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研究概要Research Projects

キラルなビナフチルジイミン-Ni(II) 錯体を触媒とする不斉反応の開発

不斉 Diels-Alder 反応および Michael 付加反応

キラルなルイス酸は光学活性な化合物の合成において、最も有用な触媒の一つであり、これまでに多くのキラルルイス酸が開発されてきました。一般に、ルイス酸は系中の水分等により触媒活性を失うものがほとんどで、キラルルイス酸を用いる反応において、触媒量を 1 mol % 以下にすることは、容易ではありません。我々の研究室では、キラルなビナフチルジイミン (BINIM) を配位子とする不斉触媒の開発研究を行っており、種々の BINIM と金属塩との組み合わせを検討したところ、キラルな BINIM-2QN およびその誘導体と過塩素酸ニッケル (II) 六水和物より調製した錯体がシクロペンタジエンと 3-アルケノイル-2-オキサゾリジノンとの Diels-Alder 反応や 2-シリルオキシフランの 3-アルケノイル-2-オキサゾリジノンへの Michael 付加反応において、効果的な触媒であることを見出しました。特に、シクロペンタジエンと 3-アクリロイル-2-オキサゾリジノンとの反応では、1 mol % の触媒で良好な収率、高 endo 選択性ならびに高エナンチオ選択性を達成することができます。

Scheme 1

1,3-双極性付加環化反応は、N, O, S などのヘテロ原子を含む 5 員環化合物を合成するための最も有用な方法の一つです。我々の研究室では、1,3-双極性付加環化反応に対して汎用性の高いキラルルイス酸の開発をめざした研究を行っており、キラルな BINIM-Ni(II) 触媒を種々の 1,3-双極子に応用したところ極めて効果的に働くことを見出しました。

ニトロンの不斉 1,3-双極性付加環化反応

ニトロンの付加環化反応において、3-(2-アルケノイル)-2-チアゾリジンチオンを親双極子剤として,BINIM-DCOH と過塩素酸ニッケルより調製した錯体 (10 mol %) をキラルルイス酸として用い反応を行うと、あまり報告例のない極めて高い exo 選択性 (up to >99:1) と高いエナンチオ選択性 (up to 95% ee) で反応が進行することを明らかにしました。

Scheme 2 Scheme 3

得られた付加環化体は、還元的に N-O 結合を開裂できることが知られており、本反応を利用したカルバペネム抗生物質の不斉合成への応用が期待されます。

Scheme 4

アゾメチンイミンの不斉 1,3-双極性付加環化反応

1,3-双極子としてアゾメチンイミンを用いる 3-アクリロイル-2-オキサゾリジノンの反応においても、(R)-BINIM-4Me-2QN-Ni(II) 錯体 (10 mol %) がキラルルイス酸として効率的に働き、高い trans 選択性とエナンチオ選択性で付加環化体が得られることを見出しました。これは、アゾメチンイミンの付加環化反応において、キラルルイス酸を用いる不斉誘起の可能性を示したはじめての例です。

Scheme 5 Scheme 6

ニトリルオキシドの不斉 1,3-双極性付加環化反応

ニトリルオキシドと 3-クロトノイル-5,5-ジメチル-2-オキサゾリジノンの付加環化反応においてもキラルな BINIM-NI(II) 触媒 (30 mol %) を用いると、有望な不斉誘起が可能であることを見出しています。

Scheme 7 Scheme 8
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