活動報告

第2回「地域医療」(医学科3年生)講義

4月11日の第2回「地域医療」授業では、佐久総合病院の北澤彰浩先生を講師にお迎えし以下の内容でお話しいただきました。

・長野県の平均寿命と長野モデル

・見取りの場所の変化

・地域包括ケアシステム

・佐久総合病院黎明期における出張診療

・故若月俊一院長

・旧八千穂村の全村健康管理

・佐久総合病院地域ケア科活動としての在宅医療

・EBMとNBM・命といのち

・在宅医療での多職種連携、コミュニケーション、心構え

・家というクスリ

・死を死ぬ前に考える

・死は敗北でなく人生の集大成

・医療の定義の見直し

・グリーフケアとしてのエンゼルメイク・遺族訪問・遺族会

・看取りの文化

学生の皆さんの感想の抜粋:

・在宅医療は田舎の病院があまりないところで行われているイメージでした。しかし、大切なのは、病院か在宅か、患者本人に選ばせてあげられるような選択肢を提示できるようなシステムを構築することだと感じました

・大学に入る前までは病院で看とられるのがあたり前と思っていて、家で死を迎えるのは家族にも医療者にも迷惑で苦しい最後になるのだと思っていましたが"家"という薬が病院にはないという言葉にすごく納得して、少しずつ日本中に在宅ケアの概念が広がるといいなと思いました

・訪問診療に必要なことに「笑い」があることに対し、とても良いなぁと思った。人間関係、信頼を築く際に「笑い」はとても強い力を発揮すると思うし、築いた後も関係を円滑にしていくと思う
医療の新定義、とても好きです

・近年"地域医療""訪問診療"といった言葉をよくきくが、それらが始まった当初のエピソードをきいて、ここまで発展するために多くの苦労があったことを知りました。専門に特化した大きな病院ではあまり振り返る時間がなさそうな、患者さん1人1人の人生を見つめる機会の多い地域医療はこれからの日本の高齢社会で特に求められていくのかなと思いました

・在宅で患者さんの今までの人生を知るために、お部屋に飾ってあるものから話をはずますことができる方法の一つだとは思いもしませんでした。人は死をむかえるその瞬間まで生活していますし、死の時に近い時間を扱う在宅医療において患者さんに出会う前の人生、生活を考えることは大事とはうかがっていましたが、どのようにそれを知れるのだろうと思っておりましたが、そのような端所からも患者さんの人生やお気持ちを知れるようにならないといけないと思いました

・全人的医療のことを自分は分かったつもりになっていただけで、何も理解していなかったことを痛感した。患者さんだけでなく、家族に話を聞いたり看護師の方と情報共有をして、その方のためだけの治療方針を立てることが重要だと実感した。エンゼルメイクのことは今日初めて知ったが、患者さんだけでなくその周りの方々もケアできるようなすばらしい取り組みで少し自分で勉強したいと思った

・医師はただ診察をして命を救えばよいだけではないのだ、ということ。患者の病気を治しただけでは、本当に治したことにはならず、その人の考え方、それまでの生き方、今後の人生設計、家族の気持ちすべてを念頭に置いて患者と接しなければならないと知った。自分が良かれと思ったことも、患者にとってマイナスになったりすることがあると思うので、とても難しいことで医師である限り悩み続けるのではないかと思った

・今日の講義で一番印象に残ったのは患者の周りにいる家族への目の向け方でした。最後のグリ-フケアなど亡くなった後その患者さんの死を悲しむべき、忌むべきものからあたたかいその人との最後の思い出に変えることができるケアがあることに驚きました。このようなことができるのが、在宅医療の素晴らしさであると実感しました

・誰もが物語られる「ひと」としてのいのちを懸命に生きていることを常に心にとめていなければ、たとえ医療的に正しい処置をしたとしても、患者さん自身にとって最良の医療とはならないのだと痛感した。医師として働くとき、このことを心にとめて医療に従事していきたい

・「死ぬ前に死を考えられない」という言葉が印象に残った。死は敗北ではない、という考えについて私はここ一年考える機会が多く、敗北にならないような死への向かい方ができるように終末期医療に関わりたいと思うことがあった。その人らしい人生という表現はよくされるが、それをみつけるためには「死」について考える機会を早めに持つことが必要だと思う。「いかに死ぬか」を考えることは「いかに生きるか」を考えることだ。この機会を多くの人が持てるような社会作りも大切だと思った

・ "家でしかできない治療"という言葉が、印象に残りました。病院食ではなく食べなれた食材のご飯や、住み慣れた家での睡眠、子どもや家族の癒しが、劇的な医学的な治療などなくても、患者さんがもっと生きたいと思えると実は病院よりも長く生きられる可能性があるかもしれないと思います

・医療はその人にその人らしい人生を過ごしてもらうために医術で病気を治すことで、治らない病気ならその人の望むその人らしい最期をむかえられるよう、本人と患者の意志に添って支えることが根底にあると学んだ授業中の中で、在宅医療を受けていた患者が「病院だったらとっくに死んでいた」という言葉が印象深かった。在宅医療だからできること、自宅だからこそできる医療というものがあり、それは必ずしも医療者が提供するとは限られないのだなと知れた。人の死亡率は100%なのだから「死」は「敗北」ではなく「人生の集大成」であるという捉え方を忘れないでいたいと思った