で学ぶことはできない.有機化学を専門とするには,さらなる自主学習が必要である.3年次における【工学基礎】「有機材料科学」の基礎となる.なお,化学のもう一つの分野である物理化学については3年次の【化学】《物理化学》で学ぶ.


【実験】

精密素材工学科教育プログラムにおける最初の実験科目である「分析化学実験」では,実験の基本を学ぶ.最も基本的な分析化学という分野をもとに,実験の基本的な操作,器具及び薬品の取り扱い方,測定,結果の解析を習熟する.実験は,実験そのものだけでなく,実験の計画や準備,実験結果の報告や発表も重要である.実験計画のたて方,起こる可能性のある危険に対する心構え,レポートの書き方,プレゼンテーション法についても学ぶ.
分析化学分野の実験に続いて,「物理化学実験」では,物理化学分野の実験を行う.物理化学というのは,化学の緒原理を確立し展開する学問である.物質の物理的,化学的性質を観察し,そこから得られる結果が一定の法則性をもっていることを理解する.基本的な実験法を学びながら,観察結果の裏に隠されている本質を見る目を養うとともに,実験法の原理を把握することによって,将来必要とされる物質の構造と性質を解析する上で必要な新規技術を開発したり解釈したりする能力を修得する.また,実験結果を世の中にわかりやすく公表する能力を身につけるために,2回の発表会において実験結果を公表する.


●2年次から3年次への進級条件●

2年次に用意されている実験は2年次で修得しなければならない.実感以外の2年次の単位を修得できない場合は,3年生で再び履修することになる.3年生の授業科目と重なった場合,どちらかの授業科目の履修ができなくなるため,3年次から4年次への進級条件を満たさないことがあるので注意が必要である.


◇3年次プログラム
【工学基礎】,【化学】,【プロセス工学】,【実験技術】,【科学英語】,【精密素材工学総合】から構成される.なお,「英語[科学]」は基幹科目であるが,それ以外の科目は専門科目IIである.


【工学基礎】

材料は,セラミックス(無機材料),高分子(有機材料),金属の3つに分類される.精密素材工学科は,化学を生かした材料およびその製造プロセスや利用システムを目指しているので,とくに無機材料と有機材料が重要になる.無機材料と有機材料およびその製造プロセスや利用システムについて「無機材料科学」と「有機材料科学」を学ぶ.金属については,とくに講義科目を設けていないが,例えば燃料電池等の触媒に用いられる金属微粒子等,精密素材工学科が対象とする分野で重要な金属材料については,「化学工業概論」,「無機材料科学」,「有機材料科学」等で学ぶ.  
材料の製造プロセスや利用システムを設計するためには,視覚的に伝える製図が必要である.「基礎製図」では製図の基礎知識や,コンピュータを用いた製図CADの使い方を学ぶ.


