スマートフォン版を見る理学部クエストトップ

信州大学 理学部 ようこそ、探求の世界へ。理学部クエスト
大塚 勉

大塚 勉

基幹教育センター

講座:自然科学教育部門
職名:教授
略歴:
1989 - , 信州大学 教養部 講師
1991 - , 信州大学 教養部 助教授
1995 - , 信州大学 理学部 助教授
キーワード:活断層
ホームページ:http://science.shinshu-u.ac.jp/~geol/ots1/otshome.html
SOARリンク:SOARを見る

信州で地質を学ぶ

私は自然の中に身を置いて、地質の現象のなりたちを解き明かすという仕事を続けてきています。この道に入ったきっかけと、いまやっていることをご紹介しましょう。

きっかけは
私は、小学生の頃から自然が大好きで、いつも図鑑をながめてばかりいる子どもでした。そんな私に、小学校の担任の先生からお借りした「愛知県 地学案内」という小冊子が私に火をつけました。今から思えば、まことにつつましい装丁のその冊子を片手に、あるときは友達をさそって、またあるときは 一人で、 ワクワクしながら化石や鉱物が採れる場所をたずね歩きました。当時の小学生にとって、鉄道(SLも走っていた!)に乗って小旅行をするということは、けっこうな冒険でもありました。先生からお借りしたその本をボロボロにしてしまい、お返しするとき、どうやってあやまったらよいのか困ってしまいました。

img_704_1.jpg

実習で沢登り

信州大学へ
さて、縁があって、信州大学で地質学を学ぶことが実現しました。ここでは野外に出ることで単位がもらえてとても愉快でした。地質学は、現場でいろいろな地質現象を観察することが必要です。泊まりがけでよその地に出かけて地質を見学する「巡検」は、地質学科ならではのことでした。とくに、教育課程の最後の「卒業研究」では、ほぼ1年間をかけて、自分の脚で、自分の目で地質を明らかにする研究に取り組んだのが私の進む道を決めました。人ががほとんど行かない山奥の地質をあえて対象にしましたので、その後仕事を進めるうえで、沢登りや急斜面などのやっかいな場所でも苦にならなくなりました。

img_704_2.jpg

チャートのしゅう曲

img_704_3.jpg

メランジュを作る岩石の研磨断面

「付加体」を研究
ところで、皆さんは、海洋プレートが海溝から地球内部に沈み込むという現象を知っていますか?日本列島に大きな被害をもたらす巨大地震も、そのときにおこる現象です。地震だけではなく、陸地の海洋側には、海洋プレートに乗ってやってきた堆積物が、「付加体」と呼ばれる独特な地質体を作ります。 卒業研究 の対象とした地質が付加体であり、その実体が世界的に明らかにされてゆく激動期に地質学に入門することとなったため、ますます山歩きがおもしろくなりました。
付加体の研究では、写真のようなチャートという岩石のみごとな褶曲、またメランジュという複雑な地質体をつくる岩石が流動してできたふしぎな変形構造から、付加体のできかたを考えてきました。また、付加体の岩石には、原生動物の仲間の放散虫というたいへん小さな化石がたくさん含まれています。放散虫化石の息をのむような繊細な構造の姿にも深く魅せられました。岩石の中にはこんなミクロの芸術品のような化石も含まれているのです。

img_704_4.jpg

活断層と向き合う
さて、最近日本では地震が頻発します。地震は活断層が動くことによって起こります。付加体の地質を調べる間に、最近活動した活断層に出会うことがあります。大きな断層の両側には、岩石が粉々に砕かれた破砕帯(はさいたい)が広がっています。この破砕帯はとてももろいので、山の斜面の崩壊をよく引き起こします。断層の研究と、付加体の地質構造の研究との間には共通点が多いこともあって、最近では山岳地域の活断層の研究にも力を入れています。身近な活断層の性質を明らかすることは、将来の災害予測と防災計画を立てる上で重要なのです。

img_704_5.jpg

活断層の破砕帯

自然災害への対応
この何年かの間、信州大学のある長野県とその周辺では、地震や水害などが発生しています。それらによる被害の実態を調べ、発生機構を明らかにすることが、いま大学の地域貢献として強く求められています。地質学という分野は、じっくりと地域に腰を落ち着けて仕事を進める面を持っています。いまでは、このような地質学をとおして、「平成18年豪雨災害」や「中越沖地震」などにおいて被害がどのように生じたかを明らかにし、将来の災害予測につなげる研究もおこなっています。
大学では、教養教育を担当する全学教育機構という部局に属するとともに、理学部地質科学科や工学系大学院での講義や研究の指導を担当しています。地質科学科では、身近にある豊富な地質学の教材を有効に生かした教育がおこなわれていることが特徴です。学生さんたちと野外に出ることは、私にとってとても楽しいことです。また、ぜひ知っておいてほしいこととして、信州大学は、専門教育のほかに不可欠である教養教育を実施する多くの教員がいる、希有な大学であることです。幅広い知識を得る場が用意されているのです。
さあ、この恵まれた教育環境のもとで学ぶことをためらう手はありません!

img_704_6.jpg

豪雨災害の調査