" 研究内容の紹介 -パワエレ-

パワエレグループ

図1 身近なパワーエレクトロニクス 図2 高周波駆動LLCコンバータ


  • パワエレグループの紹介

     パワーエレクトロニクスは電力用半導体素子と受動素子を用いて電気機器の制御や電力の供給を行う技術です。パワーエレクトロニクス技術は電気を使う機器全てに用いられており,電力消費が前提となる社会の根幹を支えています。
     従来,半導体にはSi(シリコン)が用いられてきましたが,近年,Si半導体の特性を大きく上回るSiC(シリコンカーバイド),GaN(ガリウムナイトライド)半導体が開発され,パワーエレクトロニクスを取り巻く環境は大きな変革期を迎えております。
     本研究室では,SiC,GaN半導体の特性を生かせるDC-DCコンバータや磁気部品の研究・開発を行っております。

  • パワエレグループ 研究内容

    高周波駆動コンバータの高電力密度・高効率化のための磁気部品の小型・低損失化の検討 [文科省_革新的パワーエレクトロニクス創出基盤技術研究開発事業]

       電気機器への電力供給を担う電源回路には小型化・高効率化の強い要求があります。電源回路に用いられるコンバータの小型化には駆動周波数の高周波化が有効です。従来のSi半導体を用いたコンバータはSi半導体のスイッチング特性や損失がボトルネックとなり,100 kHz程度で高周波化が頭打ちとなっていました。そのため,Si半導体を用いたコンバータは満足な小型化が行えず,電力密度(小型化の指標:出力電力÷体積)は非常に小さいです(図3)。しかし,SiC,GaN半導体の登場により,コンバータの駆動周波数を大幅に高めることが可能となりました。そのなかで,現在,インダクタ・トランスなどの磁気部品で生ずる損失が駆動周波数の高周波化の次のボトルネックとなっています。
       本研究室ではこのボトルネック解消のため,磁気部品の損失低減の検討およびコンバータ開発を行っています。磁気部品の損失低減として磁束経路制御技術の検討をしています。磁束経路制御技術とは磁気部品を構成する導線の適切な位置に導線と比べ,透磁率,抵抗率の高い磁性体を配置することで,導線に鎖交し,表皮・近接効果を引き起こす磁束を誘導し,損失の低減が行えます(図4)。
       上述の磁束経路制御技術を適用したインダクタ・トランスの構造検討・製作から,製作した磁気部品を実装した昇圧チョッパコンバータ,LLCコンバータの開発を行い,小型・高効率なコンバータの実現を目指しています。
      図3 Si半導体を用いたコンバータ
      図4 磁束経路制御技術およびそれを用いたトランス

      論文・国際会議・学会発表

      [1] K. Shimura, T. Yamamoto, Y. Bu and T. Mizuno, "Examination of High-Q-Factor Conductor-Embedded Planar Transformer With Magnetic Flux-Path Control Technology," in IEEE Transactions on Magnetics, vol. 56, no. 3, pp. 1-4, March 2020, Art no. 7510004, doi: 10.1109/TMAG.2019.2954945.
      [2] K. Shimura, S. Kobayashi, M. Sato and T. Mizuno, "Improving Efficiency of Beyond-10 MHz LLC Resonant DC?DC Converters Using Spiral Transformers With Magnetic Flux Path Control Technology," in IEEE Transactions on Magnetics, vol. 57, no. 11, pp. 1-9, Nov. 2021, Art no. 8402109, doi: 10.1109/TMAG.2021.3113998.
      [3] 志村 和大, 田中 大登, 佐藤 光秀, 水野 勉, インターリーブ巻を適用したLLC共振形コンバータ用プレーナトランスの銅損低減, 日本AEM学会誌, 28 巻, 2 号, p. 128-133 (2020) ,

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    鉄道用10 kW級トランスの軽量化・低損失化の検討

       鉄道車両の補助電源システムは架線からの交流電力を整流回路,インバータ,トランスを介し車両設備に給電しています。補助電源システムのなかでトランスは非常に大きな体積・質量を占めており,このトランスの小型化・軽量化が課題となっております。なかでも,輸送機器で用いられているために,軽量化の強いニーズがあります。
       そこで,本研究室ではこのニーズを満足するために,トランスに用いられる銅巻線をアルミニウム巻線に変更することによる軽量化の検討を行っております。アルミニウムの比重は銅の1/3程度であり,銅巻線からアルミニウム巻線に変更することで巻線の質量を1/3にすることが可能です。しかしながら,アルミニウムの抵抗率は銅の1.6倍程度であり,損失の増加が問題となります。
       この問題を解決するために,巻線レイアウトの検討や項目(1)にある
      磁束経路制御技術の適用の検討を行っています。磁束経路制御技術は導線の周囲に磁性体を配置しますが,より簡便に磁性体を配置する方法として磁性体と粘着剤を組み合わせた磁性テープを考案・研究しています。  磁性テープを適用した鉄道
      用トランスを企業とともに設計・製作を行い,発熱評価などを行っています。
      図5 鉄道用補助電源システム
      図6 鉄道用トランスの発熱評価

      論文・国際会議・学会発表

      [1] K. Shimura et al., "Alternating-Current Copper Loss Reduction in a High-Frequency Transformer for Railways Using a Magnetic Tape," in IEEE Transactions on Magnetics, vol. 57, no. 11, pp. 1-7, Nov. 2021, Art no. 8402207, doi: 10.1109/TMAG.2021.3113498.
      [2] 志村 和大, 久保田 和馬, 佐藤 光秀, 水野 勉, 鉄道用高周波トランスの軽量化と銅損低減のための磁性テープ巻平角アルミニウム巻線の検討, 日本AEM学会誌, 2021, 29 巻, 2 号, p. 383-388 (2021)
      [3] 丸山 大登, 志村 和大, 佐藤 光秀, 水野 勉, 小池 徳男, 櫻田 昌之, 根橋 孝男鉄道用高周波トランスで生ずる近接効果抑制のための巻線構造および磁性テープ巻平角アルミニウム巻線の検討, 電気学会交通・電気鉄道/リニアドライブ合同研究会資料, TER-22-001-015/LD-22-001-015, p. 19-24 (2022)

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