【化学】《物理化学》

3年次の【化学】では,物理化学を学ぶ.物理化学は,熱力学,反応速度論,量子力学の3つの分野を柱とする.このうち熱力学については,【専門基礎】の中で「初等熱力学」「化学熱力学」として2年次に学んでいる. 化学反応を電車にたとえると,熱力学が行き先を扱う学問であるのに対して,反応速度は急行か普通かを扱う学問である.両者は同じ化学反応を扱うので,共通する部分もあり混同しやすいが,まったく独立している.資源・エネルギー・環境問題を考慮して化学反応を平衡に達しないような低温で行うことを考える時には,熱力学より反応速度論に基づく取り扱いが重要になる.「反応速度論」では,反応速度の基礎から,反応速度を促進する触媒などへの応用までを学ぶ.【プロセス工学】「反応工学」の基礎となる科目となる.
古典物理学では,瞬間瞬間の粒子の位置と運動量を精確に指定することによって,その粒子の精確な軌跡を予測し,並進,回転,および振動の運動モードは,加えられた力を制御しさえすれば任意の大きさのエネルギーに励起できる.しかし,原子や分子のレベルの小さな粒子にはあてはまらない.化学的な現象は原子や分子レベルでおこるため,原子や分子レベルの現象を記述する学問である量子力学が重要になる.「初等量子力学」では量子力学の基本を学び,「応用量子物理・化学」では量子力学の原理を用いて原子の内部構造を理解する.「分光学」では分析技術として重要な分光法の原理を量子力学的にとらえる.より実際的な分析方法を学ぶ【工学基礎】「機器分析」の基礎となる.
熱力学と,量子力学が取り扱う原子や分子の性質の橋渡しをするのが統計力学である.「統計力学」では,統計力学の概念と方法論を学ぶ.
一般にエネルギーを放出する化学反応では,反応にともない熱を放出する.これに対して,資源・エネルギー・環境問題の解決に有効な電池の場合では,熱の代わりに電気エネルギーを放出する.こうした電気エネルギーのが直接関与する反応を通常の化学反応と区別して電気化学反応と呼ぶ.「電気化学」では,熱力学の原理を電気化学反応に応用した原理をはじめ,電気化学反応に関係する分野を学ぶ.
精密素材工学科教育プログラムでは,短時間で広範囲な物理化学の分野を学ぶ.このため理解を助けるために「応用物理・化学演習I,II」で演習を行う.


【プロセス工学】

材料そのものだけでなく,材料の製造プロセスや利用システムを学ぶことは,材料開発技術者としてたいへん重要である.材料の製造プロセスや利用システムを学び,最終的にはそれらを設計できる能力を身につける必要がある.
「エネルギー工学」では,2年次に学習した【専門基礎】「移動現象論」のエネルギーの部分を発展させ,プロセス全体の熱収支を考えた熱エネルギーの有効利用まで学ぶ.
材料の製造プロセスとしては,分離操作と反応操作が重要である.「分離工学I,II」で分離の技術とその原理について,「反応工学」では反応の技術とその原理について学ぶ.材料プロセスは,こうした個別の技術がシステムとして統合してできあがっている.「プロセス・システム工学」では,複雑なシステムから重要な要素を取り出し,階層構造をつくる考え方を学ぶとともに,プロセス設計やシステム,プロセス最適化の考え方を修得する.
資源・エネルギー・環境問題の解決に役立ち,持続性のある社会を目指した材料およびその製造プロセスや利用システムを理解するために「環境プロセス工学」を学ぶ.環境問題の実態,成因メカニズム,その工学的な考え方や解決法を学ぶとともに社会,経済的側面からのものの見方を身につける.従来の製造プロセスや利用システムの理解だけでなく,ライフサイクルアセスメント(LCA)などの評価法を重視している.このような工学のソフト化の流れに対応した教育法を学科独自で生み出している.


【実験】

前期の「精密素材工学実験I」,後期の「精密素材工学実験II」とも,10の実験テーマにより構成される.実験内容は,材料の物性の測定法,材料プロセスに重点がおかれている.どちらも中間および全テーマが終了した時点で,班単位で全員が実験結果を発表する機会を設けている.年4回の発表会を取り入れることによって,実験技術だけでなくコミュニケーションの能力向上にも力をいれている.


【科学英語】

材料を扱う技術者は,問題解決のために科学に関する英語を用いてコミュニケーションする必要がある.3年次の「英語(科学)」では,簡単な科学英語の使い方と発音の仕方を学ぶ.読解だけでなく,読みを重視することによって,国際共同研究などにおいてもコミュニケーションが可能な能力を身につける.この授業科目は英語教官が担当しているが,精密素材工学科教官と指導方針をよく話し合った上で講義内容を決めている.


【精密素材工学総合】

インターンシップ(学外実習)として「精密素材工学実習」を用意している.精密素材工学科では,対象とする分野の専門性が高いために,併設する大学院における博士前期課程1年生が夏休みを利用して実習を実現している.しかし,精密素材工学科教育プログラムの効果を高めるために,大学3年次の夏休みを利用した実習についても検討中である.


