教授挨拶

関島 良樹
Yoshiki Sekijima

信州大学医学部内科学第三教室 教授

信州大学医学部内科学三教室は、脳神経内科とリウマチ・膠原病内科を専門としています。脳神経内科は私が、リウマチ・膠原病内科は下島准教授が科長を務め、互いに協力し合い診療・教育・研究を行っています。脳神経内科とリウマチ・膠原病内科は、痛み、筋炎、血管炎などオーバーラップする症状や疾患が多く、また「問診」と「身体診察」が非常に重要であるという共通点があります。様々な臨床検査が診断や治療の選択に有用であることはもちろんですが、どんなに検査技術が発達しても患者さんから直接話を聞いて診察をする以上の情報は得られません。私たちの教室では、臓器や病気を診るのではなく人を診ることができる豊かな人間性と高度な臨床能力を有した内科医を育成し、関連領域における世界水準の医療を患者さんに提供します。また、科学的探究心を持った臨床医科学者(Physician Scientist)の育成にも注力します。

脳神経内科もリウマチ・膠原病内科も社会的ニーズが非常に高い分野で、専門家が不足しています。意欲のある医学生や初期研修医の皆さんに、是非、脳神経内科、リウマチ・膠原病内科を目指して頂き、私たちの教室に集まってもらいたいと思います。

以下に私たちが目指す教室像をご紹介します。

1.One for all, All for one!

私が好きな言葉に、「One for all, All for one」があります。元々はプロテスタントの指導者の手紙の中に記載されていた言葉だそうですが、小説「三銃士」の合い言葉や、ラグビーのチームプレイの精神を示す言葉として有名です。「共通の目標(one)に向かって皆(all)が協力し努力すれば成し遂げられる」という意味ですが、大学の教室(医局)は正に同じ志を持った仲間が集まって、共通の目標に向かって努力する場であると思います。「All for one」は「皆が一つの目標に向かって」と訳されますが、「皆が一人のために」と読むこともできます。私たちは、個々の教室員の自主性を尊重し、留学などの自己研鑽の希望や、出産・育児などのライフイベントによる仕事の調整など、個人(one)の仕事や人生の目標を教室全体(all)でサポートし助け合える、そんな教室にしたいと思います。

2.患者さんからサイエンスへ、サイエンスから患者さんへ!

私が信州大学内科学三教室に入局した当時、先輩の先生方が錐体外路症状、糖尿病、網膜色素変性症を呈する原因不明の患者さんを丁寧に診療し、臨床像、病理像、分子病理学的な病態を明らかにして、セルロプラスミン欠損症の疾患概念を確立する姿を目の当たりにしました。また、全く有効な治療法がなかった難病の遺伝性ATTRアミロイドーシス(家族性アミロイドポリニューロパチー、FAP)に対して、日本初の肝移植治療を導入する過程も間近で勉強させて頂きました。私自身は、肝移植の適応とならないFAPの患者さんを多く診療した経験から、より低侵襲で多くの患者さんに適応できる新しい治療法を開発したいと考え、米国のスクリプス研究所に留学してトランスサイレチン(TTR)四量体安定化薬に関する研究を始め、帰国後も研究を継続してきました。途中いろいろな困難もありましたが、多くの共同研究者や患者さんと協力して、新規治療法を実用化し、世界中の患者さんに還元することができました。
 このような経験から、実際に診療した患者さんとの関わりが、臨床医の研究のモチベーション・原動力になると確信しています。また、日々診療している患者さんの中に、非常に重要な発見や研究のヒントが隠れていることを医学生や若い医師に伝えていきたいと思っています。

3.信州から世界へ、世界から信州へ!

「信州から世界へ」には二つの思いがあります。一つは、高いレベルの臨床・研究成果を教室から世界に発信すること、もう一つは教室の若い医師に積極的に海外留学してもらうことです。海外留学は少し勇気がいる決断ですが、若い時期に海外で生活し、多様な人々の考え方や価値観に触れ、視野を広げることはその後の人生においてかけがえのない財産になります。また、留学中に出会った人々との関係は医師や研究者としての発展の糧になります。さらに、医学における国際化は今後益々進むことが確実であり、自分の考えをしっかりと伝えられる英語力を身につけることは、これからの時代の医師にとって必須です。このような理由から、私たちの教室は教室員の海外留学を全力でサポートします。もちろん、日本国内の留学希望も大歓迎です。教室員が国内外で得た新たな知識や技術を信州に持ち帰り、独自の研究へと発展させ、患者さんや社会にとって有益な成果を世界に向けて発信していける教室にしたいと思います。

略歴

平成3年
信州大学医学部卒業
信州大学医学部附属病院、飯田市立病院、佐久総合病院、豊科赤十字病院などを経る
平成11年
東京都精神医学総合研究所分子生物研究部門 研究員
平成14年
米国Scripps研究所(Dr. Jeffery W. Kelly Lab.)
平成17年
信州大学医学部 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科 講師
平成18年
信州大学医学部 遺伝子診療部 准教授(副部長)
平成25年
信州大学医学部 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科 准教授
平成30年
信州大学医学部 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科 教授

主な専門分野

内科学、神経内科学、臨床遺伝学、リウマチ膠原病、アミロイドーシスやライソゾーム病などの代謝性疾患

所属学会,資格

  • 日本内科学会(評議員,専門医制度審議委員,認定内科医,総合内科専門医,指導医)
  • 日本神経学会(代議員,広報委員,基本領域科推進委員,会員管理・行動規範委員,神経内科専門医,指導医)
  • 日本認知症学会(理事,広報委員,指導医,認知症専門医)
  • 日本末梢神経学会(理事,財務委員,編集委員)
  • 日本神経感染症学会(理事,倫理・審査委員長)
  • 日本人類遺伝学会(評議員,編集委員,臨床遺伝専門医)
  • 日本アミロイドーシス学会(副代表理事)
  • 日本リウマチ学会(リウマチ専門医)
  • 日本神経治療学会(評議員)
  • 日本遺伝カウンセリング学会(評議員)
  • 日本自律神経学会
  • 日本脳卒中学会
  • 日本循環器学会(心アミロイドーシスガイドライン作成委員,心アミロイドーシス調査研究班班員)
  • International Society of Amyloidosis(国際アミロイドーシス学会: 理事, 編集委員,命名委員)
  • World Federation of Neurology(世界神経学会)
  • Amyloid, Associate Editor
  • Journal of Human Genetics, Associate Editor