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齋藤 武士

齋藤 武士

地球学コース

講座:地球物質科学分野
職名:准教授
略歴:
1975年 横浜生まれ
京都大学卒
JSPS特別研究員等を経て
2008年4月より信州大学
キーワード:火山学
ホームページ:http://science.shinshu-u.ac.jp/~geol/saito/
SOARリンク:SOARを見る

火山・研究への招待

私は火山を研究しています。火山に出かけていって,昔の噴火でできた溶岩や火山灰を採ってきたり,現在活動している火口の温度を測ったり,火口にたまった熱水を採ってきたりしています。そうして測ったデータや,採ってきた試料を分析することで,昔そこでどんな噴火があったのか,現在そこでどんな活動が起きているのかを探っています。

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ハワイ島キラウエア火山での溶岩流の温度測定
一般観光客でも流れる溶岩を直接見ることができます。

火山は,わたしたちの住んでいる地球の表面と,地球の内部をつなぐドアのようなものです。火山を研究することで,地球の中で今どんなことが起きているのか,かつてどんなことが起きていたのかを知ることが出来ます。火山を研究すると,この火山は今度いつ噴火するのだろうか,あの火山は昔いつ噴火したのだろうか,ということだけでなく,地球の歴史や,今後地球がどうなっていくのか,についても重要な示唆を与えてくれます。

そういったことを知るために日々研究をしているのですが,本当の動機はもっと単純です。皆さんは噴火を見たことがありますか?噴火といってもいろいろあるのですが,火口から赤く光った溶岩が噴き出たり,火山灰が空高く上昇していく様は,実に壮大で神秘的です。また噴火直後の荒涼とした大地の様子は地球の創世を彷彿とさせます。私は火山噴火や,噴火の様をとどめている地形を見ることが好きなのです。

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九州,諏訪之瀬島火山の灰噴火

一週間滞在していれば一度は噴火を見ることができる世界で最も活発な火山の一つです。



火山を研究していると,噴火に立ち会うことも多いですし,普通は入ることの出来ない区域に特別に入れてもらえることがあります。上の写真も,特別に許可を得て入った諏訪之瀬島火山で遭遇した噴火を撮影したものです。火口からわずか500mのところで昔の溶岩を採取していたところ,突然爆音とともに火山灰がモクモクと上昇しはじめ,大あわてで走って火口から遠ざかりました。危険なことをしているように思われるかもしれませんが,この様な場所に入るときには,無線機を使って火山活動を監視している研究者とリアルタイムに連絡を取っており,細心の注意を払っています。こんな体験ができるのも火山研究の醍醐味です。

日本には多くの火山があります。その多くが国立公園に指定されていたり,温泉保養地だったりするので,皆さんも一度は火山を間近で見たことがあるでしょう。しかし噴火を見たことある人は少ないかもしれません。機会があったらぜひ一度噴火を見てみてください。地球科学に興味のない人でも絶対に感動すると思いますよ。

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九州,雲仙火山の平成新山(1991-1995年に噴火)
荒々しい溶岩からはいまだに熱いガスが噴きだしています



もう一つ,私が研究をしている大きな動機があります。皆さんは,研究・研究者にどういうイメージを持っていますか?勉強?真面目?そういったことが頭にあるかもしれません。実は研究は高校まで親しんだ,教科書を黙々と読み理解する勉強とは全く異質のものです。むしろ正反対といってもいいかもしれません。なぜなら,勉強は先人の知識の集大成である教科書の事柄を理解し,暗記することが主ですが,研究はその逆で,先人の誤りを見つけて正したり,先人が理解できなかった事柄に説明を与える作業だからです。これはとても刺激的でやりがいのある面白い仕事です。

まず,昔の人が分からなかったことを理解する,というだけで好奇心を刺激されませんか?自分の導き出した新発見が新しく教科書にのるかもしれません。そう考えるだけで,勉強の時とは違ったやる気がでてきます。しかも,問題意識を共有する人と連絡をとると,一人では不可能であったことが実現可能になります。うまくすると世界中の研究者と連携して問題に取り組むことも可能です。最初の写真のハワイ島での溶岩の温度測定の研究は,アメリカの大学の研究者と連携して取り組んでいます。

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国際学会で海外の研究者と議論することはとても刺激的で楽しいことです。英語はしっかり勉強しておきましょう。



皆さんは,研究者は生真面目で社交性に乏しい,と思っているかもしれませんが,実はその反対で,優れた研究者ほど社交的でたくさんの友人に囲まれています。幸い私はたくさんの良き先輩・同僚に恵まれ,多くの研究を一緒に行ってきました。特に地球科学は自然現象を相手にするので,自分一人の専門的知識だけでは問題解決に至らないことがほとんどです。そういった時でも,自分とは違った専門の研究者に相談し,一緒に取り組んでみると解決につながることがあります。私は研究は集団スポーツに似ているな,と思います。自分の得意なことでチームに貢献して勝利を目指すからです。そうやって問題が解決した時は,まさにチーム一丸で勝利を勝ち取ったような高揚感と達成感を共有できるのです。これが私が研究を続けているもう一つの大きな動機です。

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九州,阿蘇火山の火口湖からの採水

とても危険で,力のいる作業なので,毎回10名以上の研究者が集まって力を合わせて湖水を採取しています。



皆さんも大学へ進学したら,自分の興味のある分野でぜひ研究に取り組んでみてください。これまで経験してきた勉強とは全く違った刺激と感動があるはずです。そしてもし地球科学に興味があるのなら,火山に興味があるのなら,ぜひ私のところを訪ねてきてください。一緒にフィールドを駆けめぐって,難問・珍問に取り組みましょう!