●3年次から4年次への進級条件●

3年次から4年次への進級には,1年次から3年次までに修得する必要のある単位に対して次の条件を満たす必要がある. 1. 基幹科目,専門科目I,専門科目II必修科目のすべてを修得する. 2. 専門科目II選択科目28単位のうち23単位以上を修得する.


◇4年次プログラム
4年次生は,研究室に所属し,「卒業研究I,II」を実施する.卒業研究は,下記のような問題解決のための一連の具体的な方法を学び,体験する機会である.

1. 研究の目的を設定し,文献の調査などを通して目的の背景を理解する.
2. 文献を参考にして,研究の方法論を決定する.
3. 実験あるいはシミュレーションを行い,結果を整理する.
4. 卒業論文を執筆する.
5. 卒業研究発表会で,自分の研究についてわかりやすく説明し,質疑に答え,討論を行う.

研究を通じて自己実現が図れているという喜びを感じることで,よい研究成果が得られ,その成果が自信となって,優れた研究者に育つと考えられる.このため精密素材工学科では,社会の要求に応えた有望な研究領域において優れた研究内容を卒業研究として提供することを心がけている.また,卒業研究では,複雑な研究をそのまま提供するのではなく,かみくだいて単純化して,段階的に問題解決をして成長するように配慮している.
卒業研究では,4月までに研究課題が設定され目的を設定する作業にはいる.課題は指導教官から提示されたものであったとしても,自ら選択するテーマであることを自覚し,研究課題の周辺の研究について調べ,研究の目的をよく理解する. 5月から12月にかけて,研究の方法論の設定と実験およびその結果の解釈を繰り返す.この間の細かいスケジュールというものは決まっていないが,漫然と学校に通っていれば,自動的に卒業論文が書けるわけではない.自分の手や頭を使って失敗と成功の経験を積み重ねながら体得しなければ研究というものを理解することはできない.世界初の研究であれば,必ず成功するという保証はないので,仮説通りに実験結果が得られない場合も多い.この場合は,失敗結果を分析することによって,新たな仮説を設定し,研究の方法論を立て直すことになる.こうした試行錯誤の助けとなるのが,3年次までの学習成果であり,単なる知識だけでなく,知識を用いて問題解決できる能力を身につけておくことが望ましい. 1,2月には得られた研究結果を卒業論文にまとめ発表する作業にはいる.研究は,研究費を用いて社会のために新しい成果を出す行為であるから,成果を社会全体に公開することは重要である.わかりやすい報告をするために,発表準備に十分な時間を使うことが望ましい.

卒業研究の助けとなる授業科目4年次の「英語(科学)」,「機器分析」,「精密素材工学特別演習I,II」を履修する.4年次の「英語(科学)」では,文献調査をする助けとするために,英語で書かれた論文を読むのに必要な科学英語の知識を学ぶ.また,各研究室単位で英語の演習を行い,英語で書かれた論文から情報を得るのに不自由のない能力を習得する.「機器分析」では,研究の方法論を決定する助けとするために,分析機器の原理,使い方と安全教育を行う.「精密素材工学特別演習I,II」では,研究をわかりやすく説明し,質疑に答え,討論する能力を学ぶ.研究に必要な論文を購読し,各研究室での発表会でその内容を紹介し,質疑に答え,討論を行う. 「精密素材工学特論I,II」では非常勤講師から精密素材工学科の教育プログラムに不足している分野に関して講義をうける.


●卒業条件●

卒業には,2年次から4年次までに修得する必要のある専門科目II選択科目32単位のうち31単位以上を修得する必要がある.このうち4単位は学科長が認める精密素材工学科以外の専門単位に替えることができる.また,基幹科目である4年次「英語(科学)」の修得も必要である.