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研究内容

単結晶成長に関する研究の必要性

信州大学工学部電子情報システム工学科の太子研究室では、「省エネ社会を実現する結晶づくり」に関する研究を行っています。
「省エネ社会」と「結晶」というワードは何の関係もないように感じませんか?省エネ社会と言えば、化石燃料の使用削減だったり、電力使用量の削減、であったり、再生可能エネルギーの活用 などが挙げられます。 一方、結晶と言えば、雪の結晶、小中学校の理科の授業でやった塩やミョウバンの結晶、あるいはダイヤモンドなどの宝石などが思いつくと思います。

皆さんがいつもお使いの携帯電話やパソコンの中には、様々な電子部品が使われていることはなんとなく知っていると思いますが、こういう黒い電子部品などに結晶が使われていることはご存知でしょうか? 例えば、メモリーや集積回路にはシリコン結晶が、携帯電話にはGaAs結晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムの結晶が、そしてLEDやバックライトにはチッ化ガリウムという薄膜の結晶と、その基板としてサファイア結晶などが使われており、結晶材料我々の生活に必要不可欠なものになっています。

単結晶は、原子や分子が3次元的に規則正しく並んだ固体物質と定義されます。
原子の並び方は、物質ごとに異なっています。シリコンはダイヤモンドと同じ結晶構造であり、1辺が0.5nm程度の立方体に原子が8個入った構造です。 1cm3の立方体のシリコン単結晶には5×1022個の原子が規則正しく並んでいます。

こちらが工業用に用いられている、当研究室で作製した人工の単結晶の代表例です。 上段は、シリコン、ゲルマニウムの半導体結晶、下段は、サファイア、ニオブ酸リチウムの酸化物結晶です。 人工の単結晶は、だいたい円柱形状となり、天然では存在しない結晶も、ものによっては人工的に作ることができます。

なぜ人工の単結晶が必要かを、水晶の例で説明します。こちらは長野県内で採取した天然の水晶の結晶です。 どれも形状や品質が異なる個性的な「オンリーワン」の結晶です。宝石もこのように、個性的で特徴的なものが重宝されます。 一方、こちらは人工で作製した水晶の結晶です。 こちらは形状や品質が同じ、いわば「性能ワン」の結晶です。 水晶は、腕時計に用いられる水晶振動子などに用いられており、これにより時間を正確に刻むことができるのですが、 個性的なオンリーワンの結晶では、同じ動作をする電子部品を作ることができません。 すべて同じ特徴の、人工の性能ワンの結晶であれば、それが可能です。

性能ワンの重要性をもう少し説明すると、性能ワンの単結晶は原子が規則正しく並んでおり、左から右に電流を流す際に一定に流れる一方で、多結晶は数mmの範囲で部分的に単結晶でありますが、その境界に粒界という欠陥が存在しています。 こちらは、その粒界の存在によって電流が一定ではなく、電気的特性が不均一となります。そのため、同じ性能の電子部品を大量に生産することができない、ということになります。

単結晶のメリットとしては電気的、光学的、強度的に均一であることが挙げられます。 これにより、性能同じで再現のよい電子部品、電子デバイス、光学・機械部品を製造できます。また、大きな単結晶ができれば、高性能な部品を量産できます。
一方、デメリットとしては、単結晶は作製に時間を要し高価であることが挙げられます。 単結晶はゆっくり丁寧に作る必要があり、材料そのもの、およびそれを使ったデバイス等の高コスト化につながります。 よって、なんでもかんでも単結晶なら良い、というわけではなく、必要な部分のみを単結晶とすればよい、ということです。

こちらは単結晶の作り方の模式図です。単結晶は、液体(融液、溶液)や気体から作ることができます。 液体からは2種類あって、結晶材料と同じ成分の融液から作る場合は、融点からそれ以下の温度への冷却による結晶化によって、 溶液から作る場合は溶液中の溶質の飽和状態からの冷却、濃縮による結晶化によって、原子が規則正しく並んだ単結晶をつくることができます。 融液からの結晶化は水から氷、溶液からの結晶化は食塩水から塩の結晶を作るイメージです。 当研究室では、主に融液からの結晶づくりを行っています。

結晶化の身近な例として、液体の水から固体の氷への状態変化があります。 まず水の状態では、分子がバラバラになっており、コップの中を自由に動き回っています。 このコップを冷凍庫に入れて、氷の融点である0℃以下に冷却すると、水は凍って氷となりますが、 このとき単結晶ではなく多結晶となり、気泡をたくさん含んでいます。 このことから、単結晶は時間をかけて、ゆっくり丁寧に作る必要があると言えます。

高品質な単結晶を作るためには、それなりの方法を用いる必要があります。 ここでは、当研究室で採用している単結晶を作る方法2種類を紹介します。 上の図は、引き上げ法(CZ法)といって、るつぼの中で原料を溶かして融解とし、 その表面にすでに単結晶となっている棒状の種結晶を接触させて、 種結晶を回転させながらゆっくり上に引き上げて結晶をつくる方法です。
下の図は、垂直ブリッジマン法(VB法)といって、上に行くほど高温となる炉内に、 種結晶を下、原料を上に置いたるるつぼを配置し、これを上方向に移動させることで、るつぼ内の上から融液化し、 種結晶の一部が融解したところで移動を下方向に反転させます。 これにより、種結晶の原子の並び方に沿った単結晶を得ることができます。

引き上げ法で、水から氷の単結晶を作るイメージを説明します。 下が高温、上が高温の炉内で、るつぼには原料を融解して得た液体である水が保持されています。 水の温度は0℃以上となりますが、その上の空間は冷えていて0℃以下となっています。ここに氷の種結晶を接触させ、 回転させながら上に引っ張り上げていくと、氷の単結晶を連続的に引っ張り上げる形で成長できるイメージです。 実際には、物質ごとに融点は異なっており、融液の温度は物質の融点以上とする必要があります。 融点は、シリコンでは1415℃、サファイアでは2050℃であり、それ以上の温度まで加熱する必要があります。

このときの結晶を作る炉の内部の温度とその分布が、大きく品質のよい単結晶づくりには重要となります。 そのため、原料を融点以上に加熱して融液を形成し、そこから単結晶をつくるには、特殊な装置が必要です。
信州大学の私たちの研究室ではこのような装置を9台所有し、用途に応じて使い分けて単結晶を作っています。

  • 既存の単結晶の大型化、高品質化
  • 既存単結晶の新規成長方法の開発
  • 既存単結晶のデバイス応用
  • 結晶成長に関わる反応解析・成長メカニズム解明
  • 単結晶に基づいた新たな機能の発現・附加
  • 新規単結晶材料の創製
  • 単結晶を用いた材料の物性解明
  • 結晶成長から派生する新たなものづくり

現在行っている結晶成長の対象材料は、半導体材料のシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、その中間のシリコンゲルマニウム(SiGe)混晶、パワーデバイス用途ワイドギャップ半導体の炭化ケイ素(SiC)、β型酸化ガリウム(β-Ga2O3)、圧電材料のニオブ酸カリウムナトリウム(KNN)、リチウムイオン電池用固体電解質材料のチタン酸ランタンリチウム(LLTO)等、振動発電用の磁歪材料の鉄ガリウム(Fe-Ga)となります。また、結晶成長方法を応用した構造材料用途のSiC微結晶コーティングに関する研究を実施しています。

おわりに

本ホームページをご覧いただいた皆様には、結晶成長という研究分野が存在すること、信州大学では結晶成長を専門とする研究室があることを知っていただければ幸いです。そして、興味を持っていただいた方と、いつか一緒に研究開発ができればうれしい次第です。